BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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下関チャレンジカップ 優勝戦私的回顧

涙雨、仰天。

 

12R優勝戦

①太田和美(大阪) 18

②濱野谷憲吾(東京)18

③茅原悠紀(岡山) 21

④菊地孝平(静岡) 19

⑤井口佳典(三重) 22

⑥吉田俊彦(兵庫) 29

 

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 今日の太田も強かった。スタートは大方の予想どおりのほぼ1艇身、全速。すでにグランプリ入りを決めている身の上、無茶をする必要はない。唯一、太田が負ける展開があるとすれば、この慎重なスタートに対して「憲吾か茅原がゼロ台まで踏み込んだとき」と思っていたのだが、この太田のスタートがいちばん早かった。これでは、他艇に付け入る隙はない。1マークまでに64号機がぐんぐん伸びて、くるり回って5艇身の差を付けた。通算7度目のSG制覇、賞金ランク2位浮上、さらに同支部の後輩・石野貴之のグランプリ入りが、1マークを回って5秒ほどで決まった。

 

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 怪物クン×怪物パワー=優勝

 毎日書き続けてきたシンプルな掛け算も、今日で完結である。太田と64号機は揺るぎない最終解答を全国のファンに示した。マジで、強かったなあ。

 

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 で、やはり語りたいのは「2着でグランプリ確定」だった憲吾だ。スリットは太田と同体。そこから太田にじりじりと突き放された憲吾は、最近得意の2コースまくりを諦めて?ほぼ全速の差しハンドルを入れた。角度的に太田を差しきるムードはなかったものの、「2着なら!?」と思ったものだ。が……ターンマークに乗り上げてあさっての方向に飛び去り、万事休す。うーーーーーーん、気がはやりすぎたんだろうし、ギリギリまで攻めようとした結果ではあるだろう。この衝突を責めるつもりはないが、それより、もっともっとスタートで攻めてほしかったぞ、憲吾!!(涙) 暮れの平和島グランプリは東京ゼロで大阪4人。住之江からバトンタッチした年に、こんな屈辱的な数字になるとは。今もそぼ降る下関の雨は、東京のドロドロ舟券オヤジたちの涙雨に違いない。

 

 

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 もうひとり、SG優勝+グランプリ進出の一石二鳥を狙った選手がいた。吉田俊彦。俊彦はさらに遅いスタートだったが、こっちは道中で奮闘し続けた。4番手から3着争いに加わり、2番手の菊地にも切り返しの先マイなどで嫌味を付けた。が、にじり寄る茅原に手を焼いて、前だけを向けない。茅原をキッチリ競り落としたときには、3着のゴールが待っていた。ゴールを過ぎて1マークを回る直前、俊彦は唐突に上体をのけ反らせて天を仰いだ。後ろにぶっ倒れた?? ちょっと驚いたが、そうではなかった。文字通り、慣用句の通り、俊彦は天を仰いだのだ。1着なら嬉しい嬉しいSG初制覇。2着でもグランプリチケット。一足早いボーナスを手にしたわけだが、3着のご褒美は……?? 茅原を競り潰して舟券に絡んだレースっぷりは天晴れの一語ではあったが、俊彦がゲットした着順はもっとも悲しい数字だったかも知れない。お疲れさまでした、俊彦。

 

 

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 そしてそして、憲吾が宙空を舞い、俊彦が天を仰いだお陰で、最後のグランプリチケットを受け取った選手がいた。田村隆信。憲吾&俊彦に同情しつつ、私はこの稀代の勝負師がなんとかベスト18位に生き残ったことを、内心ではメチャクチャ喜んでいる。第1ステージの初戦(6号艇)から何をやらかしてくれるのか、マジで今から楽しみでならない。(photos/シギー中尾、text/畠山)