BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――素晴らしきドリーム戦!

 

 

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「レースできまっせん!」

 試運転から上がってきた今村豊が、含み笑いを浮かべながら叫んだ。これはミスターがふざけているパターン。とってもお茶目なミスター流のジョークだ。

 今村はドリーム戦記者会見でも「レースになりませんよ」と言っている。やはり少しにやけながら。なぜレースができないと今村は言っているのか。それは「うねりがひどい」からだ。

 この時期の琵琶湖は水位が高くなる。周囲の山々の雪解け水が流れ込むからだ。びわこボートは琵琶湖の一角にコースがあるわけだから、もちろん水面の水位も高い。ただでさえポチャつきやすい状況になっている。そこに今日は、強い追い風が吹きつけた。これがうねりを生むのだ。これを書いている今、記者席から水面を見下ろせば、うねうねとした波がハッキリと見える。いや、レースに影響を及ぼすうねりは、水面下にもぐっているそうで、実際には見えにくいのだそうだ。今日は、このうねりが発生した。

 というわけで、今村は「レースできましぇーん!」と泣きを入れたというわけ。百戦錬磨が集まるマスターズ、愚痴をこぼしながらもしっかりレースでは乗りこなしてくるだろうが、しかしレースには当然、影響が及ぶ。明日は風の様子をしっかりチェックして、舟券作戦に臨みたい。ちなみに、今日のような場合、逃げもまくりも流れやすいから、狙い目は差しだ。

 なお、ドリーム戦は進入が最高に興味深い一戦だが、今村は「スタートはつかめました。みんなが深くなるならバチーンと行きますよ!」と息巻いていた。レースできないとか言いつつ、勝つ気マンマンなのである(笑)。

 

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 その進入については、今村暢孝と大嶋一也が外枠にいるから面白くなっているのであって、「いつものスタイルで」(ノブさん)「動くつもりでいます」(大嶋)と会見で意思表明をしている。しかし、二人とも口をそろえて言ったのは、「何コースになるのかは自分でもわからない」ということ。内2人はともかく、オールスローの今村豊は突っ張るのか、マイペースのターンマーク起こしなのかが微妙なところ(スタート練習では深い起こしからも行っている)。3号艇の三角哲男もカギを握る存在で、主張も単騎ガマシもありそうだ。三角自身、「本番にならなければわからないですね。でも、どこからでも行けるように準備しておきます」。臨機応変、ということだろう。いや~、これがボートレースだよなあ。これが面白いボートレースだよなあ。

 

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 ただし、1コースと2コースはほぼ動かないようだ。1号艇の田頭実はモーター次第では臨機応変と考えていたようだが、前検を終えて「インから行きます」と宣言している。2号艇の西島義則は「メンバーが発表された時点で、2コースと決めていた」。譲るつもりはハナからなかったし、かといってインにもこだわらない。2コースからの勝ち筋を思い描いて、びわこに乗り込んだわけだ。よほどのことがない限り、ここまでは枠なりになりそう。というわけで、私の予想は12564/3が本線。123456のオールスローもあり、という感じです。

 

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 西島といえば、ドリーム会見でのこの言葉も紹介しておきたい。

「いつも、このレースが最後だと思って走っています。今節もその気持ちで走るつもりです。これで引退したとしても悔いのない、そんなレースをしたいですね」

 3年前の常滑グラチャンで、西島は生死の境をさまよう事故にあっている。命を落としていてもおかしくはなかったし、それから1年も経たずに復帰したことは掛け値なしの奇跡だった。その事故を経て西島は、ひとつの境地に辿り着いたのだ。ボートレーサーというのは、文字通り命を懸けて戦っている。いつ何があってもおかしくない状況に立たされている。それをまざまざと実感したからこそ、西島は1走1走、全身全霊で臨む。そんな西島の走りを、我々はしかと見続けるべきだろう。ドリーム戦でも魂の走りを見せてくれるはずだぞ。

 

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 さて、マスターズといえば、毎年独特の光景がピットでは繰り広げられるものである。それは「ベテランが新兵作業をする」。新兵とは、おおむね新人を指す言葉。その節においては、登番がもっとも若い選手たち(おおよそ4~5番目くらい?)がそう呼ばれて、いわゆる雑用をこなすことになる。ピットで特に目につくのは、モーター架台を必要最低限の台数、ボートリフトの近くに移動してエンジン吊りがスムーズに進むための準備をするというシーン。これを、すでにベテランになった選手がやるという、他の節ではお目にかかれない場面が見られるわけである。なにしろ、登番がもっとも若い選手がすでに48歳以上ですからね。なかなか新鮮な光景なのだ。今日で言えば、山一鉄也や菊池峰晴がキビキビと動いていた。

 

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 そのなかに、山室展弘が加わっていたから驚いた。当然、後輩たちは山室先輩からその仕事をとろうとするのだが、気にするそぶりもなく、山室は黙々と架台を運んでいた。エンジン吊りでも積極的に動き、他支部他地区の選手のエンジン吊りが手薄と見るや、素早くそちらにヘルプに向かう。登番ではだいぶ上のほうになっているのに、かなり献身的に働いているのだ。山室展弘、ますます好きになっちゃったぞ。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)