BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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蒲郡グラチャンTOPICS 初日

シリーズ特別企画

鳴門行き最終便①

 

 

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「蒲郡発鳴門行きのチケットが1枚余ってると聞いたので、やってきました。自分を信じて頑張ります!」(by田村)

 そう、今節のグラチャンには隠れミッションが存在する。

――来月の鳴門SGオーシャンカップに、地元レーサーを送り込め!

 このミッション、他の場のSGとはワケが違う。鳴門でのSG(正確にはSGの前進競走)は超久々、ぶっちゃけ「初SG」と言ってもいいくらい。鳴門SGは、地元レーサーにとって半世紀以上にも及ぶ悲願だった(かの中道善博さん含む)。しかも、鳴門の場合は次のSG開催が2年後なのか10年後なのか100年後なのか、まったく予測がつかない。でもってオーシャン当確レーサーの中にいまだ徳島支部のレーサーはいない。残された鳴門行きのチケットは1枚……ざっとこんな状況である。今の鳴門の選手&ファンの気持ちを何かに例えるなら、うん、「約60年ぶりの東京オリンピックが決まったのに、日本人選手が誰も参加できない」ってな感じだろうか。そりゃ寂しいし、つらいでしょ。

 ってなわけで、今節はラストチャンスに臨む田村隆信と市橋卓士を徹底的に応援するのである。さっそく、今日のふたりのレースっぷりを記しておこう。

 

★市橋卓士/4R4号艇=4着

 

 

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 気持ちがやや空回りしたか、フライング持ちが災いしたか、4カドから起こしを溜めすぎた風情でコンマ24の凹みスタート。3コースの吉田拡郎(コンマ13)がかなり覗いていだけに、この遅れは痛い。同じくらいのスタートを行っていれば、「拡郎にプレスを与えて握らせ、絶好のまくり差し」という展開に持ち込めたかもしれない。実戦では拡郎がまくり差しで、市橋が窮屈な遅れ差し。その途中で5コースの引き波も頂戴し、迫力の乏しい差しハンドルになってしまった。

 まあそれは仕方がないとして、肝心の機力のほうは……道中の競り合いを見るに、おそらく「良くて中堅ど真ん中」。厳しくジャッジするなら、ターン回りがつらそうな分だけ中の下レベルかもしれない。このままの足では、優勝=最終便チケットは夢のまた夢とお伝えするしかないだろう。せめてもの救いは、市橋の出走スケジュールが1・1・2・1回走と予選後半に重きが置かれていること。しっかりエンジンを出し切れば、3、4日目での猛チャージが可能だ。それを実現させるためにも、明日の1号艇は急所中の急所。エンジン的に苦しい部分を、スタートと気持ちで補ってもらいたい。見事に逃げきれば7・00で後半戦に突入できるのだから。

 

★田村隆信/7R6号艇=2着

 

 

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 さて、鳴門の総大将・田村だ。今日はいきなり6号艇発進で、「好成績ならVの可能性が大幅アップ」というチャンスレースではあった。気合パンパンの田村は、スタート展示から動く(私の予想は「スタ展ヤラズの本番ヤリだったが、その思惑は外れた)。2号艇の深川真二を出し抜いたものの、3号艇の坪井に抵抗されて1362/54の超変則隊形。

 こりゃ、参考外だな。深川が譲るはずもないし、他の面々も抵抗するだろう。枠なりオールスローという最悪の隊形まであるかも?

 と心配しながら迎えたレース本番、ピット離れで4号艇の石渡鉄兵がドカッと遅れたことによって123/564という穏やかな隊形で収まった。田村としては「6号艇でダッシュ5コース、しかも4カド元志の外なら美味しいかも」という皮算用だろう。そして、その思惑は見事にハマる。4カドから抜けたトップSを切った篠崎元志が、一気に絞め込んだ。これに、カド受けの坪井が艇をおっつけて敢然とブロックした。田村には、「競りの合間にズッポリのまくり差し」という選択もありそうだったが、あえて大外をぶん回して2番手をキープした。リスクの高い1着より、ノーリスクの2着。6号艇だからこその選択だったと思う。

 

 

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 6号艇で2着ゲット。これはでかい。元志様様の2着ではあったが、優勝するには運もリズムも必要だ。そして、今日のレースを見る限りパワー面でも悲観することはないと見た。ストレートはちょっとショッパイものの、出足と回り足はしっかりしている。トータルでは中堅上位あたりか。今後はこの出足と回り足を殺さないように、行き足~伸びを強化していくことだろう。田村の予選スケジュールは1・2・1・1回走。唯一の2回走である明日が、まさにVへの正念場とも言える。2・3号艇で出足系統を生かし、枠番以上の成績をマークすれば予選後半(おそらく1号艇と5号艇か)に大きな弾みが付くはずだ。ちなみに、艇番通りの着順なら7・33。うん、準優の好枠を得るためには、この数値が最低ノルマとお伝えしておこう。奇跡の渦潮チケット獲得へ、頑張れ田村&市橋!

 

明日のふたり

★田村隆信=4R3号艇、8R2号艇

★市橋卓士=2R1号艇

 

強いぞ、亮くん!

 

 

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 初回ということで、田村&市橋に時間を費やしてしまった。今日のハイライトをいくつか挙げるなら、まずは「笠原亮のピンピン発進」だ。まあ、初日1・2号艇でのピンピンはよくある話で、しかも最近の亮くんなら当たり前という気がしないでもない。今日も強かった。とりわけ、前半3Rの2コース差し! スピード、タイミング、切れ味ともに申し分なく、「2コース差しが決まりにくい」とされる強い向かい風を真っ二つに切り裂いてしまった。それはそのまま「どんだけ非凡なスピードだったか」という証でもある。とにかく最近の笠原は、精神面も含めて恐ろしく強い。強くなった、と思う。かつての笠原は「外コースで一発の魅力、内コースではやや取りこぼし」というムラが感じられたものだが、もはやそんな不安定な部分も解消された。どのコースからでもアタマ決め撃ちで狙える選手になった。まあ、この2連勝をもってV候補の筆頭とは呼ばない(やや足に不安がありそうだし)けれど、今節の亮くんは確実に着実に予選を突破しV戦線を賑わせるだろう。

 

 

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 で、今日のベストバウトをひとつ挙げるなら、11Rの元志VS茅原しかないな。去年の当地メモリアルでの元志VS峰の死闘を思い出させるようなスリリングなボートチェイス。この一騎打ちは、ぜひともVTRで堪能してもらいたい。最後の最後の逆転は、××選手のターンミスが最たる要因だが、○○選手の凄まじい追い上げがあれば、だな。で、さらに言うなら、2艇でシノギを削っているというのに、後続艇がどんどん千切れていく様にも驚かされた。まさに、異次元のターンスピード。あ、これも去年のあのレースで、まったく同じことを書いたような気がするな。ほとほと、脱帽。(photos/シギー中尾、text/畠山)