BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――それぞれの道

10R 一歩前へ

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 大村SGの準優で忘れられないシーンがある。昨年のオールスター、篠崎仁志が今まで見たことがないほどに落胆していた。慰めの言葉をかけても、ほとんど反応しない。ただただやるせない表情で、溜息を何度もつき、下を向き、時に唇をかみしめていた。

 その準優、仁志はいったん先頭を走った。SG初優出は目前だった。それを、2マークのターンミスで逃した。懸命に追い上げるレースぶりは立派だったが、準優ではそれは何の言い訳にもならない。

「レース前に、それは思い出しましたよ。それだけじゃなく、何度も準優で負けてきましたからね。そうなると、それを意識しすぎるようになるじゃないですか。だから、なんとしても早く優出したかった。だから、嬉しいですよね。明日は、グランプリにすっきり迎えるようなレースがしたいですね」

 訥々と、言葉を選びながら仁志はそう語る。大村の借りを大村で返した仁志は、グランプリ初出場も含めて、これで間違いなく新たなる一歩を踏み出したのだ。6号艇の優勝戦は楽な条件ではないが、結果はともかく、明らかな前進である。仁志、ひとまずおめでとう!

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 森高一真については、共同会見でのこの言葉を紹介しておこう。

「びわこ(周年)からの流れを考えたら、明日はワシ、一発やりそうな気がするな」

 そのびわこ周年は、チャレンジカップ勝負駆けだった。その直前、10月6日に亡くなられた冨好和幸さんの告別式で森高と会った。冨好さんを偲ぶ会話を交わしつつ、「こうなったら、とにかくチャレンジカップには間に合わせないと」と森高にハッパをかけた。「おぅ、びわこはちょっと頑張ってみるわ」。そう言って向かったびわこで森高は優出。チャレンジカップの切符をもぎ取った。今回は言うまでもなく、グランプリの勝負駆け。僕もその流れを信じてみたい。勝負駆けを一気に駆け抜けて、念願の初グランプリ。そんな場面を見てみたい。

 

11R うなだれる

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 このレースは、谷村一哉のみが18位圏外。グランプリ行きへの大勝負だったが、6号艇という不利枠だった。そのほかの5人は、重成一人に落ちる可能性はあるとはいえ、ほぼ全員が当確といったところ。グランプリ勝負駆けという意味では、大きな一番というわけではなかった。しかし、敗者は一様にうなだれていた。グランプリ行きが消えた谷村は当然かもしれない。6号艇6コースだって、なんとか優出して望みをつなぎたかった。重成も、微妙な立ち位置だったから、安心圏に入るためにも優出は絶対欲しかった。だから、まだうなだれるのはわかる。たが、井口佳典も岡崎恭裕も、控室に向かう途上で、何度も首をガクンと下げた。彼らにしてもベスト6勝負駆けではあるわけだが、それ以上に、優出できなかった悔恨、あるいは勝ち抜ける足に仕上げられなかった悔恨をあらわにした。そういうものだろう。

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 対照的に、石野貴之の姿は実に堂々たるものに見えた。優勝しか考えていない、と口にして臨んだチャレンジカップ。つまり、地元グランプリに賞金ランク1位で乗り込むことを決意していたわけだ。足はよかったはずだ。コメントはずっと渋かったが、それは優勝を目指すために課したハードルが高かったからだろう。準優を逃げ切って、ひとつの手応えを得た今、威風堂々と見えるのは当然。しかも、これは12Rの結果を受けてだが、「2号艇でもチャンスがある」と言っていたものが、1号艇が転がり込んできたのだ。石野の決心はさらに強くなったことだろう。

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 坪井康晴は淡々としたものだ。2着、明日は5号艇というのは、肩肘張ってみせる状況ではないだろうし、そもそも坪井がそういうタイプではない。これでベスト6入りも完全確定。明日もっとも平常心で臨めるのが、坪井かもしれない。スーパー勝負駆けという局面では、案外もっとも怖い存在だぞ。

 

12R 積極的な調整

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 辻栄蔵の共同会見でのこの言葉が気になった。

「今日は消極的な調整だったので、明日は積極的な調整をしたい。それでよくなれば、充分チャンスがある」

 あくまで私見と先に断わっておく。なぜ今日は消極的な調整になったのか。予選トップの12R1号艇。足はもともと悪くなく、だから予選トップにも立てた。それで守りに入った部分があったのではないだろうか。だから、今日逃げ切れたとして、明日もまた1号艇。同じように消極的な調整と振り返ることになっていたかもしれない(勝っても負けても)。しかし、2着で4号艇となった。プレッシャーという足かせはこれで取れた。さらに言えば、明日の優勝戦は完走でグランプリ当確。スタート正常なら、完走できなくても当確である。つまり、実質上はグランプリ確定である。その状況での積極的な調整は、脅威以外の何物でもない。節イチクラスだった足が、真の節イチになる可能性を秘めているからだ。坪井をもっとも怖い存在と書いたが、本当は辻かもしれない。とにかく、明日の辻の“ギリペラ”は、文字通りの勝負調整となるだろう。

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 1着は吉川元浩。リフトで出迎えた兵庫勢、近畿勢はとにかくみな、笑っていた。吉川もヘルメットの奥で目を細める。会心の勝利だったのだ。魚谷智之も、吉川の背中をポンと叩いて満面の笑み。グランプリ出場権争いにおいて、もし吉川が優勝すれば、魚谷の19位以下が決まるわけだが、そんなことは魚谷は少しも考えてはいないだろう。吉川を祝福する魚谷は、ただただ嬉しそうで、だから吉川の笑みもさらに深まっていった。

 ヘルメットを脱ぐと、水色のレーシングキャップをかぶった素顔があらわになる。そこでまた周囲は笑い声をあげた。吉川が「ドラえもんみたいや」と言ったのだ。たしかに(笑)。明日、自らの四次元ポケットから出したいのは、グランプリ行きの切符。優勝のみという明確な条件だ、揺るぎのない戦いを見せてくれるはずである。

 

女子 動くや、動かざるや

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 優出メンバーでクイーンズクライマックス勝負駆けは、日高逸子のみとなった。9Rは2着。特に表情を変えずに控室に消えたのは見ていたのだが、日高は優出できたとはまったく思っていなかったようだ。だから、共同会見は遅れて始まっている。「スポーツ新聞でも女子のところは見ないようにしている」そうで、余計な情報を遮断してレースに臨んでいた日高である。6戦して1勝、2着1回という成績で、予選落ちを覚悟していたとしてもおかしくない。

 その日高が6号艇だ。さあ、前付けがあるかないか。これがひとつの焦点となろう。

「いやいや、まあ、もういいです。優勝戦乗れただけでありがたい。無理してもあんまり、ね。進入はゆっくり行きます。まあ、臨機応変に、ですね。無心でいきます」

 もう6コースでいいです、みたいな物言いだが、果たしてどうだろう。「進入はゆっくり」のところから、微妙に内容が変わっていっていると思いませんか? 無心でいったら動いていた、なんてことになるんじゃないか、なんて思ったりして。日高のみが勝負駆け、という状況でセンター枠が福岡勢……みたいな裏読みもしたくなりますね。とにかく、日高は明日のキーマンになるだろう。

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 気になったのは、長嶋万記のレース後の険しい表情だ。9R3着。遠藤エミが逃げ切った時点で予選トップは確定で、長嶋は逆転トップになるためには、自身が勝って遠藤が大敗という半ば相手待ちの状況だったから、おそらくそれが厳しい顔つきの理由ではないだろう。とにかく明るい長嶋万記が、堂々たる勝負師になったのだな、と非常に感慨深い。明日もクイクラの初戦の枠番とかそういうことは関係なく、純粋に優勝を獲りにいくに違いない。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)