畠山がやまと学校遠征のため、黒須田がピンチヒッターです。どうぞよろしく。
まず、今日の傾向をざっくり言うと、前半イン受難、後半イン天国。1~6Rではイン1勝のみ、一方7~12Rはイン5勝で、8Rからは5連勝である。11Rの茅原悠紀は2マーク抜きだが、桐生順平を差し切ったのだからお見事だった。
児島の水面特性として、潮が高いときはイン有利、低いときは外も利く、というものがある。今日の満潮時刻は13時7分。ちょうど6R頃で、つまり1Rから6Rに向けて潮が高くなっていった。それを境にあとは潮が低くなっていったわけで、そう、セオリーとは反対の傾向となっていたわけである。うーん、不思議。
そうそう、今日の朝、白井英治と雑談した折(畠山の舟券は当たるわけないとか、やまとに行ったということは今日は負けないで済むということだとか)、「児島水面はダッシュが利きにくい」という話になった。前半の白井は4号艇で、カドになっても厳しいかもなあ、でも田頭さんが6号艇にいるからカドにはならないよね、とかいう話の流れのなかでのことだったのだが(後半のピットで「カドになったね」と笑い合った)、児島は全国でも屈指のまくりが決まりにくい水面で、そのひとつの要因が「ダッシュが伸びない」という点にあるようなのだ。
さらに白井が言ったのは、「だからカドまくりが決まってる選手ってのは、足が来てるんだろうね」。朝の時点だから、白井の脳裏にあったのは初日にカドまくり2連発(ひとつは2着だが)の井口佳典だったと思われる。それを念頭に置きつつ、前半のレースを振り返ると、4Rで平本真之がカドまくり一撃。5Rは魚谷智之が4カドから伸びていき、インには届かなかったが内を叩いている。いや、5Rはむしろ5コースからの瓜生正義の足のほうが目立ったか。まくり差して1着はこちら。魚谷は道中で後退している。6Rは、松村敏が6コースから強烈なまくり差し! 内に対しては半艇身ほどのぞいたトップスタートだったのも確かだが、スリット後に内を叩いて、イン徳増秀樹が先マイするのを冷静に見極めての見事な差しハンドルで1着。この3つのレースは、ダッシュ勢がスリットから好気配で攻め込んで、インを潰しているのである。つまり、平本、魚谷、瓜生、松村は「足は来てるんだろうね」ということになる。魚谷が道中で着を下げたのは少し気になるものの。
もう一丁、満潮時刻の少し後の7Rは、山崎智也が3コースまくり一撃。1マーク手前では完全にまくり切る態勢になっており、本体整備が続く山口剛がインだったことを差し引いても、好気配と見えた。4カドの向所浩二もいい雰囲気で伸びていきそうだったが、山崎はこれを制して先まくりに出たのだから、間違いなく足は来ている。
インが連勝した後半でも、10Rの徳増秀樹、11Rの伊藤将吉がやはりスリットから伸びてインを攻め立てている。徳増の場合は、冷静にまくり差しに構えたものの前に押さず、道中の足には不安を残すが(ペラを失敗したようなので、修正してくるかも)。というわけで、名前をあげた選手たちは今日の時点では行き足から伸びにかけて好仕上がりと言っていいだろう。水面状況が今日と変わらなければ、引き続き注目してみる価値がある。名前をざっとおさらいしておこう。平本、魚谷、瓜生、松村、山崎、向所、徳増、伊藤(転覆の影響は心配)。
レース足で僕の目に留まったのは、11Rで伊藤の攻めに乗って軽快に突き抜けた桐生順平、その桐生を刺し返した茅原悠紀、9Rで評判機17号機の石野貴之を逆転したかたちの赤岩善生、5Rで2マーク小回りで2番手に浮上した辻栄蔵、12Rで新田雄史をきっちり捌いて2番手確保の田中信一郎。もちろん石野も良さそうだ。まあ、この面々は腕なのか足なのか、という名手ばかりなわけだが、逆に言えば、テクを繰り出せる足にはなっているということでもある。
そしてもう一人、長嶋万記をあげなければならないだろう。今日の極私的MVPは長嶋。8Rの逆転2番手浮上はお見事の一言だった。6コースから最後に最内を差した長嶋はバック4番手。まずここからグイグイと前を追い上げた直線足が凄かったということは言っておこう。ハイライトはそこからだ。長嶋は2マークで2番手争いをしていた2艇の内にボートをねじ込んでいく。その2艇とは、池田浩二と今垣光太郎である。SG9冠王に果敢にアタックしたのだ。そして、全速で切り抜けようとした池田を捌き、それを見て差した今垣を一気に追い抜いた。整備が続く苦しい足色の池田、即日帰郷で多少の気落ちがあったであろう今垣だったとはいえ、はるかに格上の相手を一発で逆転したのだからたいしたもの。足は間違いなくいいし、何よりこの相手に怯まず勝負したその意気や良し、だ。
これで長嶋は2走2着。何やら宮島を思い出すわけだが、その内容は2週間前とは違う、と言っておこう。この足の優位さと強いメンタルを保つことができれば、明日からもきっと台風の目となるはずだ。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)