BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――汗を垂らしながら奮闘

 

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 坪井康晴が忙しかった。1R発売中、積んであったモーターを外した。閑散としていた装着場、周囲にはヘルプする選手がいなかったが、係留所のほうから平本真之らが駆けつけて、坪井は礼を口にしながら整備室に入っている。

 本体整備か、とも思われたが、坪井が外し始めたのはキャリアボデー。交換だろう。それほど時間もかからずに作業は終わり、まだ着水が認められている時間帯に再装着を済ませて、坪井は水面へと向かっている。さすがに試運転する時間はなかった。

 2R発売中になると、坪井は試運転を始めた。松井繁とも足合わせをしたようで、係留所で話し込む姿があった。やがて坪井はボートを陸に上げ、モーターを外し始めている。今度こそ装着場に選手の姿は皆無で、どうしたものかとこちらが思わずヒヤヒヤしたが、少し待つと坪井と同期の谷村一哉があらわれて、二人でモーターを架台に乗せている。そして坪井は整備室へ。おそらく元に戻すことになるだろう。

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 今日のピットはまた一段と暑い。低温サウナに入っているような暑さである。選手は誰もが必死に動いているが、それこそ低温サウナの中で作業をしているようなものである。これはキツい。まあ、減量にはなるんでしょうかね。

 試運転をする選手も多い。1R発売中には、石野貴之らが緑ランプがついたと同時に水面に飛び出し、何周かして係留所につけ、ヘルメットを脱ぐと髪が汗で濡れているのがわかる。石野は暑そうな顔を少しも見せずに淡々としているが、そりゃもう、暑くないわけがないのである。

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「クロちゃん、ありがとう、よく書けてたで」と言いながら係留所に降りていったのは松井繁。お褒めの言葉は、BOATBoy9月号の王者インタビューについて。絶賛発売中なので、ぜひご覧ください。えーっと、宣伝はどうでもいいのだが、松井もまた、この暑さのなかで水面を走り回っている。松井はSGだろうが一般戦だろうが「いつも通りやるだけ」という言い方をよくするが、寒かろうが暑かろうがやっぱり「いつも通り」。石野同様に髪の毛を濡らしながら、作業を続ける。それが王者の強さの源泉、みたいなことが9月号にも書かれているので、ぜひご覧ください。

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 といった具合に、多くの選手が残暑厳しきなかで動き回っているわけだが、ピット全体としては、ちらりと書いたように、閑散とした空気になっている。レディースチャンピオンを見てきた後だからなおさら、SGの3日目らしいなと思う。整備室には、坪井のほかには機歴簿を見つめる田村隆信のみ。装着場にはちらほらと選手の影があらわれては消えるのみ。そしてペラ室は満員御礼。目立つような大きな動きは、この段階では見られないのがSGの日常である。まあ、後半には赤岩善生の引き続きの大整備が見られるのかもしれないが。

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 というわけで、1Rの赤岩はまたもや6着。1号艇でも機力劣勢を覆すことができなかった。レース後の様子はあまり感情的には見えないのだが、しかし腹の底では反骨心がふつふつとたぎっていることだろう。レース後の整備が始まる前にピットを引き上げてこれを書き始めているが、6Rまでの中4レースでまた何かを施してくる可能性はある。

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 このレースで勝った篠崎仁志も、感情をあまり見せていなかった。得点率的にはかなり厳しい状況で、しかし6号艇からきっちり1着。前者の憂鬱が強いのか、あるいは後者の歓喜が強いのか。それをミックスすると、淡々とした雰囲気になるのだろうか。

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 それよりも、いったんは勝ちが見えていた、というか、勝ったと思えたはずの谷村一哉のほうには、ちょっとした落胆が鮮明に見えていた。谷村が大きなミスをしたとは思えなかったのだが……。しかし昨日の6着を少しだけ巻き返して、力強く後半に向かいたいところ。先述した坪井のエンジン吊りを手伝ったあとには、9Rに向けての作業を始めている。1Rの悔しさを晴らすためにも、調整には力が入るはずだ。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)