BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――妥協しない!

 

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 赤岩善生の苦闘は続く。今日は1号艇でも6着。そして6Rでは、5着にはなったものの、毒島誠にダンプするかたちとなって不良航法。ボートレースは何があるかわからないのは間違いないけれども、さすがに予選突破は絶望と言うしかない。絶望的、ではなく、絶望。

 しかし、赤岩の奮闘もまた続く。レース後はふたたび整備室にこもり、本体を割った。燃料タンクを外していたため、おそらく毒島との接触の際に燃料タンクも含めたその周辺が歪んだものと思われる。その交換、または調整だと推測されるが、とにかく赤岩はどんな状況でも緩めることなく、整備を続ける。本人に言わせれば「当たり前でしょ」ということになるのだろうが、その当たり前のことを目の当たりにして感銘を受けるのである。

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 田村隆信も、8R後に同じ作業をしている。田村曰く、「面倒くさい作業ですけどね」。しかし、これに気づいたらやらねばならぬ。モーターの動きに影響を及ぼす可能性もあるからだ。赤岩も田村も、妥協せずに作業をしたわけだ。

 その田村、8Rはインを獲るんじゃないか、くらいの動きで2コースに入っている。タイミング的には獲れるようにも見えたが……「だって、ノープランだったから……」。田村は4号艇で、4カドから一気に攻めるレースを頭に思い描いていた。ところが、6号艇の下條雄太郎がピット離れで飛んで、田村までが一気に絞め込まれてしまった。想定が崩れて、計算も狂った。まさにノープランでコースを獲り返すべく回り込みに行ったら……「(舳先を)向けることもできたけど、向けるだけじゃ意味ないし……」。田村にとって、これは実に悔やまれるレースとなってしまったのだ。

 大事な点は「向けるだけじゃ意味ない」。田村はコース獲りで時にトリッキーな動きを見せるが、それはすべて「勝つため」ということである。田村はかつて言った。「面白いレースをすることが、僕にとっては勝つためのレース」。明日の田村は5号艇。「黄色だけど、緑に見える(笑)」と言う通り、6号艇には深川真二がいる。さあ、どうするか。もちろん明日は勝つためのプランを描いて、それを現実にするべく動くことだろう。

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 赤岩と田村以外は、整備室で大きな動きは見られなかった。モーター格納をしている選手以外では、中島孝平がゲージ擦りをしていたくらいか。隅のほうのテーブルで、黙々とゲージに向き合う。時にプロペラに当てながら、静かに作業を続けていた。

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 プロペラ室はやはり多くの選手が作業をしている。12Rを控えた森高一真も、難しい顔をしながら、ペラと向き合っていた。その森高が、ペラを係留所につけて陸に上がってきて、「仕事しとんのかい!」といちゃもん(?)をつけてきた。「仕事しに来たんじゃなくて、呑みに来とるんやろ!」。えーっと、全面的に否定できないのが痛いところなんですが……。森高、どうやら私がエビス屋という大好きな店に入り浸っているのを聞きつけたらしく、「店に行ったら、たいがいクロちゃんがおるって聞いたで」とのこと。だっははー、そうなんすよ~。エビス屋最高なんです。「くっそー、ええなあ!」。森高は羨ましそうに笑って、喫煙所に一服付けにいったのであった。ええなあ、って、アンタ酒弱いじゃん……。

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 いやいや、もちろん、仕事は真面目にしております。そして、水神祭で森高に「真面目すぎる」と茶々入れられていた山田祐也も、その通り真面目に試運転を続けているのであった。勝って兜の緒を締めよ、などという慣用句が頭に浮かぶ。水神祭をあげたからって浮かれることなく、明日のための準備を着々と進める。予選突破にはかなり厳しい条件となっているが、諦めることなく、予選最終走に臨むことだろう。

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 さてさて、それからかなり後のことなのだが、妙な光景を見かけた。控室も入っている競技棟は室内禁煙で、玄関の脇に屋外の喫煙所が設けられている。灰皿とベンチが置かれていて、喫煙者の選手が美味そうに紫煙をくゆらせているのをよく見かける(最近は電子タバコ派も増えました)。その前の地面に、なぜか森高、白井英治、坪井康晴、石野貴之が体育座りをしているのだ。誰もタバコは吸っていない。喫煙所に誰かいて、その話を車座みたいになって聞いているかとも思われたが、特に会話を交わしている様子もない。座るならベンチに座ればいいのに、なぜみんな揃って地べたに体育座りなのか。まあ、どうでもいいことなんだけど、ちょっと異様なシーンではありました。というか、座ってるだけなら、室内に入って涼めばいいのに……。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)