BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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若松メモリアルTOPICS 3日目

フランケン2号

 

 明日以降は書く余裕がないと思うので、今のうちに書いておこう。赤岩善生。前検からの4日間は、「忙殺」という言葉が相応しい。「報われぬ忙殺」と呼ぶべきか。まず、初日1Rの前に電気一式とクランクシャフト(前検のときに換えたはずだ)を換えたものの、ズブズブの6着大敗。整備巧者と呼ばれるレーサーはいっぺんに多くの部品を換えず、ひとつふたつ単位で換えて走りながら「どこが悪いのか」を探り当てると言う。Aに換えてもダメならB、Bを換えてもダメならC……という要領で、“容疑者”の範囲を狭めていく。今節の赤岩がまさにそれだろう。

 

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 電気一式、クランクシャフトで当たりを見いだせなかった赤岩は、初日の1Rが終わってすぐにシリンダーケースとキャリアボデーを交換した。だが、6Rの結果はズルズルの6着惨敗。明らかに足色はワーストのまま。これで“4人”の容疑者がリストから消えた。整備の名探偵・赤岩が次に着手したのはピストン2個だった。が、2日目1Rはまたしてもドロドロの6着完敗。もう、5種類の部品を換えた時点で赤岩の2号機はほぼほぼ別物のモーターである。人造人間である。そして、これだけ大手術をしてもまったくパワーアップの気配はなし。もはや、万策尽きたか……。

 とんでもなかった。今日の1Rの直前情報を聞いて、ぶったまげた。

――ピストン2個・リング4本・シリンダーケース・キャリアボデー!!??

 まさに、最後の切り札か。ピストン×リング×シリンダーケースはいわゆる「セット交換」で、前年度のどれかしらのモーターのセットをそっくり移植したと思われる。2度目のキャリアボデーは前の物に戻したか、別の物に換えたのか。フランケンシュタイン2号機。嗚呼、それでも1Rの赤岩2号機はインの起こしからまったく出足が利かず、2コースの今村豊に簡単にまくられた。ボコボコの6着大惨敗。

 

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 続く6R、さすがに部品交換ラッシュは途切れたが、何かしらの調整をしたであろう赤岩はやはり見せ場すら作れず5着に敗れた。2マークで毒島誠に突っ込んでの5着(減点7点)だから、実質6着に近い。整備という整備をやり尽くしての66665着……もう一度、赤岩が手掛けた大部品を時系列で羅列しておこう。

――電気一式、クランクシャフト、シリンダーケース、キャリアボデー、ピストン2、ピストン2、ピストンリング4、シリンダーケース、キャリアボデー。

 書いているだけで目眩が起きそうなのだから、実際に整備し続けた赤岩はどれほど忙しかっただろう。そして、まだ“犯人”を特定できない悔しさはどれほどだろう。

 

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 10R頃、ピットから戻ってきた黒須田が興味深げに言った。

「赤岩、また整備してましたよ。もはや僕には何をどうしてるのかさっぱりわかりませんけど。とにかく、やってました」

 うーーん、まいった。F2持ちの身の上で、もうV戦線とは無縁の成績なのに、さらなる深遠な微調整に埋没しているのだろう。今日の1R1号艇で赤岩が大敗してから、6R5号艇の頭オッズが何倍にも跳ね上がった。300~500倍前後だったのが、直前には真っ黄色(1000倍以上)に染まっていた。ついに、ファンも今節の赤岩を見限りはじめた。が、こうなってからの赤岩が、実はメチャクチャ怖いのだ。明日以降も間違いなく整備をやり続けるから。もちろん、このまま犯人を特定できずに“時効”を迎える可能性は低くない。それくらい、2号機はどうかしている。だがしかし、無類の整備巧者は己のプライドに賭けても戦い続けるはずだ。明日以降、いくら6という数字が並んでも、絶対に軽視してはならない、とお伝えしておく。

 

2コースの明暗

 

 さてさて、今日はいきなり篠崎仁志の6コースからの「抜き」あり、長田頼宗の凄まじい2段まくりあり、と華やかな若松水面だった。そんな中で特筆したいのは、2コースで活躍した面々だ。今日の若松は終日6m前後の強いホーム向かい風が吹き荒れた。地元の記者さんが「ここは2コース受難の水面だよ」と教えてくれたものだが、向かい風はさらにその難度を増幅させる。事実、今日の2コースから差しを選択した選手は、ほとんどが舟券の対象から消え去った。理屈は簡単で、2コースから差すには相応に落とす必要があり、落とせば向かい風の影響をモロに浴びて差しの威力が損なわれる。逆に握って回った選手はしっかり舟が返るから、容易に2コース選手を攻め潰せる。そんな自然の悪戯に抗えず、今日は吉川元浩、原田幸哉、須藤博倫らが6着大敗を喫した。

 

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 そんな中、ただひとり2コースから「差し」で勝ちきったのが5Rの山田祐也だった。インの山口剛がやや握りすぎたのだとしても、握りすぎず落としすぎずターンマークを舐めるように小さく回った祐也のターンは絶品だった。ルーキー世代は2コース差しが苦手としたものだが、大舞台でこんな完璧なターンをやらかしたのは非凡なセンスと言う他ないだろう。名うてのターン巧者たちが大敗を喫した水面での「2コース差しきり」は、水神祭の想い出とともに生涯自慢していいと思うぞ(笑)。

 

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 その他で2コースから勝ちきった選手たちは、豪快なまくり決着だった。まずは7Rの寺田祥。3号艇の寺田が進入争いのもつれの中で2コースに入ったとき、「ピンチかも」と直感した。さすがの節イチパワーでも、今日の水面では差しに回れば大敗がありえる。そう思ったのだが、まったくの杞憂だったな。インの新田雄史が起こしからもたついている間にシュッと艇を伸ばし、まんま超抜の行き足を生かしてナチュラルにまくりきってしまった。うーーん、今日もまたまた52号機パワー、恐るべし!

 

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 もうひとり、意表の2コースツケマイで大穴をぶち開けたのが最終レースの森高一真だ。さすがの穴男。しかも、この艇界きってのギャンブラーは、ハナからまくりしか考えていなかった。

「今日の水面は差しても届かんみたいやから、イチかバチか握ってみようと……」

 一見、何も考えず本能まかせに動くタイプに思える森高だが、しっかりと気象状況と2コース差しの危うい関連性を頭にインプットしていたわけだ。

「実は森高が卒業した香川の三本松高校(祝・甲子園出場!)って、かなりの進学校なんですって」

 昨日、「エビス屋」で黒須田からこんな話を聞いてのけ反ったのだが、今日の2コースツケマイはそんな“高学歴”を証明する頭脳戦法だったなぁ(笑)。ヤンキーのように見えて実はインテリ。大穴男・カズマックスの奥はあまりにも深い。

 

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 そうそう、今日も最後に一言。忍者・栄蔵さん、あんた、どこからどうやっていつの間に2番手に辿り着いたんですかーー!!??(text/畠山、photos/シギー中尾)