BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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尼崎オールスターTOPICS 3日目

氷点下14度の挑戦

 あれこれ大波乱が続出した昨日の揺り戻しか、今日は最終レースの300倍以外はそこそこ平穏な尼崎水面だった。特筆すべきトピックはと言うと……そうそう、今日はタイプの違う3種類の反則=減点が発生している。

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 まずは2R、道中で3着争いをしていた木下翔太が、2周1マークでバランスを崩して転覆。選手責任の失格でマイナス5点を頂戴した。この影響で木下は後半6Rの前にピストン2個と電気一式を交換(6着大敗)。整備に詳しい円陣悟先生(仮名)によると、「2走乗りの前半で派手な転覆をやらかし、ピストン2個を交換したときは、クランクシャフトへの影響も疑った方がいい。シャフト交換は時間がかかるため、ピストンだけの応急処置で後半戦に臨むことが多いんです」とのこと。明日、木下がシャフト交換をしたかどうかはチェックしておきたい。まあ、実のところシャフト交換があってもなくても、それでパワーアップにつながることは少ないらしいのだが……。

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 第2のケース。5Rの6号艇・平石和男はちょっと可哀そうな減点だった。スタート展示で前付けから5コースに潜り込んだ平ちゃん、いざ本番でも前付けに動いてから「同じ5コースあたりかなぁ」という感じでダラダラ艇を横に流していた。で、早々に5コース想定付近に辿り着いたとき、3号艇の市橋卓士と4号艇の井口佳典が舳先をスタート方向とは逆方面に翻したのだ。つまり、3・4コースの空間がぽっかり空いてしまった。
 さあ大変。やや慌てた感じで内へ内へと艇を寄せた平石だったが、時すでに遅し。「開けすぎ(適正な間隔、ホーム横幅に関する違反)」による待機行動違反で痛恨のマイナス7点だ。確かに、3コースあたりで舳先をホーム側に向けていれば何の問題もなかったわけだが、スタ展のイメージもあって「5コースあたり」と思い込んでしまったのだな。足的には十分に予選を突破できるほどのパワーがあっただけに、残念無念のアクシデントだった。

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 そして、第3のケースは不良航法。やらかしたのは、10Rの峰竜太! 1周バック3、4番手あたりだった峰は、背後からきた市橋に舳先を突っ込まれた。それがほんのわずかだったため、峰はそのまま締め込みながら2マークをぶん回した。が、そのターンの先にいた新田雄史に遠心力で衝突、さらに新田が篠崎仁志に衝突するという「ニュージェネ玉突き事故」が起こったため、その起因となった峰がマイナス7点を喰らった。見た目にも派手な玉突きではあったが、峰にとってはあの状況で競り勝つにはあれ以外の戦法も難しかったはずだ。結果的にラフプレーはラフプレーとして、不運な隊形であったとは思う。
 でもって峰と言えば……昨日の10Rでも待機行動でマイナス7点という失態を演じている。つまり、減点のトータルは14点!!!!!!!!!!!!!! 去年のドリーム戦のダイブといい、オールスターでは何かとお騒がせな投票トップレーサーではあるな。で、普通はマイナス14点ともなればその場で予選アウトとしたものだが、この男は違う。これだけポイントを削られながら、明日の12R4号艇で②着なら勝率6・00。まだまだ現実味たっぷりの勝負駆けを残しているのだ。
 万が一にもこの逆境を跳ね返して優勝なんてことになったら「予選で待機行動&不良航法をやらかしながらSG制覇」という(おそらく)前代未聞の伝説になることだろう。減点がなければ今頃8・40、暫定2位だったはずの峰が23位からどこまで頂点に近づけるか。とくと拝見するとしよう。

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 さてさて、気になる予選ランキングなのだが、昨日までトップだった新田は峰アタックの影響で?2位に後退。代わって暫定トップに立ったのは中島孝平だ。昨日、その足色について少し触れたが、今日のパワーはさらに凄まじいものだった。どこが、と聞かれれば、ほとんど全部と答えるしかない。起こしからのスムースな出足、さらにスリットから伸びて行く行き足。このレースでインの松井繁をまくったのは平石だったが、その起爆剤は間違いなく中島だ。1マークの手前で、完全に松井をまくりきるだけの態勢を築き上げていた。それを見た平石が飛びつき、抵抗しながら先まくりを打ったのだ。
 で、自力でまくる気満々だった中島はやむなく差しに切り替えたわけだが、2本の引き波を超えるパワーの凄いこと! 方針変換の差しだったにも関わらず、出口からあっという間に突き抜けて早々に一人旅を決め込んでいた。今日の全部のレースを見渡す限り、文句なしのトップ足だったと思う。明日は6号艇の1回走という試練を残す中島だが、パワー的にはアウトからでも克服できそうな気配ではある。

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 最後に、11Rの小野生奈の5コースまくり差しもなかなかに素晴らしかった。自力でぶん回して、実に狭い間隙を怯むことなく突っ込んで行った。惜しくもインの山崎智也には届かず、道中でも白井英治に競り負けて3着ではあったが、明日への期待を大いに抱かせる1マークだった。その明日は1&4号艇での“予選トップ”への勝負駆け。ランキング上位組は外枠が多いため、ビンビン連勝ならばその快挙もありえる、とお伝えしておこう。(text/畠山、photos/シギー中尾)