BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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芦屋Wチャレカダイジェスト 2日目

ゆきゆきて、女神軍。

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 これは、ちょっとした“事件”かも知れない。待機行動の小野生奈だ。前節、福岡のヴィーナスシリーズで外枠からゴリゴリ動き、11戦すべてスロー1~3コースで見事に優勝。いささか驚きつつも「地元のヴィーナスだけに、進入から格の違いを見せつけたか」などと思っていたのだが、今日の5Rでもそれは再現された。1号艇が同県の先輩・藤崎小百合で、2号艇は今や女子レース界の重鎮とも呼ぶべき谷川里江。6号艇の生奈からすれば、触らぬ神に祟りなし、的な存在だろう(笑)。
 だがしかし! さすがにここは枠なり6コースか、と思いきや、生奈はスタート展示から行った。オレンジブイからエンジンを噴かして3コース奪取。でもって5R本番は、さらに激しく大先輩たちを攻めたてた。その途中で1期先輩の遠藤エミが「そんな好き勝手させないわよ!」ってな迫力で激しくブロックしたものだが、その抵抗を張り手で振り払うようにしてさらに前進。藤崎や谷川から本気でコースを奪いに行ったのだった。

 

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 生奈…………。
 私は唖然とこの光景を見ていた。昔は女子戦でもピットアウトから熾烈な空中戦が展開されたものだが、今は時代が違う。違い過ぎる。女子戦イコール枠なり3対3で、かの日高逸子ママですら最近は6号艇から枠なりで行くことが多いのだ。おそらく女子の選手間では「動くのはご法度」的な不文律も芽生え始めていることだろう。そんな中、30歳の生奈が西島義則も真っ青レベルのゴリゴリ前付けをしたのである。
 本人と話をしていないので、この真意は分からない。前節の福岡同様、地元の気合をそのまま水面に投影しているのかも知れない。GPシリーズの勝負駆けという意味合いかも知れない。あるいは、「もっと女子選手も進入から厳しいレースをしなきゃ」という啓蒙的なメッセージも含まれているのかも知れない。どんな理由であれ、最近の生奈の意外過ぎる前付けアタックを、私は断固として支持する。諸手を挙げて称賛する。

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 ボートレースはスリット~ゴールまでの着順を競うだけの単純なギャンブルスポーツではない。作戦待機行動という実にスリリングな心理戦があるからこそ、その後のレース展開にも深いコクが生まれる。私はそう信じているし、だからこそその部分が圧倒的に欠落している昨今の女子レースを軽視してきた。今後、私はまた女子レースにもそれなりの興味とともに視線を注ぐだろう。もちろん、進入争いでも1マークでも道中の追い上げでも人間味がとめどなく溢れる小野生奈を目当てに。そして、おそらく生奈の“決意”に賛同して後に続くであろう女子レーサーたちを見るために。
 生奈がゴリゴリ動いて3コースを奪った5Rは、スロー4艇がかなり深くなったところを5カドの今井美亜が一気にまくってアウトセットの大波乱となった。昨日までのイン11連勝とはまったく違うスリリングなレースを演出したのは、まずは生奈であり、そして今井美亜だった。これがボートレースの大切な一形態(コク)だと私は思う。その深いコクを導き出すべきレーサーが若い女子の中から出現したことが、心の底から嬉しい。

 さて、今日のGPチャレンジ戦線は?

賞金ランキング

1毒島 誠 13822万……1位確定!
2白井英治  8955万▲…トップ6確定
3井口佳典  8820万……トップ6確定
4峰 竜太  8635万……トップ6確定
5中島孝平  7802万……守田超えでトップ6当確
6守田俊介  7727万……中島超えでトップ6確定
  ――――
7吉川元浩  7433万▲…GP1st確定
8岡崎恭裕  6647万……GP確定、優勝でトップ6
9笠原 亮  6571万……GP確定、優勝でトップ6
10桐生順平  6266万……GP確定、優勝でトップ6
11濱野谷憲吾 5914万……GP確定、優勝でトップ6
12太田和美 5871万▲…GP1st確定
13石野貴之 5855万……GP当確、優勝でトップ6
14新田雄史 5707万▲…GP1stほぼ当確
15池田浩二 5625万……新田超えでGP1st当確、優勝でトップ6当確
16菊地孝平 5587万……新田超えでGP1st当確、優勝でトップ6当確
17瓜生正義 5570万▲…かなり危険
18寺田 祥 5545万▲…崖っぷちも絶望的ではない
  ――――
19赤岩善生 5485万……優出完走でGP確定、選抜戦でも有望
20松井 繁 5268万……優出完走でGP当確
21前本泰和 5239万……優出④着でGP当確
23湯川浩司 5151万……優出③着でGP当確
24長田頼宗 5088万……優出③着でGP当確
25茅原悠紀 5030万……優出②着でGP当確
27柳沢 一 5004万……優出②着でGP当確
30西山貴浩 4689万……優勝でGP確定(以下同)
31篠崎仁志 4599万
32山崎智也 4567万
33平本真之 4408万
34平尾崇典 4403万
35吉田拡郎 4331万
36石川真二 4175万……賞典除外、脱落!
37坪井康晴 4142万
38秋山直之 4139万
40齊藤 仁 3968万
42片岡雅裕 3950万
43馬場貴也 3952万
44木下翔太 3925万
45羽野直也 3873万
46中野次郎 3878万
※▲はチャレカ欠場

 今日は賞金順位の変動もなくランキング的には穏やかな1日だったのだが、2日目にしてV戦線&GP戦線の第一号の脱落者が……。

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 ダービーのピット離れで観衆を沸かせた石川真二が、「ピット離れ以外でも」(by選手紹介)沸かせてしまった。なんとも残念なレースぶりで。前半3Rは2周2マークで切り返した瞬間にキャビッて他艇に不利を与え不良航法(-7点)、後半10Rも同じ2周2マークで切り返したらば他艇に接触して「突っ込み」の不良航法……節間2度目の不良航法ということで、その場で賞典除外が確定した。うーーん。今節も大活躍してグランプリ入りしたら、ピットアウトから目が離せない「台風の目」になるだろうと期待していたのだが、思わぬ形でV戦線から離脱してしまった。ただ、このベテラン風雲児のシリーズはまだ終わっていない。今日の一事(正確には二事)で人気が凋落するなら、舟券的には絶好の狙い目にもなりうる。明日以降も、石川のスタート展示は刮目してチェックするとしよう。

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 一方、GPの黄信号から「点滅の青信号」くらいまで復活したのが松井繁だ。昨日はコンマ09&07というゼロ台連発のスタートが報われず、6着3着という背筋の寒いスタートを切った王者は、今日もドカーンと張り込んだ。コンマ03、おそらく全速! 助走たっぷりのダッシュならいざ知らず、そこそこ深めの2コースというスタート勘の利きにくい起こしだったから恐れ入る。そして、スリットからゴキゲンな行き足で半分ほど覗き、鮮やかにインの笠原亮を差しきった。何度も書いた言葉だが、実になんとも恐ろしい男だ。この待望の1着で予選17位まで浮上した松井の明日は、12R1号艇。おそらく鬼気迫る仁王立ちの逃走劇で、さらに予選ランクをアップさせることだろう。「GPへ最低でも優出条件」というノルマが、はっきりと見えてきた。

女子賞金ランキング

1小野生奈  3503万……QC確定
2長嶋万記 3095万……QC確定
3山川美由紀 2991万……QC確定
4中谷朋子 2894万……QC確定
5遠藤エミ 2854万……QC確定
6日高逸子 2837万……QC確定
7中村桃佳 2732万▲…QC確定
8松本晶恵 2666万▲…やや危険
9守屋美穂 2620万…松本超えでQC当確
10竹井奈美 2609万…松本超えでQC当確
11細川裕子 2600万▲…かなり危険
12寺田千恵 2580万…松本超えでQC当確
――――
13大山千広 2433万…優出②着でQC当確
14落合直子 2410万…優勝でQC当確
15藤崎小百合 2403万…優勝でQC当確
16海野ゆかり 2242万…優勝でQC当確
17津田裕絵 2144万…優勝で微妙
18今井美亜 2102万…ほぼ絶望的
19川野芽唯 2055万…圏外、以下同
20宇野弥生 2044万
22岸 恵子 1844万
25谷川里江 1785万
31中里優子 1671万
※▲はチャレカ欠場

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 限りなくクイクラ当確に近づく「賞金ランク暫定8位・松本晶恵超え」へ、同9位の守屋美穂が力強く突き進んでいる。今日の11Rの5コースまくり差しの切れ味は、まさにその逆転を予感させるものだった。パワー的にも女子組の中では間違いなく上位レベル。特にターン回りなどの出足系統が強力なので、1マークで千切れない限りはしっかりと上位着をゲットできるだろう。このゴキゲンの足色も含めて、私の中では勝手に「QC当確」のランプを点している。

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 一方、賞金ランク19位からの下剋上QC入りを目指す大山千広のレースっぷりも天晴れの一語。今日は6号艇の1回走というちょっとした試金石ではあったが、道中4番手から前を行く遠藤エミを追って追って追い回し、最終ターンマークの全速握りマイでついに捕えきってしまった。その初動の早さといい旋回の速さといい、うっすらわかってはいたが恐るべき資質だと改めて感じた。もちろん負かした相手を考えれば、パワーの後押しがあったことも間違いないだろう。6号艇をクリアしての予選暫定4位。SG組の松井同様「とりあえずは優出が絶対必要条件」というノルマへ、また一歩近づいた。
 そうそう、賞金ランクの変動がひとつ。昨日まで賞金ランク11位だった竹井奈美が細川裕子を超えて暫定10位にアップ。さらに、上を見れば同9位の守屋とは約11万円差。この両者の順位が最終日に雌雄を分かつ可能性が微かながらあるので、明日以降も両者の賞金差に注目していただきたい。今節不在で11位にダウンした細川は、ほぼ間違いなく今節中に12位の寺田千恵にも抜かれるだろう。大山らボーダー圏外の選手がどれだけ活躍するか、で細川のQC当確の可能性は様々に変動することになる。(TEXT/畠山、PHOTOS/シギー中尾)