THE勝負駆け①予選トップ争い
ふたりの鬼平
今節の三国にはふたりの鬼平が存在する。ひとりはF2という重いハンデを背負いながら、阿修羅の如き精神力でV戦線を疾駆する吉田裕平だ。今日の裕平のレースを中心に、予選トップ争いを振り返ってみよう。
まずは前半3R。2号艇の裕平(暫定2位)は5号艇・西川昌希の前付けをすんなりと迎え入れた。F2持ちとしては当然の判断に思えたが、驚いたのはその直後だ。なんと、迷うことなく舳先を反転させたのである。問答無用の3カド攻撃!! この奇襲には「攻めの3カド」と「守りの3カド」がある。攻めはもちろん自力のアタマ狙い。守りは4カド選手の猛攻を受け止めて大敗を避けるための高等戦術。4コースに引いたのは超抜パワーと謳われる大上卓人だけに、私はこれを「守りの3カド」と捉えた。大上さえブロックできれば、それなりに大きなポイントを加算できる。そう解釈した。
だがしかし、裕平のそれはアタマ=暫定トップだけを狙った「攻めの3カド」だったか。そのスタートはコンマ07! 大上がコンマ04だったから「守り」と言えなくもないが、直後の攻めの早かったこと。外の大上を歯牙にもかけず、内で凹んだ西川をグイグイ絞め込んでから剃刀のようなまくり差し一閃。まさに電光石火のような早業で暫定トップに躍り出てしまった。慣れない3カド~コンマ07の踏み込み~鮮やかすぎるまくり差し圧勝という一連の流れは、F2というファクターを加味すれば文句なしに今日までのベストレースに選ぶべきだろう。
勝率8・00に到達した裕平を最初に脅かしたのは、6R4号艇の福田宗平だった。そう、第二の鬼平だ。こちらのセールスポイントは、恐るべき鬼足。今日の宗平の回り足も凄まじかった。2コースからまくりきった馬場剛、3コースからまくり差した前田篤哉に遅れること2・3艇身。そこからバック最内をじりじり伸びて追い上げ、2マークはマイシロのない切り返しのような小回りターン一発で先頭に躍り出た。普通はキャビるか流れるかで3着が精一杯のターンだったはずなのに! このミラクル回り足とともに7・60で予選を終えた宗平は、9R4号艇の裕平に③着以上という軽くはない負荷を与えたのだった。
続く7Rで気を吐いたのは、昨日まで予選トップの永井彪也だ。インの竹井貴史は捕えきれなかったものの、2コースからしっかり差し粘って2着入線。予選7・67フィニッシュで宗平を上回り、暫定2位の座をキープした。この時点で彪也を上回る可能性のある選手は裕平、佐藤隆太郎、高倉和士の3人に絞られたが、8Rで高倉がまくりぶっ飛び6着大敗。彪也は準優1号艇を確定させつつ、9Rの裕平vs隆太郎の直接対決を待つ身となった。
この9Rのトップ条件はこうだ。
★4号艇・吉田裕平=③着で彪也超え、②着で文句なしに自力当選。
★6号艇・佐藤隆太郎=①着のみで、さらに裕平が③着以下ならトップ。
彪也からすれば「裕平が④着以下、隆太郎が②着以下でトップ」という立ち位置だった。いざ実戦は……準優入りにメイチ①着勝負の1号艇・近江翔吾がフライングという荒れ場となり、ここでもコンマ09まで踏み込んだ裕平(6戦中4戦がゼロ台で、今節の平均はトップタイのコンマ09!!!!)が安定したレース足で3着をもぎ取り、彪也と同率ながら1着数の差でトップに君臨した。実になんとも、恐るべき22歳だ。予選2位は彪也で、同3位でもうひとつの準優1号艇をGETしたのは鬼足・宗平。くるくる回れる魔法のような回り足は、明日のみならず優勝戦(できればセンター枠が望ましい)でも楽しみでならない。
THE勝負駆け②準優ボーダー争い
チャンプの意地
一方、予選18位のボーダーは10Rまで5・80前後に小さく揺れて、最終的に指定席とも言うべき6・00に収束した。その6・00ジャストの滑り込みで準優チケットを手に入れたのが、前年度覇者の関浩哉(最終的に16位)だ。開会式でただひとり「優勝します!」と宣言した関だが、今節はどうにもリズムに乗りきれずに苦戦を強いられた。が、ここ一番の勝負強さはさすがの前年度チャンプだ。前半2Rは2周1マークの強烈なツケマイで2着に浮上し、後半9Rも吉田裕平との接戦に競り勝って2着。必要十分条件の16点をキッチリもぎ取って連覇への望みをつないだ。正直、今日の実戦足は私が期待したほどではなかったが、キッチリ合わせきれれば準優6号艇でも勝ち負けできるはず。明日の気配に注目したい。
同じく6・00のジャスト18位、ギリギリ生き残ったのが「ピットアウトの若き魔神」木村仁紀だ。11R5号艇の仁紀はスタート展示で持ち前のバナレが火を噴いて2コース奪取。1号艇の西川昌希と仲良く?1・2コースに居座ったものだが、いざ本番では泣かず飛ばず……いわゆる「飛びの飛ばず」という仁紀のアタマ舟券を買った者(←はい、私も昌希との1=5勝負でした)にとっていちばん有り難くないパターンをやらかした。が、それでも粘りっこい回り足で西野雄貴らの追撃を退けて絶対ノルマの3着を死守。準優の相棒たちをピットアウトから震撼するであろうゾンビの如き男が生き残ってしまったわけだ。もちろん、明日の12Rもスタート展示から目が離せないわけだが、とにもかくにも「飛びの飛ばず」という半端なパターンだけは回避してもらいたい(笑)。
一方、19位といういちばん悔しいポジションで予選を終えたのが中村晃朋だ。昨日の気配が凄まじく良く見えただけに、私にとっても残念な次点だった。今日の実戦足は関のそれと同様に期待したほどではなかったが、14号機のポテンシャルは準優をも最アウトから貫くと思っている。かくなる上は、しっかり仕上げきって明日からの敗者戦を桁違いのパワーで突き進んでもらいたい。
それからそれから、逆に劣勢パワーながら昨日まで9位という好位置に食い込んでいた大山千広が、今日は5・5着と踏ん張りきれずに圏外に消え去った。道中では十八番の全速ぶん回しで先行2艇をゴボー抜きなどの見せ場もあったが、ターンの出口での軽快さがまったく見られないパワーに抗いきれなかった。残念だが、千広が30歳を超えるまでにはまだ7年もの歳月が残されている。このタイトルを獲る日が来ることを期待しつつ、明日以降の奮闘を見守りたい。(photos/シギー中尾、text/畠山)