BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――無念……

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 茅原悠紀がまさかの予選落ちだ。6着2本とは誰が予想しただろうか。レースが終わり、ひとり整備室でモーター格納の作業をする茅原。表情は淡々としていたが、どこか平静を保とうとしているようにも見える。特に意味はないのかもしれないが、周囲に誰一人としていないことが、茅原にかける言葉を誰も探せないという状況にも思えた。そう思えば、静かに作業をする茅原の背中はせつない。ここに懸けてきた思いを誰もが知るだけに、その痛みは全員に伝わっていただろう。

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 ボーダーラインは6・00だったが、全員が準優に駒を進められたわけではなかった。白石健も6・00で予選を終えたが、終盤戦に差し掛かるころには厳しい状況と見えていた。6・00が複数になり、うち何人かが19位より下になる可能性が濃くなっていたのだ。それでも、シラケンはJLCの展望インタビューを受けたのだという。予選突破かなわずお蔵入りになってもいいから、スタッフの人たちの仕事がスムーズになるほうを選んだのだ。そんな人柄が報われてほしいと思うわけだが、白石は20位。上位着順の差で、6・00組では最下位なのだった。

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 9R、1着勝負を実らせたはずの中澤和志も、結果的に19位の次点となっている。18位で残った松井繁=6・00とは上位着順の差。ともに1勝をあげているが、中澤には松井にはある2着がなかった。12Rが終わり、その状況をどこまで把握していたか。中澤は特に表情を変えずに、サバサバと帰宿の準備をしていた。やるだけやった、と言い聞かせてみても、次点はやはり悔しいと思うのだが。

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 そうそう、12Rで山口剛が3番手にいったん上がったが、それをキープしていたら、松井が次点となっていた。着順は両者まったく同じだったが、最高タイムがコンマ2秒、山口のほうが上だったのだ。山口を逆転したのは西村拓也。大阪支部の後輩が王者を救ったかたちになる。山口は3着なら予選突破というのを把握していたはずだが、やはりレース後は特に表情を変えることはなかった。それが真なる悔恨の証しなのかもしれないが。

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 12R、1着勝負で逃げ切った井口佳典は、実に力強い表情でピットに帰還している。レース前に田村隆信と話したとき、井口が1着で6・17というのを田村も把握していた。ということは、同期の井口と当然、そういう話をしているはず。田村は12Rで直接対決。なかなかアツい番組構成だったわけだ。なにしろ銀河系軍団は、こういう状況の時こそバッチバチに鍔迫り合いをする性質だ。それをわかっているだけに、超抜パワーの同期を相手に渾身の逃げを井口は放ったはずだし、それが実ったことは大きな充実感を井口にもたらしたはずだ。

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 その田村隆信が予選トップ! 11Rでトップ争いをしていた久田敏之が6着大敗で大きく後退、12Rを走る田村はこれで楽になったと言えるだろう。西村拓也が12Rを勝ち、田村が4着以下となればトップを譲ることにはなっていたが、田村は3号艇、西村は5号艇。西村が外枠を克服できないのであれば、田村は5着でトップ確定だった。で、その5着になってしまうわけだが(笑)。もちろん5着でOKなどと思っていたわけではないから、レース後はさすがに苦笑いも見えた。それでも、トップ通過をはっきりと意識した田村だから、ひとまず安堵感はあったことだろう。

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 馬場貴也は勝っていたら準優1号艇、バックでは舳先が井口に届きかかっていたから惜しかった。それもあってか、レース後の馬場は不満げな表情を浮かべた。6着でも準優は当確、しかしひとつでも内の枠へ、ひとつでも予選順位を上へ、というのがセオリーである(だから準優当確だからお腹いっぱい、ということは今はほぼありえないと言っていい)。馬場のやや険しい顔つきからはそんなことがうかがえたのであった。

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 11Rでは徳増秀樹が1着で勝負駆け成功。なかなか濃いメンバー構成となっていたが、濃い男がきっちりと逃げ切ってみせた。レース後の徳増は、笑顔ひとつ見せず。長嶋万記が笑顔で出迎え、それで表情はやや柔らかくなっていたが、目元に笑みが浮かぶ瞬間は見当たらなかったのだった。濃いぞ! 準優も濃いレースを期待しよう。

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 さて、茅原が脱落し、女子2人も届かずで、地元の砦となったのが山口達也だ。そのような状況だから、山口は次々と報道陣に声をかけられていた。やはり地元唯一の準優進出だから、注目も集まるだろう。もっとも山口はどこ吹く風とばかりに余裕綽々で過ごしているのだった。機力に手応えのある今節、山口はほぼノーハンマーで戦い、大きな作業を行なう必要もなく予選を突破した。途中、「ヒマっす」と笑っていたりもした。予選を終えて、その様子には変化なし。地元の期待を背負いながらも、決して震えることなく、準優でも豪胆なレースを見せてくれることだろう。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)

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11R、5コースから攻めたが及ばずの原田幸哉。顔をしかめて悔しがる。初日の減点が痛かった……。