BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

宮島グラチャンTOPICS 初日

 今日は実戦トピックスも交えつつ、私なりの独断パワー評価を紹介したい。

★★★徳増秀樹 S【出B+・伸SS】

f:id:boatrace-g-report:20200623180722j:plain

 4Rも11Rも豪快な3コースまくりで連勝発進! 4Rは多分にスタート勝ちの要素が強かったが、11Rのスリット前後からの行き足→伸びは私が45号機に期待したまんまの超抜ストレートパワーだった。両レースとも早めの起こしが功を奏した形で、特訓を見る限りは同じタイミングで起こすとややもっさりと置かれる感じ。つまりはやや出足に不安があって「深めのイン戦でどうか?」「競るとどうか?」という疑問符は付くのだが、徳増流の調整で巧みに手前に寄せる可能性もありそうだ。伸び型の45号機がそんなゾーンの広い自在性を携えたら、言うまでもなくV候補の筆頭となるだろう。今や「SGにもっとも近い男」と呼ばれる45歳が、45号機とともに悲願を遂げるのか。舟券を握りしめて一部始終を見届けるとしよう。

★★★上野真之介S【出S・直S】

f:id:boatrace-g-report:20200623180751j:plain

「直線は上々も出足系統はどうか」と前検段階では微かな疑問符を付けたが、やはり実戦ではそんな不安を蹴散らした。1Rはイン戦ながら吉川昭男の前付けで100m起こし&5カド茅原悠紀が豪快な絞めまくりという絶体絶命の展開に。が、しっかり伸び返して1マークを先取りしたらば、茅原のスピーディなまくり差しをまったく寄せつけずに出口で2艇身ほども突き放していた。ただ、72号機を駆る上野本人はまったく納得していないようで、明日から何らかの調整→足色の変化も想定しておきたい。

★★峰 竜太  A+【出A・行S】

f:id:boatrace-g-report:20200623180825j:plain

 今日の前半6Rは2コースから差してズルリ後退という案外なレースだったが、特訓やスタート展示でのスリット足はえげつないほど突出していた。それを証明したのが後半10R。6号艇から4コースに潜り込み、内艇とほぼ同じタイミングで起こしたら出て行く出て行く! インの菊地孝平も半端ない伸び返しで応戦したが、それを上回る勢いで引き波に沈めた。結果は萩原秀人のマーク差しを浴びて2着も、「その行き足、恐るべし!」と唸らされるパワーだった。現状は予想したとおり、センター筋のターンマーク起こしがもっとも適した足だと思う。

★★菊地孝平 A+【出A・直S】

f:id:boatrace-g-report:20200623180853j:plain

 前半4Rは5コースから差し場がなく4着、後半10Rは↑峰の強襲を浴びてぶっ飛び5着、と成績にはつながらなかったが、随所に鬼足の片鱗を見せた。4Rの展示タイムは今日イチの6秒51! このレースをまくりきった徳増が6秒54だからして、菊地の直線足は推して知るべしだろう。明日は8R6号艇の1回走。早くも勝負駆けだけに前付けもありえるが、自慢の伸びを活かしたダッシュ戦法で大穴演出というシーンを想定しておきたい。

★★興津 藍 A+【出S・直A】

 今日は2R1号艇でのイン逃げ一発のみ。1マークの出口であわや落水?とひんやりするほど振り込んだが、それでも後続を寄せつけずに突き抜けた。出足系統が強烈でストレートも上位レベル。ただ、最大の問題は前節が中村亮太(優出1号艇→6着)で、ペラの形状がかなり特殊である点か。興津自身も前検の段階で「見たことのない形」と吐露しており、今後は自分の形に叩き変える可能性も想定しておきたい。もちろん、亮太ペラで乗り味が良ければ現状維持もありえるのだが……。

★坪井康晴 A【出B・直S】

f:id:boatrace-g-report:20200623180947j:plain

「直線足がアップ=秀逸な展示タイム」はいつもの坪井パターンなのだが、今節は前検からトップ級のストレート足に。前節の中岡正彦(低調機シリーズでV)の直線足は中堅上位レベルだったから、やはり坪井ゲージのなせる業だろう。坪井=差し屋のイメージが浸透しているが、最近はセンター筋から意表のまくりも増えている。常に伸びなりの一発大穴を警戒しておきたい。

★西山貴浩 A【出A・直A】

f:id:boatrace-g-report:20200623181009j:plain

 1Rは3号艇で4着、6Rは4号艇で2着と目立つ成績ではなかったが、道中のしぶとい追い上げや回り足で「おっ」と唸らせるものがあった。乗り手の調整スタイルも「一撃のパンチ力より自在な捌き足」なので、ぴったりの相棒だと思う。SGでの西山は「自分好みの手前に寄せるとストレートが半減」みたいなやや極端な足色になることが多いのだが、今節は課題の行き足~伸びに余裕があるせいか「全部が強めのバランス型」っぽい好ムードが感じられた。この好脚を得た西山がSGでどこまで昇りつめるか、穴舟券とともに見つめてみたい。

 以下、Aの予備候補(B+~A)としては魚谷智之、永井彪也、田村隆信、松井繁、山田康二、赤岩善生、守田俊介あたりも警戒しておきたい。

f:id:boatrace-g-report:20200623181035j:plain

 そしてそして、パワー云々を抜きにして今日イチの素晴らしいレースを魅せたのは、3R3号艇の羽野直也だ。6号艇の前本泰和を入れて、4カドから怒涛の絞めまくり圧勝。スタート勝ちの要素もあったとは言え、カド受け萩原秀人の舳先を蹴散らすような獰猛果敢な攻撃は「本当に羽野キュンなのか?」と思わせるほど激しかった。
 羽野が初めてGIを制した3年ほど前は、捌き技が主流ながらも自信に満ち溢れたレースばかりだった。勝率も7点半ばを超えて「22歳にして超一流レーサーの仲間入りか」と誰もが思ったことだろう。が、そこからスランプとも呼ぶべき低迷期(あくまで超一流を基準にしてだが)に突入する。勝率もじわじわと6点半ばまで落ち込み、何よりもレーススタイルそのものに若者らしい覇気のようなものが感じられないように思えた。フライングは少ない選手(デビューから2本のみ)だから、おそらく何らかの壁にぶつかっての低迷だったのだろう。

f:id:boatrace-g-report:20200623181109j:plain

「なんか、やっと戻ってきたね、羽野キュン」
 黒須田とこんな会話が出るようになったのは、4月頃だったか。スリット~1マークの攻撃姿勢のみならず、2マークで外~外へ全速でぶん回すターンなどなど、その凛々しい姿はまさに3年前にキュンキュンさせた羽野直也そのものだった。やや落ち込んでいた成績もたちまち右肩上がりに回復して、直近10節は6優出1Vと存在感も際立っている。さらに言うなら、一般戦が主戦場ながらセンターまくりが増えはじめてもいた。単に戻っただけでなく、変わったのだ、きっと。
 単なる傍観者としてそんなこんなを感じた矢先の、SGでの4カド絞めまくり。1マークの出口では「本当に羽野キュン?」などと思ったが、すぐに「今の羽野直也ならありえるじゃん!」と脳内で訂正した。この若者の“進化”を肌身で感じているファンが、347倍という大穴を鷲掴みにしたのだろう。鈍感な私は簡単にスルーしてしまったが、遅ればせながらしっかり肝に銘じておくとしよう。
 25歳の羽野直也は、3年前よりはるかに怖い。
 と。(photos/黒須田、text/畠山)