BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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初日トーナメント ダイジェスト

【5R】再逆転×2の熱闘

 スリットほぼ横一線からイン山下流心11号機がスッキリ逃げきるかと思いきや、格上の上野真之介が3コースから電光石火のまくり差し一撃! さすがの切れ味でこのまま独走かと思いきや、2マークでわずかにターンマークを外したところにズッボリの流心差し!!
「ターンマークが回れません」と選手紹介でボヤいた真之介(江戸川は超久々)×江戸川とは相性の良い流心の気持ちの差が生んだ逆転劇か。だとしても、エース11号が流心の背中をグイグイ押したことは間違いないだろう。

 3着条件のトーナメントでもっとも重要な3着争いも大接戦。6コースから江戸川鉄兵が抜け出したが、稲田浩二がしぶとく追いすがって一時は逆転。
「鉄兵、崖っぷちなのか!?」
 と思った2周2マーク、渾身の鋭角差しで稲田を切り裂いた。ぱっと見、届かない感じだったが、地元エースの意地が舳先に乗り移った。そんな鬼気迫る再逆転の差しハンドルだった。
★生き残り=山下流心・上野真之介・石渡鉄兵

【6R】坪井モード、突入!

 強風×安定板でもっとも難しいのはイン選手のスタートか。前半から足色が厳しそうだった①中島秀治がコンマ28のドカ遅れ。コンマ14まで踏み込んだ2コース坪井康晴が、イン逃げのように1マークを先取りして早々にイチ抜け決定。
 そのナチュラルまくりに連動した③黒柳浩孝~④平尾崇典も危なげなくセミファイナルZONEを守りきった。見た目にはインコースから順番に行った行った行ったの①-②-③決着。開会式で謎の「ぴょー-ん」×3の奇襲を繰り出した中島は、水面では3艇にぴょんぴょんぴょんと跳ねられて引き波に沈んだ。

 このレースで特筆すべきは坪井のストレート足。スタート一本のまくり勝ちのようで、スリットから出て行く迫力は半端なかった。展示タイムも破格の6.50を叩き出し、完全に坪井モード=行き足~伸びに活を入れてスリット主導権、に突入したとみていいだろう。かつての差し一辺倒から隙あらば自力まくりの肉食系に変貌した男だけに、明日からの猛攻が楽しみでならない。
★生き残り=坪井康晴・黒柳浩孝・平尾崇典

【7R】江戸川、恐るべし!

 出たー--、これが江戸川名物『6コース瞬間移動まくり』ダァー-!! 主役は3Rでも1着に突き抜けた島村隆幸。勢いそのまま、本番トーナメントでも最アウトから突出。伸びなり内隣の森悠稀を飛び越えた。
 そう、ここで江戸川水面ならではの特性が露出する。スロー3艇が荒れ水面に揉まれつつマイシロをとるため外へ外へ寄り(ターンマークもかなり振っている)、6艇がギュッと詰まった瞬間に島村が瞬殺のもぐら叩きよろしく3秒ほどでそのすべてを引き波にハメ込んだ。他場でいうなら4カドまくりくらいの見え方で6コースまくりが決まってしまうのだな。まくり水面・江戸川、6コース天国・江戸川の真骨頂。
 展開のみならず、前半3Rから島村21号機の実戦足はなかなかに迫力があり、明日以降も一撃決着を警戒すべきだろう。2・3着は一気にまくられつつ、実力者の赤坂俊輔~中澤和志がしっかり捌いてセミファイナルの切符を入手した。
★生き残り=島村隆幸・赤坂俊輔・中澤和志

【8R】最強のイン逃げ

 私は②桑原将光の地の利に期待したが、イン浜田亜理沙がしっかりスリットを制圧。コンマ08のトップスタートから危なげなく押しきった。今日のインコースでもっとも力強い踏み込み~イン逃走劇だったか。
 2着争いは3コースから握った三浦永理が抜け出して女子ワンツー決着かとみていたが、どうにも三浦のレース足が頼りない。あれよあれよと岩瀬裕亮~桑原に捕まり、セミファイナルの圏外に消え去った。裏を返せば、三島敬一郎十傑の岩瀬51号&桑原64号のパワー勝ちと見ていいだろう。特に岩瀬のストレート足がキラリ輝く道中だった。
★生き残り=浜田亜理沙・岩瀬裕亮・桑原将光

9R】頼りない10号機

 ここも三島十傑の第八席・大峯豊36号機が2コースからズッボリ差し抜け、非凡なパワーを見せつけた。勝因のひとつには「イン中村かなえが1マークの手前でハンドルを切り直す」という致命的なミスもあったのだが、ターン出口からの大峯の押し足は迫力満点だった。

 1マークで小原聡将が他艇と接触もないのに振り込み転覆。もう、レースとしては書くべきことはない。機力面でひとつだけ。前検のスリット足が強力に見えた酒見峻介10号機は、今日の3Rも含めて借りてきた猫のようにおとなしかった。枠番が内寄りだったため手前に寄せておかしくなったか。現時点で理由は不明だが、とにかく今日のスリット足には見るべきものが何もなかった。不幸中の幸い?は、1周2マークでギリギリ3着に粘りきったことで、明日のセミファイナルまでにしっかり10号機の持ち味を引き出してもらいたい。
★生き残り=大峯豊・中村かなえ・酒見峻介

【10R】52号機の新境地

 うー--ん、これはヤバかった。清埜翔子52号機の行き足だ。2号艇の今日は手前に寄せた(前節Vに近い調整)とのことだが、ほぼ同体のスリットから出て行く出て行く! イン長嶋万記をグイグイ出し抜き、1マーク手前で3/2艇身ほど突出。そのまま力任せにまくりきってしまった。
 伸びフェチの私が理想とする52号機とはやや毛色の違うパワーだが、スリットからこれだけ出てくれれば十分に及第点。清埜本人は「乗りづらさがあって重いので、そのあたりを改善したい」と慎重なコメントだったが、明日も引き当てた枠番に応じて手前なり伸びなり、勝つべき道を模索するだろう。そして、その軌道修正にしっかり応えられる52号機、とも確信している。

 2着争いで惜しかったのは4カドの上村純一。ジカまくりの混戦を横目にシャープな最内差しを目指したが、ほんの一瞬だけハンドルが早くターンマークに激突。あれがなければバック突き抜けて不思議のない勢いだった。9R中村の切り直しともども、これもまた江戸川の魔性と言えるだろう。実戦では上村に代わって人気薄の三島誠司~土性雅也が2・3着に飛び込み、3連単は600倍を超える大穴となった。
★生き残り=清埜翔子・三嶌誠司・土性雅也

【11R】うっちゃり大佑

 スリット隊形ではイン橋本久和がわずかに立ち遅れ。5コースから地元の佐藤大佑がグイッと出て行く見え方だったが、内の山本景士郎にブロックされて強攻ならず。その間に橋本がしっかり伸び返してイチ抜けを決めた。
 2着は大佑の攻めに乗じ、アウトから最内を差し抜けた田村。今日の田村20号機は前半2Rでも鋭い差し回りから着を上げており、彼の実力も踏まえて軽視できない人機とお伝えしておきたい。

 ある意味、幸運だったのは大佑か。まくりを弾かれてバックは4、5番手に甘んじたが、2周2マークで3番手・木田峰由季が他艇と接触~転覆している間に最低ノルマの3着を取りきった。機歴のない19号機ながら、このレースのスリット足はなかなかに強力。明日も行き足~伸びに活を入れる大佑スタイルで、さらなる底上げに期待したい。
★生き残り=橋本久和・田村隆信・佐藤大佑

【12R】最後はまったり

 ここまで6コースまくりあり、不慮の転覆やミスターンあり、江戸川らしい波乱万丈の1日だったが、最後の最後は本命党にとっての大団円。コースも実績も圧倒的に優勢な①湯川浩司~②森高一真~③羽野直也のSGトリオが行った行った行ったで「①②③ダァーー猪木決着」を決め込んだ。
 で、5Rからの全8レースを振り返ってみれば、10人のSG覇者のうち8人が生き残り。太田和美と赤岩善生が展開なく圏外に敗れたが、総じてみればやはり格の差が大きくモノを言う1日でもあった。
 さら視点を変えると、三島敬一郎十傑でセミファイナルに駒を進めた人機も8組! 太田27号機と栗原直也25号機はともに外枠を克服できなかったが、「三島十傑のパワーはSGウイナー級」と見ることもできるだろう。
★生き残り=湯川浩司・森高一真・羽野直也
(photos/チャーリー池上、text/畠山)