度胸と死闘
9R 並び順
①金子龍介(兵庫)01
②前本泰和(広島)11
⑤深川真二(佐賀)12
⑥守田俊介(滋賀)12
③桐生順平(埼玉)11
④佐藤 翼(埼玉)11
腹を括ったイン金龍の度胸とやや変則のスリット隊形が、1マークの展開を形成した。その金子のスタートは唯我独尊のコンマ01!! この大きなチャンスを逃したくない、伸びる翼にまくられたくない。そんなアツい思いがてんこ盛りになったタッチスタート。
一方、誰もが注目したであろう佐藤翼27号機は、6コースの同体からほとんどまったく伸びなかった。おそらく125・6/34という進入隊形で、自慢のパンチ力が半減したのだ(スタート展示と全体の見え方が違ってアジャストした可能性も)。私の勝手な見解を言えば、埼玉コンビがタッグを組んで優出を狙うなら、たとえ邪道と呼ばれても両者のコースが入れ替わるべきだった。
内に戻ろう。今日の前本27号機の足は、前検・初日とほぼ同じくらいに戻っていたと思う。2コース差しはかなりの切れ味で、突き刺さっても不思議じゃないほど鋭かった。その舳先を封じたのは、やはり金龍の度胸が生み出した1艇身近いアドバンテージ。元より上位パワー23号機のレース足も加味して、前本の追撃をバック出口で突き放した。
その後は2番手を取りきった前本と、アウトから捌いて先団に取りついた翼の息詰まるデッドヒート。どっちもトップ級のパワーだから、その攻防の迫力は半端ない。2周ホーム、3周ホームとわずかな先行の利がある前本がその僅差を生かして優位を保ち続けたが、3周1マークで若い翼がベテラン勢も真っ青の渋い切り返しで逆転。常に外・外を警戒したであろう前本は、やや甘くなった内フトコロを突かれる形となった。それでも最終ターンマークは1マーク同様の切れ味鋭い差しハンドルで肉薄したが、ゴールラインではわずかにハナ差だけ及ばなかった。準優というレースの性質も込み込みで、ふたりの2着争いは名勝負のひとつに数えていいだろう。
金龍23号、カッチョ良かった。前本27号、惜しかった。そして翼12号、よくぞ生き残った! 今日はその自慢のパワーが不発のスリット隊形になってしまったが、明日は明日の風が吹く。たとえ6号艇でも、アタマで突き抜けるようなパワーを継続してもらいたい。
勝負師の誤算
10R
①毒島 誠(群馬)11
②上平真二(広島)15
③新田雄史(三重)21
④市橋卓士(徳島)17
⑤峰 竜太(佐賀)12
⑥磯部 誠(愛知)15
このレースのちょっとしたサプライズは、新田の3カドアタックだ。7R後のスタート特訓の一本目でも新田は3カドに引いたから(ニ本目はスロー)、「あるかも」とは思っていた。大一番でのこうした渾身の勝負手は私の大好物だし、最近の新田が勝負師として成長している姿にも目を細めている。だからして、勝負師が腹を括った3カド攻撃にはなんら不満な点はない。
ただ、素朴な疑問として「3カドを視野に入れるにあたって、どんな調整を目指したか」は気になるところ。今節の新田11号機への私の見立ては、「出足特化型」という点で一貫している。スロー起こしからスリット付近までスムースかつスピーディに加速していく手前の足に惚れ込んでいた。今日の昼特訓(2本とも3コーススロー)でも、内の2艇を半分ほど突き放す力感があった。スローだからこその力感。
「だいじょぶか? 逆効果じゃないんか??」
12秒針が回る瞬間、1-3しか買っていない私は記者席でこんな叫び声を挙げてしまったのだが、結果論として言うならこの不安は的中してしまった。スタートでやや後手を踏み、その後もさほど伸びず、不利な態勢からの握りマイは上平に弾かれる形で優出圏外へと流れ去った。うむ、勝負のアヤだから仕方のない敗戦と思いつつ、素朴な疑問が心の中で宿題のように残った次第だ。
さて、レース自体は毒島がガッチリ逃げて、上平がしっかり差しての大村準優らしい1-2態勢でもはや紛れはなかった。シリーズ前半は「ペラが開いて別物になってしまう」などで6着など暗雲が漂う毒島だったが、それらの課題を克服したらば堂々の準優1着。三島敬一郎イチ押しの75号機にはもはや微塵の陰りもなく、次のレースで深谷が負けてファイナル1号艇、なんてことになったらダービー連覇の確率は90%にも及んだことだろう。最後の準優へ進もう。
※などと書いたところで、ある記者さんから「新田が『あんなこと(3カド)しなきゃ良かった』って悔やんでた」との情報が……嗚呼!!
冷静なパワー駆け
11R
①深谷知博(静岡)11
②吉川元浩(兵庫)16
③枝尾 賢(福岡)11
④池田浩二(愛知)10
⑤篠崎仁志(福岡)16
⑥井口佳典(三重)13
ここ一番の2コースでは時にジカまくりを繰り出す吉川(平和島クラシックの準優ではものの見事に成功)が、今日もイン深谷の上を叩きに行った。体形的には深谷が半分ほど先行していたので、逆に死角からいきなり飛び出す奇襲戦法ではある。
だがしかし、おそらく吉川の過去を研究していたであろう深谷(菊地か徳増からのアドバイスがあったかも?)は、それを見越したように張り気味の握りマイで応戦。ターンマークをやや外しながらも、吉川の怖い怖い攻撃を完璧にシャットアウトして出口から突き抜けて行った。なんと冷静な!
3コースの枝尾もまた冷静だった。吉川のジカまくりを「やっぱりね」という感じで横目で確認し(瓜生からのアドバイスがあったかもw)、迷いのない差しハンドルで引き波を突破。逃げる深谷には届かなかったものの、自慢の回り足で後続をすいすいグングンと突き放して鳴門オーシャンカップに続く2度目のファイナルチケットを入手した。そのときも書いたが、去年のGPシリーズで初めてSGに参戦するや、1年もたたない間に2度もファイナルに進出したのは天晴れの一語。38歳にして急成長を遂げている枝尾は、その強力な回り足も含めて明日も侮れない存在と言えるだろう。
それぞれ勝負師の気合と戦術が散りばめられた準優は、終わってみれば1-4、1-2、1-3という大村らしい本命決着で幕を閉じた。明日のファイナル6PITを記しておこう。
12R優勝戦
①深谷知博(静岡)
②毒島 誠(群馬)
③金子龍介(兵庫)
④上平真二(広島)
⑤枝尾 賢(福岡)
⑥佐藤 翼(埼玉)
ダービー連覇の懸かる毒島以外が勝てば、誰であってもSG初制覇。のみならず、深谷、金子、上平、佐藤の4人がSG初優出というフレッシュな面々となった。当ブログで書いてきた「下克上の戦国ダービー」という流れが、最終日最終レースまで継続されたわけだ。最後は圧倒的V候補のひとりだった毒島が、そんな戦乱の世を何事もなかったかのように統治するのか。はたまた群雄割拠の中から新たな国盗り物語の主人公が生まれるのか。もちろん、最終的なパワー診断とレース予想は明日に譲るとして、それぞれの選手の勝ちたいという思い、そして個性的なパワーが大村水面に余すところなく反映される最終決戦になることを祈りたい。(photos/チャーリー池上、text/畠山)