BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――ギリギリ

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 10R発売中に、塩崎桐加がギアケースを手に整備室を出てきた。検査員さんとともにボートに向かい、ギアケースを装着して検査を受ける。ふとボートに目をやると、カウルには「試」のプレート……って、これから水面に出るの!? もはや終盤の時間帯で、普通であればとっくに仕事を終えていてもおかしくない。事実、10R発売中に試運転を切り上げた選手もいるのである。ところが塩崎はここから試運転を始める!(あるいは再開する!)このタイミングで着水する選手はそうそう見かけないだけに、少々驚いたのであった。

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 11R発売中も走った塩崎。足合わせのパートナーは樋口由加里だった。ふたりで水面を2周ほどして、いったん係留所へ。しばらくエンジン音が聞こえなくなって、そのころふたりはペラ調整室でペラを叩いた。数分を経て、ふたたびふたりで水面へGO! 時間ギリギリまで足合わせをして、ようやく陸にあがってきたのであった。お疲れ様!

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 塩崎と樋口が試運転を切り上げようという頃……おおよそ11R締切10分前くらいだ。展示用ピットにはまだ2艇の空きがあった。ギリギリまでペラを叩いたドリーム組がいるということだ。まず空きを埋めたのは川野芽唯。前半6着大敗で、なんとしてもドリームで巻き返したかった。その前には険しい表情でピットを往来する姿があって、切羽詰まった感を醸し出していた。ドリーム戦で結果を出せなかったから、明日も朝から懸命に動きまくる姿があるかも。

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 最後のひとつの空きを埋めたのは長嶋万記だ。ドリーム1号艇。ここが最後まで空いていたということだ。ピットでの雰囲気はわりと軽やかであったように見えたが、しかし地元ドリームの1号艇、とことん納得がいくまで調整を行なったということだろう。その甲斐あってか、見事逃げ切り。面目を保ってみせた。それでも今日の前半は5着で、そのひとまずの巻き返しに成功したというところ。まだまだ底上げをはかりたい。

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 パワーアップをはかろうという選手はもちろん遅くまで作業に励む。ペラ室からも金属音が途絶えることはほぼなかった。整備室では、岸恵子が本体整備。前半にボートごと整備室に持ち込む姿があったが、ボートはさすがに搬出されており、岸はひたすらモーターと向き合っているのだった。確認できていないが、推測するに、前半で整備して試運転に出て、その後にエンジンは外して、さらに整備に取り掛かったものと思われる。初日から執念を見せているのだ。

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 今井美亜が整備伝票を提出する窓口で話し込んでいる姿があり、ひょっとすると本体整備を施した可能性が。初戦2着発進とまずまずだったが、機力的には不安が大きいか。その後はリードバルブを熱心に調整しており、今日のレース後はペラよりもモーターに喝を入れていたようである。

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 それにしても初日から事故が起こってしまって、4Rでは櫻本あゆみが落水し、落合直子が転覆。落合は櫻本に巻き込まれた格好だったので、櫻本は妨害失格とジャッジされている。そして残念ながら二人とも後半レースを欠場。無念の途中帰郷となっている。早く傷を癒して、新たな気分で新年を迎えてほしい。

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 10Rでは土屋千明が転覆してしまった。ピットには「担架用意」というアナウンスが流れて緊張が走ったが、土屋は着替えて転覆整備に向かっており、明日の出走表にも名前が載った。まずは一安心といったところだ。

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 シリーズ戦出場の群馬支部は土屋ただ一人ということで、転覆艇の引き上げにはさまざまな選手が駆け付けている。同じ関東地区の東京支部は当然として、岡山支部の金田幸子や樋口由加里、愛知支部の水野望美などなど、実にバラエティに富んだ支部、地区が結集している。陣容が手薄と見れば、手が空いているのなら進んでヘルプする。それがボートレーサーの習性と言える。水の上でバチバチに戦う分、陸の上では互いを思いやるのである。(黒須田)