BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――今日も安定板

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 2Rが終わって、しばらく経った頃のこと。係留所から松井繁が急いで駆け上がってきて、整備室へと駆けこんだ。これに岡崎恭裕が続く。なにか異常事態!? 松井も岡崎も、特に何事もなく整備室から出てきたのだが、その直後にアナウンスが流れた。「4Rから安定板装着」。今日も早くから向かい風が吹いていたが、だんだんと風速が強くなってきており、水面も荒れ始めていたのだ。

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 2R発売中のことだ。係留所に多くの職員さんが駆け付けて、水面のほうをみなで見つめていた。選手も何人かが同じように水面を見ている。何か起きたのだろうかと訝しく見ていたら、やがてレスキューがボートリフトに近づいてきて、「竹井」のプレートが着いているボートを曳航してきたのだった。どうやら、竹井奈美が落水した模様。竹井自身は、10分後くらいには走って装着場に戻ってきて、西山貴浩の「竹井ちゃん、キミは大丈夫かね?」の問いかけ(コントに出てくる課長ふう)に快活に応えている。身体等、問題なさそうだ。ただ、試運転での落水とは、やはり水面がただごとではなかったのだろう。これも判断の材料になったか。

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 松井と岡崎が慌てていたのは、3R発売中のスタート練習も安定板を着けて行なわれるから。未装着のままならすでに練習が始まっている頃に装着がアナウンスされたから、5R組は急かされるようなかたちとなっていたわけだ。守田俊介、深川真二……と次々に安定板を手に係留所へと駆けていく。もっともドタバタと装着しなければならなかったのは5R組というわけである。

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 他の面々は、三々五々、整備室を訪れて、ゆっくりと装着を始めていた。いや、まったく動きがなかったのは、濱野谷憲吾、瓜生正義、山崎智也。2R1回乗りの面々だ。そうです、もう安定板を着ける必要がないのは当然ですね。2Rまくり快勝の濱野谷は今日は試運転も行なわないようで、ボートは裸のまま装着場に置かれていた。

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 1R1回乗りの今垣光太郎と田村隆信だが、今垣は試運転に向かい、田村はキャリアボディー交換を行なっている。田村のボートにも「試」のプレートがついていたから、試運転をして明日は交換のままいくのか、もとに戻すのかを判断することになるだろう。

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 安定板がどんなものかあまりご存じではない方のために、この写真を。フォーク状の板、なのですね。これをどこに着けるかというと……

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 こんな感じでございます(下の写真は装着されていない状態)。ちょうど水面と接する部分ですね。節水面積を増やして、ボート全体を安定させる、ということでしょう。で、安定板を着けると回転が上がらなくなる傾向にあるとか。それを調整するためにチルトを上げる選手が多く、丸一日安定板装着でレースが行なわれた昨日、チルト0度とか0・5度の選手が多かったのはそういうことです。チルトを跳ねると伸び型に、というセオリーがよく言われていますが、そうではなくて回転を上げるために跳ねるパターンがあるわけですね。

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 さてさて、2R平高奈菜が5着。絶対に落とせなかった1号艇で大敗を喫し、準優進出はほとんど絶望的になってしまった。誰もが注目していた15号機を引き当て、ボートの歴史を作るかも!?とまで期待された平高だったが、仕上げ切れずに大きな着を重ねてしまっている。男子と女子では同じモーターでも出方が違うと言われるが(おもな理由は体重差)、前々節で渡邉優美が優出しており、平高も問題なく活躍してくれると思ったのだが……。1号艇を落としたこともあり、渋い表情で戻ってきた平高。さまざまな思いが胸中で渦巻いていることだろう。もちろん何があるかわからないのがボートレースだし、予選をクリアできなかったとしても戦いはまだまだ続く。平高らしい鋭いレースで盛り上げてほしいぞ!(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)