最強バッテリー
決勝戦・第12R
①毒島 誠(群馬) 07
②峰 竜太(佐賀) 11
③太田和美(奈良) 07
④平高奈菜(愛媛) 09
⑤馬場貴也(和歌山)17
⑥桐生順平(福島) 13
前検からはじまった『ブス64狂騒曲』は、ほとんどひとつの変調も生まないままフィナーレまで鳴り響いた。最強バッテリーの完封シャットアウト勝利。
スリット隊形はやや凹凸があったものの、主役が凸だからして波乱材料は皆無。インからグングン自慢の行き足を伸ばし、1マークの手前では怖いガバイ峰にぴったり1艇身差のアドバンテージ。そこからやや強めに握って旋回したらば、峰の異次元ターン差しを一気に3艇身ほどもぶっ千切っていた。
レースに関しては、これ以上書くべき言葉が見当たらない。私も含めてマスコミは連日この主役コンビの桁違いの強さを報じ、その表現を等身大の強さで証明して見せたのだから。補足するなら、毒島誠という超一流選手が64号機というスーパーエースと出逢って、またひとつ大きな経験値を得た、ということか。
毒島はビッグレースでいささか抽選運が悪いというか、エース級のモーターを引くことは極めて稀だった。逆に中堅下位、あるいはワースト級のモーターを拾ってしまい、そんな劣等生とさまざまな対話をしたり、時には活を入れたり、励ましたりしながら準優、優勝戦に駒を進めるというパターンが圧倒的に多い(あくまで私の勝手な推測ですが)。
そんな地道にして辛抱強いルーティンワークが、毒島を屈指の整備巧者に育てたと思ってもいるのだが、今節はまったくの逆パターン。三島敬一郎が「全国24場でいちばん噴いている」と断言する64号機だからして、「育てる」という領域のパートナーではない。節間、毒島は何度かこの相棒に対して首を傾げるようなコメントを吐露したのは、おそらく今までに経験したことのない重圧を感じたためだろう。
昨日も書いたが、準決勝の直後に「節イチです」と言いきったとき、毒島はこの特別な相棒と完全に打ち解けた、と私は感じた。周辺の狂騒曲が雑音となり、64号機とのスキンシップだけを信頼するに至った、と。それは、ひとつの重要な経験値を得たことに他ならない。
スタートが早く、ターンが速く、整備が達者で、ナイターが無類に強い毒島が、最強レベルと謳われる(騒がれる)モーターと対話する術を学び、最善の結果を残した。さながら石野貴之のように。このスキルはたとえば上位レベルのモーターだけを奪い合うグランプリで、いつか必ず役立つときが来る。このレベルの選手には「たかがGⅡ」レベルの大会かも知れないが、ボートレーサー毒島誠にとって非常に有意義な7日間だった気がしてならない。うん、あえて野球にこじつけるなら、「160キロ超のストレート、打者がのけぞる高速スライダー、バットに掠らせもしないスプリットを持つ大谷翔平が、変幻自在のナックルカーブもマスターした」という感じだろうか(笑)。
(photos/チャーリー池上、text/畠山)