BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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とこなめバトルトーナメントTOPICS 初日

 ファン感謝の強い思いが選手たちを不可思議ワールドへと導いたのか。2022年のバトルトーナメント初日は、配当的にもレース的にも波乱が相次いだ。良しも悪しくも“主役”となった選手たちを紹介しよう。

★酒見峻介(1R5着・7R出遅れ欠場)

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 酒見本人としては、踏んだり蹴ったりの1日。だがしかし、今日の48選手の中で、もっとも全国のファンに名前を売った男ではなかろうか。まず、オープニング1Rで5コースから怒涛の絞めまくり。チルトを跳ねて、ダッシュから遮二無二まくるのが酒見スタイルだ。この猛攻は4コース岡崎恭裕の徹底ブロックを浴びて未遂に終わったが、代わって超人気薄の⑥村上功祐が台頭。酒見のマーク差しで先頭まで突き抜け、3連単は800倍を超える大穴となった。もちろん、アウトから勝ちきった村上が文句なしの殊勲賞だが、大波乱を演出した酒見(5着大敗)も全国の穴党ファンの心を鷲掴みにしたことだろう。「今節、チルトを跳ねてまくる男は、菅章哉だけではない」と。

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 そしてそして、いざ本番のトーナメント7Rは、悲惨な大波乱の“主役”になってしまった。1号艇の絶好枠を得た酒見は、ここもチルト1度に跳ねて臨戦。そう、たとえイン戦でもチルトを跳ねるのが、これまた酒見スタイルなのだ。まさに不思議流。このレースもごく普通にピットから飛び出したが、どうしたことか、2号艇の原田幸哉がいきなり激しく絞めつける危険な待機行動に!

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 幸哉としては「チルトを跳ねてるんだから、インにこだわる必要はないだろ、酒見君」という思いがあったかも知れない。ボディアタックとも呼ぶべき絞めこみを喰らった酒見は、そのまま吹き飛ばされつつターンマークに追突。その衝撃でエンジンが完全に停止してしまった。オレンジブイを回ってからの大競り事故はよくあるが、そのはるか手前での玉突き衝突は超レアケース。結局、エンジン再始動がままならなかった酒見は「責任外の出遅れ欠場」、幸哉は仕切り直しの実戦で2着ながら「悪質な待機行動違反」とみなされて即日帰郷となった。

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 酒見にとっては、まさに踏んだり蹴ったりの1日。ただ、「いつでもどこでもインでもアウトでも、隙あらばチルトを跳ねて自力で勝負」という超ユニークな酒見スタイルは、2度の大波乱とともにファンの脳裏に刻まれたことだろう。超個性的かつ超攻撃的な不思議流レーサー、酒見峻介。穴党にとって、覚えておいて損のない名前だとお伝えしておく。あ、穴党の皆さんはとっくにマークしてますかね♪

★菅 章哉(6R5着)

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 朝の選手紹介で「イン逃げばっかり見飽きてると思いませんか? まくりで盛り上げたい」とぶち上げた『鳴門の渦潮超獣』菅章哉。6Rは3号艇ながらチルト3度に跳ね上げ、「6コースからでもまくる!」という有言実行の姿勢を見せた。

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 さて、スタート展示も124/563と唯我独尊の6コースだったが、いざ本番は⑤盛本真輔と⑥北野輝季が菅のマークに回って124/③56という超スリリングな最終隊形に! ③=⑤-全というオール万舟券を買っていた私は、脳汁垂れ流しで4カドの菅だけを凝視した(笑)。ソコソコしっかりスタートを踏み込んだ菅が、スリットから伸びる。内3艇はほぼ横並びで、菅が絞めきれば③=⑤が濃厚な展開だ。

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 もはや私の脳汁はとこなめ水面に飛び散るほど噴射したが、菅と私の野望を打ち砕いたのが地元の難敵・赤岩善生だ。激辛のスタートで菅にぴったり艇をこすり付け、絞めまくりのコースを遮断。そのまま攻める隙を1ミリも与えず、菅をセミファイナルの圏外へと連れ去ってしまった。菅自身「記念ではアウト攻撃がなかなか通用しない」と漏らしていたが、1Rの酒見vs岡崎ともども、まさにSG常連の網に引っ掛かったと言うしかない。

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 今日の5着で敗者復活の道も険しくなったが、今節の菅の最大目的は「全国のファンの前で徹底的にまくり戦法を貫く」だと思っている。今日の悔しい思いも信念へと昇華して、明日はもっと獰猛な渦潮超獣に進化している、と信じたい。

★宇野弥生(4R3着・8R1着)

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 スローガンの「私らしく」、スタート勝負で大穴をぶち開けた。4Rのオール女子戦は3着に敗れたが、本番のトーナメント8Rは4カドのスリットで突出。実際にはコンマ17でさほど早いタイミングではなかったが、他艇がコンマ21~33の中での17は、弥生らしい踏み込みだ。

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 そのまま内艇をいたぶるように絞めこみつつ、最後は鋭角なまくり差しでバック突き抜けた。2着に超人気薄の⑥松尾充を引き連れて、3連単は泣く子も黙る584倍!

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「(かつての地元・愛知支部の看板レーサー)幸哉さんが帰ってしまったので、幸哉さんの分まで頑張ります」
 勝利者インタビューで力強く語った弥生。地元ファンへの感謝の思いは、もちろん明日以降の「私らしさ」=スタート勝負にも大きな影響を与えることだろう。

★西橋奈未(4R2着・9R2着)

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 昨日の前検タイムでちょこっとだけ疑心暗鬼になったが、今日のふたつの実戦を観て確信した。節イチ候補の筆頭パワーだ。全部の足が上位~抜群レベルで、もっとも目を惹いたのは出足でも伸びでもない、そのど真ん中の行き足。三島敬一郎の8号機評価「行き足、中間速系」にも合致し、この部分の足は節イチ!と断定していいだろう。

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 今日の場合、ダッシュ起こしからスリット手前で加速感がMAXに達し、そのままの勢いでスリットを通過して行く。後半9Rは5コースから上体を起こしてアジャストしたが、それでもグイグイ出て行く力強さがあった。

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 さらには何本もの引き波を通過しつつ、狭い間隙を突き抜けた出足系統のレース足も文句なし。行き足の次に来る伸び足に関しても、今日の仕上がりは5本指に入るほど軽快に見えた。もちろん軽量の女子力も加味してのパワーではあるが、明日からの2日間、私は「奈未8号機が節イチ!」と勝手に信じて舟券戦略に臨むつもりだ。(photos/チャーリー池上、text/畠山)