じわりじわり、ピットの空気に馴染みつつある畠山です。とは言え、ひとりでぽつねんは心細いので、“大ベテラン”のチャーリー池上先生をぴったりジカ付けマーク。
「なんか、初めてのおつかいみたいっすね」
「金魚の糞って感じ」
「カルガモの赤ちゃんみたいにくっ付かないでくださいよ」
嫌味な言葉を頂戴しつつ、それでもぴよぴよくっ付いていると、ついに本格的なピットリポートらしき“事件”に遭遇した。前原大道が、やおらゲージを削りはじめたのだ。
「おや? 一走もしない段階でゲージを削るって、なかなかなレアケースじゃないですかね」
池上先生の言葉に、キラリ目を輝かせる私。
「ってことは、もはや大道51号機は完成の域に達してる、ってことですかね!」
池上先生はコクリ頷き「その可能性はあると思います」と含みのあるコメントを残した。そうこうしていると、お姉さんの前原哉がつつつと弟に近づき、なにやら二言三言ささやいて離れていく。会話の内容はまるで分らんかったが、「あら、もう削ってるん?」というノリではあった。
「ってことは、7R1号艇の大道君は、もはや盤石のイン戦ってことですかね!!??」
私が気色ばって言うと、池上先生はフッと淋しげな笑みを浮かべた。
「いえ、その可能性があるというだけで、ゲージに関しては決めつけは危険なんです。僕も(舟券で)なんど痛い目に遭ったことか……」
「なるほど」
ピット取材2日目にして、小さなブラックホールのような深みを感じた朝10時であった。まあ、それはそれとして、7R1号艇の大道51号機がどんな挙動を見せてくれのか、大いに楽しみではあるな。
などと思っていたら、池上先生がまた新たなニュースソースを発見だ。
「おっと、ドリーム1号艇の節子さんが、1Rの前から水面に降りましたよ。これって、なかなかレアケースじゃないですかね」
Oh、それならレース班を担当してきた私にも、手に取るように分かる事例だわさ。ドリーム1回走の選手が早朝から試運転するのは、かなりのレアケース。現時点で何らかの不安(またはパワー的に確かめたい部分)があるからこその“早仕掛け”であり、当然ながら盤石の状態ではないという見方ができる。
何周かの試運転を終えてピットに帰還した田口は、それなりに険しい表情でボートを定位置へと戻した。7Rの1号艇に続いて、12Rの1号艇。今日の後半は自称・穴党の私にしては珍しく、1号艇の気配・動向に注目することになりそうだ。ざっと見た感じでは【7R①大道は盤石⇔12R①田口はやや危険?】と判断したのだが、はたしてどうだろう。
そうこうしているうちに1Rのスタート展示がはじまり、5号艇の吉川貴仁が枠なり5コースからにゅっと飛び出していくのが見えた。この大会に4節参戦して【4優出2V】と水を得た魚のように活躍する『ミスター紅白戦』の登場。レディースvsルーキーズのガチンコバトルが幕を開けた。(photos/チャーリー池上、text/畠山)