BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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前半ピット/初めてのイン

 第1Rから、ガチンコの勝負駆けレースがはじまった。道中の凄まじい追い上げで、大逆転の1着をもぎ取ったのは溝口海義也だ。この10点増しで6・00……10Rで連勝しても6・67までで、残念ながら準優想定ボーダーには届かない。
 昨日、溝口クンと話をしたときに「残り2走をピンピン連勝ならきっと大丈夫」などと口走った私は、お詫びも込めて溝口クンの元に近づいた。

――ごめんね、ピンピンでも他力、結果待ちって感じみたいっす。
溝口「あ、そうみたいですねぇ。でもチャンスはありますかね」
――1Rの逆転勝ちで望みはあるはず。足はどうでした?
溝口「はい、伸びは良くなってるんですよ。ただ、ターンで競ったときにちょっと弱めでした。正直、このままだと後半の3号艇は2着が精一杯っていう足です」
――でも10Rの2号艇はジカまくりがある選手(吉川貴仁)だから、展開的にチャンスはあるかも。引き波を超える足が欲しいところですよね。
溝口「そこの部分なんですよねぇ。手前に寄せようとすると、あからさまに伸びが落ちる感じだし……だから、できれば3コースから自力で握って攻めきりたいんですよ。でも、同体からそこまで突出して伸びるほどでもないし……とにかく、少しでもチャンスがあるんで、最後まで諦めずに1等を狙っていきます!」
 パワー的に悩み多き勝負駆けのラストバトルだが、10Rは自力または他力で勝ちきるチャンスがある3号艇だと信じたい。

 続く2Rは、レース前から大注目の選手が存在した。レーサー人生で、初のイン戦に臨むであろう清水愛海(127期)!! 養成所チャンプ決定戦ではインコースからコンマ09で逃げ圧勝している愛海ちゃんだが、厳しいプロの世界でのインコースはどうか。
 いざ実戦。1マークから緒先輩にまくられ差され、それでも鋭い全速ターンの連続で2着に残した、というあたりはレース班に任せるとして、ピットに出張っていた私は帰還した22歳の表情に視線をロックオンした。
 おお、肩で息をしながらヘルメットを脱いだ素顔の、何と初々しいことっ!! レース直後に頬が紅潮しているのは当たり前なのだが、初インコースという先入観も込み込みで、未知の世界に足を踏み込んだアリスのような好奇心に満ち溢れた表情に思えた。

 そんな不思議の国のインコースから帰った愛海に、同じくらい初々しい表情で駆け寄ったのは1期先輩の野田彩加! 先輩ながら、まだ1度も1~3コースに進入していない野田は、「どうだった、どうだった??」みたいな勢いで顔を寄せ、対して愛海が身振り手振りで何ごとかを伝え、そのツーショットが実になんともやっぱり初々しいのだった。
 勝負駆けに戻ろう。このレースで6コースから怒涛の最内差しでアタマまで突き抜けた⑥川野芽唯は、【2走14点】という険しい第一関門をまずは最高の形でクリアした。719倍という大穴配当とともに。これで後半7R3号艇は【4着で7・00】という現実味ありありの勝負駆けに持ち込んだわけだ。立ち話で、ほんの少しだけ話を聞かせてもらう。

――6コースから1着、凄かったですね。最内からあそこまで届いたってことは、かなーり良くなってるんじゃないっすか?
川野「ありがとうございます。いやぁ、でも、どうでしょう。バックで外の2艇が牽制し合ってくれたのがラッキーだったし、上り時計もそれほど速くないし、運が良かった1着っていう気がします」
――でも、この1着で7R3号艇がチャンスになりました。流れ的に行けそうじゃないっすか。
川野「はい、だといいですね、足的にも日に日に良くはなってるんですよ。33%という数字よりは良くなったはずなんですけど……」
――気合が入る一番になりますね。
川野 あ、いつも気合は入ってますよ~~、このレースだけ特別っていうわけじゃないですけど(笑)、もちろん頑張ります!
 ニヤリと不敵な笑顔を浮かべつつ、7Rに向けて新たな作業に向かった芽唯ちゃんでありました。(photos/チャーリー池上、text/畠山)