BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――回転が上がらない?

 試運転からあがってきた原田幸哉が、同期・瓜生正義の隣にボートを運んで、嘆き節。
「ぜーんぜん、回らんよぉ」
 回転がまったく上がっていない、ということだろう。今日は雨が降っていて(これを書いている時点ではあがってます)、ピットも気温こそ高くないがムシムシとする。湿度は90%を超えているのだから、回転が上がらなくて当然の気候ではある。

「回そうと叩いても、結局回らんかもね」
 瓜生が返す。多くの選手は同様の症状だろうから、なんとか回転を上げたいとペラを調整するのだろうが、この湿度ではそれでもどこまで回るのか、というあたりを経験でわかっているのだろう、このレベルの選手たちは。それでも原田は、足合わせをしたらしい平本真之からは「まあまあじゃないっすか!」と言われていた。足自体はそこそこ悪くないようではある。

 こういう状況だと、インはなかなか厳しいわけで、1Rではさっそく西山貴浩が苦杯を舐めている。回転うんぬんはともかく、1号艇で3着にも入れなかったことは痛恨に違いなく、西山は珍しくうなだれてピットに戻ってきている。特にわめくこともなく。着替えを終えたあとにすれ違うと、西山は恨めしそうな視線を送ってきた。西山がSGで好モーターを引いたという記憶はほとんどないわけで、またっすよ~という心の声が聞こえたような気がした。

 2Rでも磯部誠が大敗を喫している。これは、前本泰和の前付けに対してコースこだわらず、5カドに引いた2号艇の中島孝平にまくられたもので、ツキがなかった部分もある。自身はコンマ07のスタートを行っているのに、他のスロー勢がヘコんだスタートだったのだから、コンマ07で絞めてきた中島に対してなすすべないのは致し方なかった。ただ、それでも磯部の心中はやはり痛恨で、表情には痛々しさがうかがえた。

 一方、中島の攻めに乗ってまくり差して先頭に躍り出た前田将太は、やはりにこやか! SGでこんな表情の前田は久しぶりに見たような気がする。絵に描いたようなまくりマークのまくり差しは、まさに会心の一撃である。前田の表情が緩むのも当然というものだ。出迎えた同期の上野真之介も嬉しそうに笑っていた。

 この2R、昨日大整備をお伝えした前本泰和は、目撃した通りセット交換&クランクシャフト交換のほかに、電気一式とキャブレターも交換して登場している。交換が発表される8つの部品のうち6つを交換したわけだ(セット交換はピストンリング4本、ピストン2本、シリンダケースの交換)。それもかなわず4着に敗れた前本は、レース後ボートごと整備室に運び込んでいる。すでにキャリアボデーが置かれており、交換必至。それで8Rに登場したら通算7部品の交換となる。ちょっと待てよ。ギアケースはキャリアボデーに付いているわけだから、その交換もありうる? だとしたら発表8部品コンプリート! これはぜひとも直前情報をチェックしていただきたい。ギアケースを換えるかどうかはともかく、もはや49号機は別物のモーターですな。

 さて、皆さんは気づいただろうか。2Rの展示航走にちょっとした異変があったことを。展示を終えて6選手が戻ってきたとき、本番ピットを見下ろす場所に数人の選手が集まって、指をさして笑っている。輪の中心にいたのは菊地孝平で、「おかしいと思ったんだよなあ」と言って、他の選手がまたアハハと笑った。そう、菊地は展示を見て気づいていたらしいのだ。

 何があったかというと、4号艇の片岡雅裕が黒のカポックを着て展示に出ていたのである。勝負服は青だったから気づきにくかったが(あるいは別系統色の白や赤や黄色なら目立っただろうが)、たしかにリプレイを見ると違和感がある。というわけで、片岡は周回展示のみ再展示。大慌てで青のカポックに着替える片岡には、菊地から「落ち着いてー!」という声もかかっていた。ひとり再展示から戻ってきた片岡は、大苦笑い。だははー。そういえば、新幹線の乗り換えを間違えてあやうく前検遅参になりそうだったオーシャンカップで、片岡は優出している。何かやらかしたほうが好成績だったりして!? 2Rは6着だったが、モーターも悪くなさそうだし、ここからの巻き返しに期待しよう。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)