BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――鬱憤晴らせ

 水神祭での活躍が目立つ野中一平だが、もちろんやるべきことはきっちりとやっている。今朝も調整からの試運転に懸命だった姿を見ているし、仕事には手を抜いていない様子は随所に見かける。そんなときでも、すれ違いざまには丁寧に頭を下げてくる礼儀正しさもあり、実は真面目な面も大いに持っている男である。
 9Rは5号艇で2着。これでオール3連対をキープだ。オープニングセレモニーでは「水神祭だけでなく、水面でも目立ちたい」と決意を口にしているが、今のところ順調に水面でも存在感を放っている。というか、水神祭ではもう一人目立つ後輩が出てきて、なんだか押され気味の今節。先輩の面目を保つには、自分の水神祭をやればいいのだとハッパをかけたくなりますな。自分の水神祭とはもちろん最終日の夕方、である。

 その目立つ後輩こと中亮太も、懸命な戦いを見せている。7Rは1着もあるかという展開だったものが、2マークで上田龍星に弾かれ、そこからずるずると着を落として5着。何とも悔しい、GⅠの洗礼を浴びたかのような結果に終わってしまった。その後も、悔しさを叩きつけるかのように調整作業に懸命だった中。その合間に水神祭に出向いて行ってはっちゃけているわけである。この男も仕事には真面目に取り組んでいるわけだ。というわけで、この男にも自分の水神祭をいち早く果たしてもらいたい。自分のときはほんと、何が起こるんだろうと、楽しみにしているぞ。

 悔しいレースといえば、10Rの栗城匠はかなり苛立った結果だったのではないか。3番手を争うなか、1周2マークでは内からの突進に巻き込まれて着を落とし、2周2マークではひとつでも着を獲り返そうと全速で握りマイを放とうとして振り込み。転覆はすんでのところで避けられたが、失速してシンガリにまで下がってしまった。レース後の栗城は、彼らしく感情をあらわにしたわけではなかったものの、誰よりも先に控室へと戻ってしまった。その様子が憮然としたものに感じられたというわけである。その怒りのぶつけ先は明日のレースということになるだろう。この大敗がさらに栗城に火をつけるものになれば、と思う。

 対照的だったのは、10Rを勝った中村日向。先輩たちに出迎えられて、ニコニコと若々しい笑顔を見せていたのはまさに勝者らしかったが、さらに先輩たちと話し込んだりしていて、控室に戻るのはずいぶん後のほうになっていたのだ。そこに気分の良さがあらわれていたと見えたわけである。これでオール3連対キープとなっており、見透しも明るい。5000番台GⅠ優出一番乗りを果たした男が、さらに大仕事をやってもおかしくなくなってきたぞ。

 ところで、多摩川ピットのボートリフトは3艇分しかなく、レース後は1~3着が先に乗って陸に上がる(接触があって損傷があるかもしれない艇を先に乗せるなど例外はあり)。その間に4~6着は係留所で艇番などを外すなどの前作業を行ない、1~3着が上がったあとに陸に上げることになる。だからおおよそ、1~3着の選手が先に控室に戻ることになるのだが、9R3着の関浩哉はエンジン吊りが終わってもしばし装着場に残った。道中で接触があった木村仁紀を待ったのだ。接触は2周バックで、差した関が艇を寄せていった場面。まあ、よくある出来事で、関が悪いとはまったく思わないが、やはり後輩としては頭を下げておかねばならない場面でもあったのだろう。

 ところが、遅れて上がってきた木村は歩み寄ってくる関に対して、先に両手を合わせて頭を下げた。関は恐縮して駆け寄り、急いで頭を下げた次第だが、もちろんこれでノーサイド。というより、接触の瞬間、関の艇が浮いており、木村としてはやや絞めた結果、関に危ない目に合わせてしまった的な思いもあったのだろう。ボートレースにはこの手の接触は付き物。でも、レース後はお互い、しっかり礼を尽くすというわけである。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)