BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――気合の勝負駆け

 3日目連勝で得点率3位まで浮上した寺田祥。唯一の地元参戦として、ひとまず無事故完走というところまではもってきた格好だ。しかし寺田は、それではまったく満足しない。ここまで来たら目指すは予選トップ通過。5年前の徳山グラチャンではまさに予選をトップで終えながら準優で敗れて優勝戦1号艇を逃し、結果的に優勝を盟友・白井英治にさらわれている。その白井が不在の今回は、彼の分までという思いも含めて、あの日のリベンジを果たしたいところだろう。
 もっとも気力的にはまだ不安が残るのだろう、1R発売中に試運転からあがってくると、ボートごと整備室へと運び込んでいる。どうやらキャリアボデー交換のようで、これを終えるとすぐさま着水。感触を確かめた。

 2R発売中にふたたびボートをあげた寺田のもとには、上條暢嵩が駆けつけている。どうやら足合わせを行なっていたようだ。両手をボートに見立てて、右手を前に出したり左手を後ろに下げたり。上條が何事かを寺田に語ると、寺田は「そうだろ?」と一言。両者の感覚が合ったということだろう。寺田は上條に「ありがとう」と礼の言葉をかけると、ふたたびボートを整備室へ。どうやら交換によって機力が上向いたわけではなかったようだ。ふたたびキャリアボデーを交換し始める寺田。元に戻したのか、別のものに換えているのかは確認し切れていないが、登場する8Rまで、時間が許す限りこうした整備や調整を繰り返していくのだろう。その動き自体が、すでに気合の塊である。

 やはり予選トップの可能性を残す菊地孝平も、精力的な動きだ。神妙な顔つきで水面に降りていくと、すぐさま試運転。何人かと足合わせもこなしていた。試運転中断を合図する赤ランプが灯ると係留所へ。やがて菊地の周りに毒島誠や佐藤翼らが集結した。足合わせをしていたパートナーたちだ。菊地を中心にさまざまな情報や感想が話し合われる。ここでの会話がまた、調整への道標となっていくわけだ。ペラを外して調整所へと向かう菊地は、視線を下げ、明らかに脳内コンピュータをフル稼働させながら、一点を見つめて歩を進める。まさにゾーンに入った時の菊地孝平である。その調整がどんな答えを導き出すか、注目したい。

 2日目終了時点では得点率トップながら、3日目の連続5着で一気に準優圏外に落ちてしまった河合佑樹も、勝負駆けに向けて調整のピッチを上げている。もっとも、昨日だって河合は精力的に調整を進めていたわけで、その意味では特に何が変わったというわけではない。それでも、上位での準優進出も見えていたわけだから、心持は変わっていて当然。予選突破への気合は高まっているはずだ。まあ、実に端正でクールな面持ちなので、そうした気合やピリピリしたものはあまり伝わってこないんですけどね。とにかく、鋭い表情で調整を進めているのは確かである。

 3日目を終えて18位ボーダー上の前田将太だが、この人はいつ見てもマイペースに見えますね。モーターを装着している際には、先輩の岡崎恭裕と柔らかい表情で、ときに笑みを浮かべながら会話を交わしていて、勝負駆けのヒリヒリ感をほとんど見せていないのであった。これが前田のスタイルというべきであって、しかも今日は12R1回乗りだから、午前中はまだまだ余裕があるということもあるだろう。これが午後になってどう変わっていくかも見ものではある。

 1R、原田幸哉が4カドまくり! 予選突破に望みをつなげた。若いころの原田らしい走りだったなあ。勝負どころでスタートをバチコンと決めてまくり一撃。これで何度美味しい舟券を獲らせてもらったことか。当時を思い出したというわけでもなかろうが、原田はピットに帰ってくるとダンシング! 妙に明るく、また大はしゃぎなのであった。さらには歓喜のバンザイ! まあ、出迎えたのが西山貴浩だったから、その祝福に西山モードで応えたといったところか。とにかくもう、笑顔が大爆発で、こちらの頬もつられて緩んでしまいました。後半は4号艇。もう一丁があるか!?(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)