BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――早くも動いた

 9時50分から優出インタビューが行なわれ、その流れということもあるのか、早い時間から優出メンバーをピットで一気に見かけることができた。「エンジン吊りでしか姿を見なかった」ってなことを優勝戦の朝や準優の朝の記事でよく書いたりするわけだが、今日に限ってはそんなこともなく。
 真っ先に目についたのは、ペラ調整所に速攻で向かった三浦永理。もともと伸びの強いモーターで、しかしそのままでは乗れないために手前が来るようにペラを調整してきた今節。それが4日目連勝、準優のまくり差し一閃につながったということだろう。それをさらに煮詰める調整、と見るのが妥当なのだろうが、これだけ早く調整所に向かうとつい、優勝戦は一撃伸び仕様に戻したりしないだろうか……なんてことを想像したくなる。そうだとするならボートは着水されているはずで、しっかり陸で見かけたから、それはほとんど妄想に近いものなのだろうが。

 渡邉優美も早めにペラ調整所に向かい、たまたま覗き込んだ時には三浦とにこやかに会話を交わしている場面だった。準優のレース後は険しい顔も見せていたが、一夜明けて柔らかさが戻っているように見える。もっとも、レース前にはまた闘志の塊のような表情になっていくものと思われる。

 川野芽唯は取り付けの調整を丁寧に時間をかけて行なっていた。このあとはギヤケースの調整などもありそうな構え。時折、布切れでキャリアボデーなどを磨いている場面も。そんな川野に、たまたま隣にボートがあった寺田千恵が声をかけていた。寺田の表情は柔らかく優しく、おそらくは激励の言葉を送っていたのだろう。寺田と話す間、川野は終始笑顔で、大先輩のエールをありがたく受け取っていたようだ。

 2R発売中には遠藤エミが動いた。その前にボートを見たときにはモーターにプロペラが装着されていたので、調整を始めるのはまだ先になるかと思われたのだが、それは着水する準備が整っていたということだったわけだ。優勝戦メンバーでは着水一番乗り。こうなると、この後の行動は容易に想像がつく。試運転とプロペラ調整の繰り返しだ。それはきっと、展示タイムにボートをつけるギリギリまで続けられるだろう。それが遠藤エミのスタイルだ。

 3R発売中には樋口由加里もボートを下ろしている。1R発売中には二人のボートは隣同士で、そこで会話を交わす姿もあった。今節、遠藤は足合わせはほぼ樋口とやっていた、と語っている。102期の同期生、お互いがスパーリングパートナーのようなものだったのだろう。ということは、今日も二人の足合わせがこの後、繰り返されるのだろう。優勝戦ではライバルとなるわけだが、それまでは切磋琢磨で最終段階の仕上げをしていく。

 そうしたなかで、1号艇の平山智加は実にゆったりした雰囲気。調整作業もまだ始めてはいなかった。ピットに突っ立っていたら平山のほうから挨拶をしてきてくれたのだが、実にいい雰囲気というか、プレッシャーにまみれることもなく、また気分も良さそうな、穏やかな空気感であった。やはり準優を逃げての水神祭は、最高な心の栄養になったのだろう。着用しているTシャツは、仲間たちの手書きによる祝福の言葉やイラストが書き込まれたもの。みんなの愛情を一身に受けて、優勝戦を戦うというわけだ。メンタルのほうは完全に仕上がったと見た。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)