BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――後半も慌ただしく

 初日の朝というのは、誰もが整備調整試運転と大忙しで、実に慌ただしいわけであるが、初日の後半というのも、一部の選手はやはりドタバタと忙しく動いているものである。そう、初日に1走ないし2走し、そこで得た感触をもとに(多くは不満を解消すべく)さらなる調整を施すわけである。今日いちばん目立ったのは、エース機を引いたはずが見せ場なく大きな着を2つも獲ってしまった豊田健士郎である。
 豊田は、なんと本体を割った! エース機を分解するのは怖い、というのをよく耳にするわけだが、評判通りの動きを実感できなかったことで躊躇なく、本体整備に取り掛かったのだ。これはなかなか勇気がいることだし、またその早い判断はお見事。素性良いはずのモーターの、そのパワーを引き出すために初日から動いたのは、おそらく好転をもたらすはずだ。明日の動きに注目したい。

 7Rを逃げ切った松本純平も、勝利に飽き足らずに本体整備。あるいは、キャリアボデーを交換した可能性もあるので、明日の直前情報をご確認いただきたい。勝利者インタビューでは不満をこぼしてもいて、勝ちは勝ったが機力はまだまだ万全にほど遠い。そこで緩めることなく、自らの感触に従って、モーターと向き合ったわけだ。松本は今日は水神祭も行なっているわけだが、その前にはしっかり仕事をしていたわけです。

 5Rで見せ場なく6着に敗れてしまった原田才一郎もレース後は整備。F2の足枷も重いだろうが、それを跳ね返すためにはやはり相棒のパワーアップが必須。今日の開会式で、122期の面々は、先月に交通事故で亡くなった同期の木村颯さんの名前をあげて、ともに戦うのだと表明した。有言実行とするためにも、モーターの素性が、などと嘆いているわけにはいかない。友への思いをあらわすのは、水面だけではないのだ。

 最もドタバタしていたのは栗城匠だ。初日の栗城は4着3着。まとまっているようには見えるが、8Rはいいタイミングでツケマイを放ちながらも届かなかったのだから、足的には満足いっていないのは明らかだ。栗城はエンジン吊りを終えると、速攻でピットに戻ってきて、まずギアケース調整。ボートには試運転用の艇番がついており、調整ののち、水面に出ていくのは明らかだ。ただ、試運転ができる時間は限られているため、残された時間はかなり短い。ということで、陸では猛ダッシュで動き、調整もテキパキと進めて、電光石火で水面へ。この努力が報われるかどうか。明日は1号艇が回ってくるだけに、巻き返したい2日目となる。

 レース後、ではないが、澤田尚也も大忙し。というか、11Rにギリペラで臨んでいるのだ。11Rの他の艇はすべて展示ピットにあった10R発売中。澤田のボートは試運転用の係留所にポツンとあって、整備室を覗きに行くと案の定、ペラ調整室に鋭い目つきでペラと向き合う澤田の姿があったのだった。澤田がようやく調整を終えて展示ピットにボートをつけたのは締切7分前。最低でも5分前にはつけなければならないので、まさしくギリペラなのであった。その甲斐あって、11R逃げ切り! 7R5着を巻き返し、さらにパワーアップを狙って明日に向かう。

 さてさて、開会式でのコメントとは裏腹(というのは誰もがわかり切っていたけど)、水神祭を盛り上げた野中一平。前半1Rは4コースから勝利を収め、後半9Rは2コースから2着。上々の初日である。しかしレース後の野中は顔をしかめて悔しさをあらわに。本気で連勝を狙った9Rだったのである。本気で戦い、それが終われば本気でふざける。これが野中一平の真骨頂!(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)