表紙記事にも書いたとおり、このブログで江戸川開催を取り上げるのは2019年2月のボートレースレディースvsルーキーズバトル以来。取材班は基本、SGやプレミアムGⅠのビッグレースにしかいかないから、江戸川に来る機会というのがなかなかないわけで、だからやっぱりピットで取材すること自体が新鮮! 24ボートレース場、ひとつとして同じピットはないのが当然でも、江戸川のピットはとにかく独特で、久々に入ってみて改めて唸ったという次第。
なにしろ、ボートが頭上を飛んでいるのである! 江戸川は中川という河川上にコースがあり、水面とスタンドやピットは堤防を挟んでいる。だからボートは当然、この堤防を越えなければならず、機械でボートを吊って水面へと運ぶ、あるいは水面から運ぶという形態となる。ほかの場のように、ボートリフトがあって選手自身がそこにボートを運んで水面に降りていく、という形態がとれないのだ。そんなわけで、他の場のピットには絶対にありえない注意書き「吊ったボートの下に入るな!」が大書されているのであった。もちろん万全を期して吊ってはいるが、万万万万が一、ボートが落下したら大事故になりかねない。だからボートが吊られている間は選手も関係者も我々報道陣も、その下には決して立ち入らずに下ろされるのをじっと待つというわけである。
ほかの場にはまずないものといえば、この掲示板である。風速と風向きを示すものはいろいろな場で掲げられているが、「流速」「流向」があるのが河川コースの江戸川ならでは。東京湾の河口にほど近い場所にあるので、潮の満ち引きによって川の流れる方向が変わる(1マークから2マークに流れるのが下げ潮。2マークから1マークに流れるのが下げ潮)。さらに、時間帯によって流れの速さも変わる。この表示が実に重要になってくるわけだ。大雑把に言うと、上げ潮か下げ潮か、流速が速いか遅いかでレバーを落としてハンドルを入れる位置が変わってきますからね。ちなみに今日は向かい風で下げ潮(向かい潮)だったからそれほど水面が荒れずに前検が行なわれたが、向かい風で上げ潮、あるいは追い風で下げ潮となると風向と流向がバッティングするので、水面が荒れます。江戸川慣れしていない選手にとってはかなりの難水面となり、江戸川巧者に有利な水面になるわけですね。
整備室が競技棟4階にあるのも、江戸川の特徴。装着場が狭いので、同じフロアに設けられないのだ。我々は整備室の様子をまったく伺い知れないのですね。で、モーターを運ぶのは専用エレベーター。その乗り口が装着場の隅にあって、エンジン吊りの後には選手たちがエレベーター待ちをしていたりするわけである。ちなみにエレベーターは2基あります。この光景も江戸川ならではなのですね。
で、競走面とは関係ないけど、いにしえの名画の看板が飾ってあるのも江戸川のみの光景であります。これはスタンド内にも飾られているので、本場に来られる方はぜひぜひスタンドをめぐって鑑賞してみてください。
さて、新鮮な光景を今日はもうひとつ見たのである。森高一真がモーターを装着したあと、艇修理の係員さんと思しき方たちと操縦席に何かを設置しているような動きをしていたので見に行ってみると、なんと体重調整用のシートを敷いていたのだった。男子の最低体重は52kgで、測定した体重がそれを下回ると重りのプレートで52kgになるように調整するわけだが、選手は普通、調整用のベストを着用し、そこに重りを入れて調整するもの。ベストで調整可能な重量は3kgまでで、それ以上調整が必要となる場合、調整用のシートをボートの操縦席に乗せることになる。とはいえ、実際にそれをしている選手を、少なくとも取材中に目撃したことはない。どこの場でもピットにシート置き場があるのだが、そこにシートを取りに行く選手を見たことはないのである。そう、これが初の目撃体験! 森高の今日の体重は49kgで、ベスト着用でもいいはずなのだが、「着用するとキツいんや」ということで、シート装着を選択したとか。ボートのバランスが崩れるので敬遠されがちだと聞くのだが、森高はあえてこちらを選んだわけだ。果たしてこれが吉とでるか否か。「これでどうなるかやな」と森高はニヤリとしてみせており、その様子を見る限り、乗りこなす自信があると見たがどうか。
さてさて、前節のヴィーナスシリーズを優勝した清埜翔子が、今節も評判モーターを引き当てた。これは2節連続優勝も!? たしかに相手は強いが、なにしろ枠番抽選。好枠を連続していけばおおいに可能性はある。というわけで、清埜に声をかけてみたら、「プロペラは叩きました」とのこと。直線系の足に見どころがあるモーターではあるものの、乗りやすさを求めているようだ。ただし、直前にこの江戸川での調整を行なったばかりで、それで優勝しているわけである。同じような調整で正解が出る可能性も十分あるわけだ。ちょっと期待しちゃいますね。
あと、なにしろ新兵で忙しそうなため、話はできなかったのだが、「背中」に目を奪われた前検日でした。あ、篠原晟弥です。そりゃ背中ですよ、そりゃ。でも、深い意味があるのかも!? 明日、声をかけられたらその謎を解きたいところです。(PHOTO/池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)