いやー、驚いた。ボートレースオールスター初日中止順延。これまでもSGの中止順延は何度かあった。しかし、そのすべてが当日レース場に来る前に決定していた(多くは前日のうちに)。こうしてビッグレースの現場に一節間取材に来るようになったのは、2005年オールスターから。以来、丸16年が経ったわけだが、レース場に来てから中止順延が決まったのは初めてのこと。しかも1Rの展示航走を行ない、発売も締め切った後に決まったのだから、実にレアな事態なのである。
1Rは記者室で観戦し、その後にピットに向かおうと決めていたのだが、その1Rがいつまで経っても始まらない。10分ほど待って、これは異常事態だとピットに向かうと、選手の喫煙所にいた白井英治が「どう? できそう?」と尋ねてきた。いや~、すごい白波が立ってますよ。そう言うと白井はひとつうなずいて苦笑い。寺田祥らと会話を始めていた。
ピットに入ると、水面際には多くの選手が集まっていた。見つめているのは水面。あるいは強烈にたなびいている空中線か。遠目に観察するだけなので、会話の内容はまるで伝わってこないが、この荒れ切った水面でレースが可能かどうかということを口にしているであろうことは想像できる。
そうしている間も、整備室では西山貴浩が整備中。また、峰竜太がギアケースやキャブレターの調整をしていた。まだ1Rは始まらないが、ケツは決まっているわけだから、ドリーム組の出番が後ろ倒しになるわけではない。粛々と整備調整を行なうのみ、であろう。
一方、水面際にいた選手の多くは早いレースに出走する選手たちで、本来なら試運転に出たいのに、1Rが始まらないことにはそういうわけにはいかないのである。いや、この荒れ水面では試運転自体ままならないかも。また、一時はプロペラを叩く金属音も聞こえてきていたが、次第に小さくなっていっている。叩いても試運転に出るわけにはいかないのだから、あまり叩いても叩きすぎになってしまう可能性がある。ある程度叩いて、本来なら試運転に向かうタイミングなのに、そこで調整を中断せざるをえない、というわけで、水面際に集まる選手が増えるというわけなのだろう。
わっ、試運転用の係留所につながれていた岡崎恭裕のボートが、波の勢いで離岸してしまった! 水面際にいた篠崎元志がそれを発見して係留所に駆け下りる。あー、間に合わないか……と、興津藍がボートが流れていくほうに先回りしてキャッチ! ファインプレーだ! 元志と興津で協力して、元の係留所へとボートを引き寄せる。いやー、ボートの係留装置にも影響を与える高波とは、なかなか見ることはない。
ふとピット内の風速表示を見ると、20m! 写真は19mのときを押さえたものだが、うわー、これレース無理っしょ。なかなか強風がやまないことから、待機室に入っていた1Rの出走メンバーはいったん外に出ることを許されている。丸野一樹、鎌倉涼、濱野谷憲吾、森高一真、田村隆信がカポックを脱いで、姿をあらわしている(茅原悠紀は展示エンストで欠場)。
本来の発走時刻であった14時30分頃から1時間ほど経って、ピットには「1R、乗艇準備」というアナウンスが流れている。えっ、レースするんだ! 水面はまだ大荒れであったが、このタイミングでいったん準備に取り掛かろうということか。思わず鎌倉が「キャー」と悲鳴をあげている。田村は鎌倉に「……怖いな」と一言。そりゃそうだろうなあ。名だたるSGレーサーとはいえ、高く波立つ水面でのレースが怖くないわけがない。それぞれが待機室に戻っていくのを見つめながら、無事故完走を祈らずにはいられなかった。
とはいえ、その後も風が収まる気配はなく、水面には依然として白波が立っている。レースも始まりそうな雰囲気はなく、選手班長の瓜生正義が水面を見ながら競技委員長らと話し合う姿が見られた。選手たちの安全に配慮する選手班長、渋い顔で水面を見つめていた。
やがて水面際から選手の数は減っていき、しかし手持無沙汰そうにする選手の姿はあちこちに散見される。ただ待つしかない時間ってのは、長いよね。じっと待つ西島義則。
話し込む平高奈菜と大山千広。
ゴムホースでゴルフのスイング練習をする磯部誠(笑)。練習になるの? えーと、ナイスショット!
展示航走は14時に行なわれていたから、それから2時間経った16時。菊地孝平、吉川元浩、岡崎らが係留所に駆け下りて、エンジンを始動した。ん? ん? するとアナウンスが。「本日のレースは中止とします」。ついに中止決定……。無念。しかしこの水面状況では致し方なかろう。1R出走組は疲れた表情を見せており、気の毒としか言いようがないが……。特に1号艇の丸野は気を引き締めたり緩めたり、大変だったと思います。
それからの選手たちの動きは実に素早かった。1R組、展示ピットに係留していた2R組、試運転係留所組は次々とボートを引き上げる。すべての選手がモーターをボートから下ろすわけだが、同時に陸に上がってきた選手たちのエンジン吊りもあるわけで、これを実にキビキビと、ベテランも若手も協力し合って、進めていた。あっと言う間にすべてのモーターは外され、整備室へと運び込まれていく。エンジン吊りもそうなのだが、選手たちのテキパキとした動きにはいつも感服させられます。
おっ、深谷知博が奥様のボートから水を吸い出しているぞ。そう、レースもしていないのに吸水の必要があるくらい、係留所でボートは波にあおられてバタつき、水が操縦席に入っていたのですね。いやはや、なんという強風と高波! 残念だけど、やはり中止順延の判断は妥当であろう。
というわけで、中止順延のピットの様子でございました。珍しいことだから、いつものピット記事より長くなったな(笑)。明日からは何事もなく、レースが行なわれていくことを願います! とんだ水入りとなってしまいましたが、明日からもオールスター楽しみましょう!(黒須田)