BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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準優ダイジェスト

神の風、魔の風

10R                
①磯部 誠(愛知)31
②山口 剛(広島)15
③茅原悠紀(岡山)13
④羽野直也(福岡)17
⑤山田康二(佐賀)18
⑥新田雄史(三重)19

 いきなりの大波乱だ。地元ファンの期待を背負った磯部が、まさかのドカ遅れ! 起こしの瞬間に舳先を少し持ち上げたとき、不規則な強風がその舳先を持ち上げて着水でバウンド。そのロスが響いて他艇より1艇身の遅れになった。私の目にはそう見えた。

 が、どんな理由であれ後戻りはできない。スリットでキッチリ1艇身出切った山口がじんわり絞めて、ターンマークを待たずにジカまくり。ターン出口からの押し足も実にしっかりしており、茅原のマーク差しも完封してファイナリスト第1号を確定させた。

「神風の向かい風が吹きましたね」
 勝利者インタビューで山口の声が弾む。
「磯部君は突風で孕んでる(モロに浴びる)のが見えた。本当に難しい風でした」
 とも。磯部にとっては不運としか言いようがない風圧だったが、これもボートレースならではの悲喜劇だ。

 2番手は差して順走の茅原。以下、羽野~山田と続き、2周目にやや縦長の234561という隊形が出来上がる。磯部の悲劇を、嫌が上にも再認識させる残酷な隊形だった。
 山口の足色は前記・ターン回り~出口の押し足がゴキゲンの仕上がり。で、今日はスリット近辺の行き足~伸びもしっかりしており、私の【直B】評価では賄いきれない実戦足だった。明日の水面環境にもよるが、とりあえず【出A・直B+】に修正したい。

 で、その山口を付かず離れず追っかけまわした茅原の足も強力な見え方。仕上げきった山口をマークし続けたあたり、トータルパワーはわずかに茅原が上に見えたのだがどうか。引き続き【出A・直A】としておきたい。

順平と裕平

11R   進入順            
①新開 航(福岡)11
③桐生順平(埼玉)18
②吉田裕平(愛知)18
④赤岩善生(愛知)16
⑤岡崎恭裕(福岡)15
⑥西村拓也(大阪)15

 またまた波乱。このレースは何カ所かで局地的なアクシデントが発生した。まずは赤岩と裕平のエンスト。赤岩はスタート展示よりも穏やかな前付け~絶好の3コースかと思った瞬間にエンジン停止。時を前後して裕平もエンジンが止まり、あたふたと再始動に時間を費やした。結果、先に始動した裕平はダッシュ戦を諦めてスローの3コースへ。その後に動き始めた赤岩はスローの4コースを強いられた。

 最終隊形は1324/56。
 字ヅラ的には地味な変化だが、この並びを予想したファンは少ないだろう。そして、この並びでもっとも割を食ったのは、おそらく4コーススローの赤岩だったはずだ。

 スタートは↑御覧のとおり、イン新開が半艇身ほど突出。イン逃げ圧勝があって不思議じゃない隊形だが、そうはならない。強めに握ったインモンキーの内に、百戦錬磨の桐生が鋭い差しを繰り出す。さらに3コース裕平が冷静的確なまくり差しで肉薄。

 バック直線は行き足~伸び足勝負になったが、いちばん劣勢だったのが新開。逆に最内の桐生がずんずんと行き足を伸ばす。真ん中の裕平も新開を圧倒する。今節の新開の弱点である直線足の脆さが、ここ一番で露呈した形だ。

 ただ、準優は「2着勝負駆け」だからして、このよーいどんで終わるわけではない。バックで最内からマウントをとった桐生が2マークを先取りしてイチ抜け確定。2番目に有利だった裕平が全速でぶん回したが、風の煽りかサイドが掛からず大きく上下にバウンド。

 その間に、バック劣勢だった新開が差し抜けて2番手に返り咲く。さらに地元の赤岩も差がなく続く。ほぼ3-1、紛れれば3-4という隊列で2周1マークに突入した瞬間、第2のアクシデントだ。2番手の新開がいきなりバランスを崩して180度ほど振り込み、その背後に付けていた赤岩がギリギリ回避しつつ大失速。2艇がもつれている間に、4番手の裕平が再び2番手を獲りきった。後続は完全に千切れ、ここでファイナル行きのふたりが確定したと言っていいだろう。

 準優として特筆すべきは、桐生の1マーク~バックの実戦足。まったりしていた昨日までより実にシャープに見えたものだが、本人も納得の表情だ。
「今日になって大幅に叩き替えたら、今節でいちばん良かったです」

 ポーカーフェイスの桐生にしては珍しい、しっかり弾んだ声だった。元より機歴&下馬評が高い66号機が、桐生の英断で覚醒した形か。だとするなら、昨日までの【出B+・直B+】から【出A・直A】に昇格するべきだし、実戦を見てもそれが相応しいと感じた。

 一方、恵まれのような流れで2着に滑り込んだ裕平は、機力的には優勝戦でも互角以上に戦えるレベル。今日はエンスト~2マークだだ流れとすったもんだの1周だったが、機力とは無縁のアクシデントだったと思っている。据え置きの【出S・直A+】。

厄介なふたり

12R
①峰 竜太(佐賀) 14
②重成一人(香川) 15
③今垣光太郎(福井)13
④馬場貴也(滋賀) 17
⑤深谷知博(静岡) 13
⑥寺田 祥(山口) 14

 このレースの最大の焦点は、「今垣の3カドが実現するか。実現したとして、どこまでイン峰を攻略できるか」。私は勝手にそう思っていたし、多くのファンも同じ思いだったか。3コース今垣が颯爽と舳先を翻した瞬間、スタンド4階の記者席まで大観衆の絶叫が響き渡った。

 例によって、やや遅れめの起こしからフルッ被りで直進した今垣は、スリット同体ながら素晴らしい加速で舳先を突き出した。例によって、有無を言わさず絞めまくる。と見ていたが、そうではなかった。左ではなく、右に開いて内2艇の動きを視察した。おそらく、超抜・重成54号機の伸び返しを警戒したか。
 しばらく直進してから、今垣はやおら唐突に舳先を傾けた。ギリギリで重成を飛び越え、そのまま峰に襲い掛かる。
 届くか、無理か!?

 無理だった。峰はターンマークを舐めるようにほぼ全速で旋回し、それで今垣を置き去りにした。もはや驚くに値しないが、例によってエゲツないスピードだった。レース後の峰は、それを機力で片づけた。

「凄いグリップしてくれた。フルスロットルだったんで(サイドが)外れたり差されると思ったんですけど、もう、ノー、ノー、ノー跳ね!」

 ノー跳ね。新語を生み出す。アンタのターンが凄いんじゃないの? と心の中でツッコミを入れたが、今節の峰は己のターンより、「ノー跳ね」まで仕上げきった整備力を誇りに思っているのだろう。後続をグングン引き離すこの男を見ながら、私は昨日までと同じ【出A・直A】と査定した。本当は、もっと超抜なのかも知れないけれど。

 2着は、これまた異次元のスピードを誇る馬場。峰とは逆に「機力劣勢」と吐露している馬場は、凄まじい鋭角ターンで2マークの混戦から抜け出した。
 あんな神ターンができて、劣勢なワケないだろ。

 フツーならそう思うのだが、この男の場合は違う。そんな常識は当てはまらない。そう、このレースの1着と2着は、現在の私にとってもっとも機力を鑑定しにくいふたりの男が占拠したのだ。レース後に馬場の機力を【出B+・直B+】と据え置いたが、胸を張れるほどの根拠はない。(photos/シギ―中尾、text/畠山)