BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――GP勝負駆けのアツさ

 やはりグランプリ勝負駆けはアツい。背中から「クロちゃん!」と声をかけられ振り向くと白井英治。苦笑いを浮かべていたので、こちらも残念だったという旨を伝えると、白井は優出を逃したことをおおいに悔やんだ。日が明けていろいろな思いが胸に沸いたようで、反省の弁も口をついたりした。白井英治であっても失敗がある、それがボートレース。思うに任せなかった令和5年。ここで仕切り直して、来年に向かっていくことだろう。

 チルト3度で勝負をかけた宮地元輝は、スタートがすべてだったようだ。全速で行ければ、その思いは今日も残る。チルトをマックスに跳ねた場合は、全速でスタートを切れなければ威力を発揮しない。しかし、全速でスタートを行くのがまた実に難しい。宮地はラストチャレンジで、そうしたリスクのある戦いに賭けた。それ自体が尊いとこちらは思ったりするのだが、本人としては消せない悔しさがあるだろう。ちなみに、どういうわけか出足が節間でいちばん良くなっていたとか(笑)。ほんと、ボートレースは奥が深い。ともかく、しっかりと勝負をしてみせたことは間違いなく来年につながっていくと信じる。

 優出を逃した選手でも、特別選抜B戦次第で18位以内に入れる可能性のある菊地孝平は実に鋭い顔つきである。そう、賞金ランク上位でグランプリ出場というわけにはいかなくとも、まだチャレンジは終わっていないのだ。しかもB戦は1号艇。前半レースの時間帯が近いということもあっただろうが、かなり声をかけにくい雰囲気だった。

 普段は自然体で過ごしていることが多い前田将太も同様。いつも以上に気合の高まりを感じずにはいられない。こちらはB戦2号艇。ひとつ内の菊地を何としても撃破しなくてはならない。まさに勝負駆けなのだ。前田も前半レースがあるから、まずはそちらに全力投球だろうが、今日は実に濃密な一日を過ごすことになるだろう。

 女子のほうでも、大瀧明日香が賞金ランク12位で今日を迎え、藤原菜希の優勝戦の結果を待つしかない身となっている。ただ、これはもう、自力ではどうにもならないことで、だからなのか大瀧の表情は普段と変わっていないように思える。宇野弥生らとリラックスした様子で談笑する姿も見かけた。11Rはきっとドキドキしながら見守ることになるのだろうが、それまでは特別変わらない心持ちで過ごすのだろう。

 さて、優出組。今日も片岡雅裕の動き出しが早く、1R発売中にボートを水面に下ろしている。少しだけ言葉を交わすことができたのだが、もちろん緊張感は伝わって来るものの、笑顔に硬さはなく、悪くない精神状態と思えた。

 4号艇となってしまった今垣光太郎だが、もはや落胆のようなものはまったく感じない。1R展示前からプロペラ室にこもって、すでに精力的な調整に入っていた。

 池田浩二も動き出しは早く、2R発売中には入念な装着作業を終えていて、いつでも水面に出られそうな気配。その後はいったん控室に戻っており、おそらくはそのまま優出選手の公開インタビューに向かうことになるのだろうが、その後に調整や試運転が本格化しそうだ。

 一方、山口剛と茅原悠紀はもう少し先の始動になりそうな雰囲気。やはり公開インタビュー後、ということになるだろうか。

 そして、峰竜太は今日もゲージ擦り。結局、節間通して、その専用テーブルで時間を過ごしていたというわけだ。今日は中島孝平もゲージ擦りをしており、時折楽しそうに笑い合ったりもしていた。やはりSG復帰節で優勝戦1号艇だったダービー時よりはリラックスしているように見える。

 GⅡでは、逆転クイクラ行きには優勝しかない藤原菜希が鋭い表情でモーター装着作業。優勝戦メンバーでは唯一、勝負駆けとなっているだけにどうしても目を向けてしまうわけだが、そりゃあ気合が入っていないわけがないのであって、あとはその思いをどこまで水面に反映できるかということになるだろう。

 優勝してもクイクラには届かない西橋奈未は、新兵仕事に奔走。地元ビッグの優勝選で、もちろん一発狙っていないわけがないが、6号艇ということもあるのだろう、柔らかい表情で過ごしていることが多いように思えた。

 では1号艇の守屋美穂はどうかといえば、朝の段階ではリラックスしているように見える。こう言っては何だが、やはりGⅡ優勝が最終的な目標であるはずがなく、大晦日のGⅠはもちろん、さらに上を見据えている存在である。もちろん1号艇で優勝を意識すればレースでは緊張感も強くなるだろうが、クイクラ内枠が決まって言えるという状況では、自然体であるのがむしろ当然のように思えるわけである。

 三浦永理、長嶋万記、遠藤エミはエンジン吊りで姿を見たのみだった。あ、三浦は荷造りしている姿も見たか。ピットに入って最初に遭遇したのが、帰郷準備中の三浦なのだった。気持ちのいい挨拶をしてくれましたよ。いずれも歴戦のトップレディース。守屋同様、自然体で過ごしているように見えたのだった。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)