BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――ボーダーはどこだ!?

●11R

 やや不運な流れで2走を終えていた平山智加は、この1号艇は絶対に負けられない一戦だったはずだ。しかし、先マイは果たしたものの、手前でややバランスを崩して艇が流れ気味になった。そこを遠藤エミにきっちりと差されてしまった。さらには三浦永理にも。痛恨の3着。カタい表情で戻ってきた平山に、出迎えた岩崎芳美と西岡成美の表情も暗くなっている。岩崎が平山に話しかけ、言葉を交わすたびに、平山の顔が悔しそうにゆがむ。何度も、何度も。これでトライアルの得点は19。優出は厳しい状況に置かれてしまった。それだけになお、渋面が何度も繰り返される。平山1号艇、遠藤2号艇は、夏のレディースチャンピオン優勝戦と同じ組み合わせだった。平山には相性の悪い並びなのだろうか……。

 2着の三浦永理は、これで得点20。12Rの結果待ちとなっている。ということもあってか、レース後は緩んだ表情もなければ、痛恨の表情もない。ただ、1着勝負という思いもあったのだろうか、ほとんど動きのない顔つきがむしろ悔しさ寄りに気持ちは振れているのかと思わせた。

 そして勝った遠藤は、やはりスッキリとした様子だ。多摩川のボートリフトは3艇しか乗せられず、4~6着は係留所で艇旗艇番などを外したりするなど、エンジン吊りの前準備を行なう。そして1~3着が完全に引き上げられてから、リフトへとゆっくりボートを移動させていくことになる。多くの場合、1~3着の選手は先に控室へと戻っていくのだが、遠藤は4~6着の選手を待って、それぞれに頭を下げて回っている。特に、まくりを止めるかたちになった高田ひかるには、特に接触はなかったものの、先輩からの礼とは思えないほど丁寧に頭を下げていた。遠藤はこれで優出当確。優勝戦1号艇という点では、12Rを控えている浜田亜理沙にプレッシャーをかけるかたちになっている。

●12R

 特に中盤の時間帯以降、守屋美穂はとにかく忙しく動き回っていた。試運転タイムが終わるギリギリまでペラを叩き、大急ぎでペラを装着して水面に飛び出し、1周ほどしたところで試運転タイムは終了。そんな繰り返しだった。11R発売中も同様の動きで、展示ピットにボートを移したのはいちばん最後。とことんペラと向き合い、水面を走り、万全を期した。絶対に負けられないというより、絶対に負けてはいけない1号艇、そう考えているようだった。
 その思いは通じて逃げたが、それでも守屋の表情は変わらない。安堵も見えないし、歓喜も見えず、むしろ表情はカタくも見えた。もうその眼差しは一点、明日の12Rしか見ていない。そんな雰囲気なのだ。

 2着の浜田亜理沙は対照的に明るい表情。この2着で1号艇ゲット! 岩崎芳美がニコニコで腰を抱き、自然と笑顔がこぼれている。明日逃げれば、地元クラシックの権利も手に入る。夫の中田竜太はすでに権利を持っており、夫婦出場を待っている。プレッシャーもかかりそうだが、角ひとみや岩崎がきっと寄り添って、背中を押してくれるだろう。

 12Rの結果、ボーダーはなんと19点に。平山にも目が出たのか……と思いきや、寺田千恵が上位着順差で6号艇をゲット。寺田はそれをまるで知らずに、疲れた表情を見せていたのだが、優出を知らされて目を真ん丸くして、まず右手を挙げてピョン、さらに左手を挙げてピョン!「この4着がデカかったのか!」と快哉を叫んでいる。念願のティアラ獲得にはなかなか厳しい6号艇だが、優出しなければノーチャンスなのだから、その喜び方も納得。というか、テラッチ、かわいかったっす(笑)。

 また、11R終了時点で20点で相手待ちとなっていた三浦永理も優出。さらに、11R5着に敗れて落胆していた川野芽唯も20点で優出! 川野は「嬉しい!」とニコニコ顔である。川野は4号艇での優出だが、2015年にクイーンズクライマックスを制したのが4号艇! 地元福岡での歓喜を多摩川で再現できるのか。あのときは恵まれだっただけに、今回はスッキリ勝ちたいですね!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)