BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――峰3連勝

 6Rで峰竜太が6コースから差し切り。デジャヴ!? そう、オーシャンカップでも2日目の前半レースで6コースから差し切っているのだ。あのときは4カドから今垣光太郎がまくる展開。今日は4カドから齊藤仁がまくる展開。そこまで類似しているのである。
 峰曰く、腹を括って6コースに行ったのがよかった、と。ポイントは「腹を括って」だ。6号艇の峰は前付けも多用する。しかしここは動かなかった。動いても誰も入れてくれないだろうと予測されたからだ。だから、腹を括って6コースに行った。「目立つことしてやろうってのもあるけどね」と笑う峰だが、そこには骨太の戦略が根ざしている。
 そして11Rも2コースから差し切り! 無傷の3連勝と相成った。そこはオーシャンとは違うところ。さあ、明日の峰竜太はどうなる!?

 対照的に苦戦しているのが松井繁。8Rでは1号艇で6着だから、これは苦しい。昨日の整備で少しはマシになったかと思ったが、まだまだ仕上がりは万全には程遠い。しかしこれで折れることなどありえないのが王者の王者たるゆえん。レース後はすぐにプロペラ調整所にこもって、ハンマーを振るった。けっこう強めに叩いていたから、今日の調整は方向性が間違っていたか。この調整で今度こそ光明を見つけたい。

 宮地元輝は今節、とにかく同じところにい続ける。屋外にあるプロペラ調整所の、屋内調整室との境目のあたり。屋内調整室はガラス戸が一面に設けられているが、そちらのほうに顔を向けて、形としては壁に向かっているような格好。ガラス戸だから屋内が丸見えだけど。レースや試運転以外の時間、ほとんど宮地はそこに根を生やしたように座り込んでハンマーを振るっているのである。今日は、それこそ光明が見えたというか、4号艇で3着入線。初日の大きな着を巻き返す態勢は整ったと見える。そして今日の夜になって、宮地は整備室に入った。本体整備だ。プロペラのほうはメドが立ったということ!?

 もっとも、大きな整備をしているような様子はなかった。また、悲壮感は少しも見えず、むしろスッキリした表情で本体を見ているような雰囲気である。点検程度、ということか。途中で佐藤翼が歩み寄って、宮地に声を掛ける。宮地は、内容はよくわからんが、腕を大きく振るようなアクションを見せつつ、佐藤にニコニコと微笑みかけているのであった。佐藤も今日は9R2着で、内枠を残して悪くない航跡である。というわけで、実に和やかな二人の様子なのであった。

 その佐藤にわずかに及ばず3着の片岡雅裕。地元SGでの予選前半はドリーム3着に、1着3着。上々と言っていいだろう。何しろ、レース後に感情をあらわにするタイプではないので、たとえば1着だった前半や(笑顔は見えました)、3着であがってきた9R後も、わりと粛々としているように見える。ただ、着替えを終えたあとは、調整というのではなく、明日からのその準備といった感じでかなり動き回っていた。ペラ室にで入りしたり、整備室の隅のほうで何かをしていたり。丸亀での動き方のルーティンは染みついているはずで、この様子がまた明日につながっていくのだろうと想像される。

 片岡を見ていて気付いたのだが、深谷知博がギヤケース調整。別に特筆するようなことではないんだけど、普段見かけるこの調整に比べると長い時間をかけてやっているように思えたのだった。気のせいかな? でも片岡の動きを見て深谷に気づき、他の選手の動きも見つつ、合間に峰と話したりして、ちょっと一服と喫煙所に行ったりして、戻ってきたらまだ調整を行なっていたのである。整備士さんと笑顔で会話しながら、これまた和やかな様子。それだけ丁寧な調整を行なっていたということだろう。雰囲気には余裕がうかがえた次第であります。

 10R、井口佳典が逃げ切り。リフトがずいずいとせり上がってくると、ヘルメットを頭に乗せた状態の井口の顔があらわれて、これがまた爽やか! 新田雄史に声を掛けられると一瞬だけ目元が緩み、しかしふっと真顔になって、しかしその顔には充実感があふれているのであった。

 一方、そのお隣の西山貴浩も同じようにヘルメットを頭に乗せていて、こちらはといえば苦虫を噛み潰していた。眉間にシワ寄せて、かなり不機嫌な様子。1マーク回って3番手だったところを、逆転で2着になったというのに、それを喜んでいるふうはひとつもなかったのである。スタート失敗、と小さな声が漏れ聞こえてきたのだが、コンマ12なんですけど……。それでも、井口に笑顔で挨拶を受けると、朗らかに返すあたりが西山らしい。腹の中の思いはともかく、決して他人をぞんざいに扱わない男である。

 さてさてさて、8Rを終えて、桐生順平が着替えて控室からあらわれた。今日は3着5着とやや振るわない成績ではあったが、今日の仕事を終えて軽やかな足取り。あとはモーター格納だけと整備室に入ろうとしたそのとき、係留所からあがってくる選手に気づいて足を止めた。
「チョーさん、ありがとうございました!」
 えっ、チョーさんって言いました? エンジン吊りをヘルプしたチョーさんへのお礼ということだろうが、チョーさんって…………誰!?

 桐生に応えてどーもーと手を挙げたのは、毒島誠と並んで係留所からあがってきた長田頼宗なのであった。ああ、長さん、ですね。あの長嶋茂雄さんもチョーさんって呼ばれてるわけで、長の字がアタマに鎮座している長田がチョーさんと呼ばれるのは何の不思議もないですね。僕もこれからチョーさんと呼ばせてもらおうかしら……。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)