BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――暑さ、戻る

 雨はあがったが、その分、気温も上がった。試運転から帰ってきた瓜生正義が、タオルで濡れた髪の毛をくしゃくしゃっと拭う。長袖のウェアにカポックをまとい、ヘルメットをかぶっていれば、そりゃあたちまち汗が噴き出す。湿度は77%ほどと相変わらず高いから、なおさらだ。やはり試運転から帰ってきた毒島とともに、蒸し暑さに辟易とするような会話。「30℃だたもんなー」「暑すぎっすよー」。まあ、これからさらに気温が上昇する季節となるわけだが、暑さの端緒となる梅雨時はやはり身体にこたえる。

 そんなわけで、熱中症予防ということだろう、整備室には大きい水槽のようなものが置かれていて「Free DRINK」と側面に大書されている。もちろん自販機などもピットや控室には設置されているが、試運転から帰ってすぐだったり、装着場での作業をした後だったり、自販機へ行って小銭を用意して、なんていう手間が必要なく、水分を補給できるよう、関係者たちが配慮しているわけだ。去年の福岡レディースチャンピオンでのピットでも見たなあ。試運転から帰ってきた宮之原輝紀が、ここから麦茶をゲットする場面を目撃。麦茶ならカロリーの心配もないから、体重調整に気を遣う選手にはいいかもしれないですね。というか、日本の夏は麦茶だよなあ、と50代半ばのオッサンは思ったりもします。

 レースを終えた選手たちもやはり汗だく。1R、逃げ切った丸野一樹も額を汗で濡らし、髪の毛がやはり汗で濡れている。ただ、1着を獲ればその汗も爽快なものとなる! 丸野の笑顔は実に涼しげであった。丸野は昨日の9Rで不良航法をとられてしまっている。リプレイを確認すると、これで取られるのか……と少々違和感を覚えたりもするわけだが、それはさておき。丸野も相当に落胆し、また納得のいかない表情を見せていたものだった。その減点が響き、ここで1着を獲っても準優進出は絶望的。しかし、やはり勝利は最大の良薬。昨日悔しい思いをした分、この勝利は丸野のメンタルに元気を注入したようだ。

 1Rで2着の佐藤翼は、着替えを終えると早々にピットにあらわれ、後半9Rへの準備を始めている。もちろん佐藤も汗びっしょりでレースからあがってきているわけだが、シャワーとか浴びたくなりそうなところを、素早く次への準備に取り掛かるのだから、頭が下がる。もちろん地元SGへの気合もあるだろうし、そうでなくてもここまでオール3連対キープで上々の航跡、9Rで一気に準優当確を出してしまいたいところ。そうなれば準優好枠も見えてくるのだ。その気合も原動力になっているか。ぼーっと突っ立っていたら、いったん整備室へと向かっていた佐藤に背後から「おはようございます!」と挨拶された。油断していたのでビクッとしてしまったワタシ、振り向いたら爽やかな表情の佐藤がいたのでありました。

 さて、2Rの1マークで、石渡鉄兵のボートがめくれるような格好で水しぶきをあげ失速。ピットでは悲鳴のように「ワーッ!」という声があがっている。ボートの底部が見えたので転覆かと思われたが、一回転したのだろう、ボートは正常に戻って停止していた。エンスト失格だ。

 プロペラを叩いていた長田頼宗が、即座に装着場に飛び出す。齊藤仁、佐藤隆太郎、宮之原輝紀も走ってあらわれ、ボートリフト前に集結した。仲間の一大事、選手たちの動きは素早い。やがて、「選手、異常なし」とのアナウンスが流れて、彼らが安堵の様子を見せる。事故は他人事ではないし、また先輩が大きなケガを負うことがなかったことにもホッとしたことだろう。石渡はこれで大きくポイントを落とすことになってしまったが(選手責任)、後半8Rで元気な走りを見せてほしい。

 勝ったのは桐生順平だが、ピットに上がった直後はやはり複雑な表情。事故レースでは素直に喜べないというのが正直なところだろう。桐生は選手班長でもあるから、自身の勝利よりも石渡を心配する気持ちも強かったかも。ともあれ、昨日からの連勝で軌道に乗った状況。12R1号艇は憂いなく喜べるレースにしたい。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)