BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――精勤!

 前本泰和が8Rで左足負傷。途中帰郷となってしまった。劣勢モーターに手を焼いて整備しまくりを強いられたうえに負傷とは、まさに踏んだり蹴ったり。ただ、2日目帰郷といっても、ここまでの作業量は間違いなくトップ級である。まずは傷を癒して、また元気に暴れまくってほしいところだ。

 今日の作業量では、丸野一樹も負けていない。7R登場までにも本体整備や試運転などに追われており、7Rでイン戦2着に敗れるとさらに整備、試運転。10R発売中の試運転タイムが終わってボートを陸に上げると、その場でキャブレター調整を行なった。丸野は12Rにも出走があるから、まさにギリギリのタイミングでキャブレターに触ったというわけだ。涼しい整備室ではなく猛暑の装着場で、試運転で汗だくになった、その汗も拭わずに。というわけで、丸野の顔は滝のような汗が流れていたわけだが、そこで丸野が一言。
「黒須田さん、今日の僕と同じことやったら5kg痩せますよ!」
 うわー、マルトレを始めたのにサボりまくってるのがバレバレですかー。俺も丸野くらい動かなきゃな……。

 そんな丸野に、9Rで前付け敢行も4着に敗れた海野康志郎が歩み寄って、声をかけた。
「1マーク、トレーニング不足だったわー」
 えっ、そうなの!? 海野もマルトレしなきゃ……と思ってたら、丸野は
「そうでしょーーっ?」
 やっぱりそうなの? マルトレをしていたら、あそこは差し切ってたのか……。海野といえば重量級。ワタシとしては非常に親近感が沸くわけだが、一緒にトレーニングしましょうかね……。

 磯部誠も遅くまでおおいに働いた。というか、試運転に励んだ。10R発売中に切り上げたが、やっぱり汗だくなのであった。そのとき、装着場に選手の姿はなく、磯部はまずモーターとハンドル、レバーをつなぐワイヤーのねじを外しだす。そこにあらわれたのが新田雄史。当然、エンジン吊りに向かうわけだが、これがやけに遅いスピード。もったいぶってるような感じで、ゆっくりゆっくり歩を進めていた。普通、みんな走って向かうもんですけどね、エンジン吊りのヘルプには(笑)。ようするに、仲のいい後輩に対しておどけてみせているのだ。

 そしたら、辻栄蔵がペラ室から出てきて、磯部のエンジン吊りに誰もついていないことを発見。駆け付けようと走り出した。それを見て、新田雄史、大慌て(笑)。後輩をからかっていたら先輩が先にヘルプしそうな勢いとなって、「いいです! いいです!」と叫びながら猛ダッシュ、と相成ったのでありました。モーターをボートから外したのはもちろん磯部と新田だったが、それでも辻は艇旗外したり艇番外したりとヘルプしたんですけどね。新田、焦っただろうなあ(笑)。

 さて、10Rでは西山貴浩が2着。ギリギリまで試運転を行ない、整備なども行なってきた西山。足色はやはり劣勢のようで、しかしそれでもナイスな捌きで2着を獲って、意地を見せつけている。こりゃあ、ピットに戻ってきて騒ぐんだろうなあ、と思っていたら、これが実に神妙な様子なのであった。平本真之が笑顔で肩をバンバンと叩いても、西山はクスリともせず。こりゃ珍しい。というか、こちらが西山の本質かもしれませんね。その後に戦った選手らとレースを振り返っている際には笑顔も見られたが、しかしそれほど声を張り上げていないというのはレース直後と同様。いろいろ思うところがあったんだろうなあ。

 9Rでは毒島誠が不良航法をとられてしまった。たしかに2マークで茅原悠紀と接触し、茅原は最後方に下がってしまっており、最近のパターンではこういうジャッジになりがちだ。ただ、山口剛と競りながら、毒島は危険と見たか引いており、そこで旋回したら茅原の進路とかぶってしまった、という感じ。情状酌量の余地はあると思うのだが……。競技本部から出てきた毒島は、まっすぐ前を向いて心中を隠すかのように無表情。ただし、歩様は相当に早かった。先ほどの新田とはまったく対照的に。まるで声をかけられるのを避けるかのように……。減点10は痛いが、毒島なら充分に巻き返せる!(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)