ピットに入ってまず整備室を覗く。毒島誠の姿を確かめたかったのだ。前検では「すべてが良くない」という感触。ペラも自分のかたちに近いとなれば、本体に手をつける可能性が高いと思っていたのだ。
ところが、まず目に飛び込んできたのは、本体を割っていた瓜生正義である。昨日は「できる限り外回りの整備で」と語っていたのに、いきなり本体!? もっとも、これは瓜生らしい動きとも言える。ドリーム戦に出走する初日に、開会式＆公開インタビュー後にまず本体に手をつけるというシーンは、これまでに何度も見てきた。時間がたっぷりあるから、己の感性にしたがってやれることはすべてやる。これが瓜生だ。そして、12Ｒに登場してきたときには、前検とは気配を一変させてしまっていることもよくあること。前検では泣いてたのに、一気に上位級にもっていくのはお手の物だ。ちなみに、昨日の瓜生のコメントは「スタートのしやすさとターン回りのバランスが悪い」。たぶん、ドリームまでには直しちゃうんだろう。
あ、その向かいで、毒島もやっぱり本体整備をしていました。雰囲気からは瓜生より大きな整備のようだった。ドリームまでにどこまで立て直せるだろうが。
整備室には、彼ら以外にもドリーム組の姿が目立った。山崎智也がリードバルブ調整をしていたり、菊地孝平がギアケース調整をしていたりなど。菊地はその前にはプロペラ調整をしており、ペラを光にかざして翼面のラインをチェックする、おなじみの光景も見られている。田村隆信は本体整備。ただ、部品交換などの大きな整備をしている様子は、確認できた範囲では見当たらなかった。
結局、ドリーム組で整備室に姿がなかったのは井口佳典のみ。井口の姿はペラ室にあって、この作業に専念していたのは12Ｒ組では井口だけだったということになる。
１Ｒ、重成一人がイン逃げ快勝し、その２着に飛び込んだのは平本真之。大外６コースから展開を突いたもので、11カ月ぶりのＳＧ参戦の初戦としては、上々の結果だろう。平本自身、「これは大きい！」と言っており、６号艇を２着でクリアしたのは今後の戦いを思えば、たしかにデカい。もちろん、好枠で大敗したら元も子もないわけで、１Ｒ１回乗りの平本はモーターを外すことなく、レース後は試運転に励むつもりのようだった。
というわけで、平本は着替えを終えると自艇のもとでもろもろとチェックをしていたのだが、そこに歩み寄ったのは元Ｆ１レーサーの片山右京さん。地上波放送のゲストだそうで、ピットを表敬訪問したというわけだ。Ｆ１もボートもモータースポーツ。ということで片山さんは興味津々で、平本にもろもろと質問を投げかけ始めた。平本も笑顔でひとつひとつに丁寧に答えており、“世界の右京”との会話は大きな刺激になったようである。レース後すぐに自艇のもとに向かい、作業を始めたからこそ片山さんの目に留まったというわけで、平本は「ラッキーでしたよ～」とニコニコしていた。平本に流れが来ているか!?
その様子を、羨ましそうに眺めていたのは、平石和男である。平石といえば、趣味＝自転車が有名ですよね。先日も赤城山に自転車で上ってきたそうで、「１日に140kmくらいは乗るよ」とのこと。で、片山さんは今、チーム右京という自転車チームを結成しており、その話がしたかったようなのだ。
今節最年長は、なんと平石。その事実に驚かされたりもするわけだが、だから平本と片山さんの会話に割り込んでも誰も文句は言わないはずなのだが、平石さん、二人の会話が終わるのをじっと待っていた。ジェントルマンなのだ、我らがへーちゃんは。その後、会話が一段落したところで、片山さんにご挨拶。平石の話を聞きながら、「ボートの選手が本格的に自転車でトレーニングしているとは！」と感心していた。平石は丁寧に挨拶して、その場を辞していて、最後までジェントル。そんなへーちゃんに応援ヨロシク！(ＰＨＯＴＯ/中尾茂幸 ＴＥＸＴ/黒須田）
