BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――驚きの早仕掛け?

 

 

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 1Rの展示が終わったころにピットに入ったその瞬間、水面に青のカウルをつけたボートが目に入った。池田浩二!? 早い。明らかに動き出しが早い。つい20分ほど前に優出選手インタビューが終わったばかりなのだ。マーメイドホールからピットに戻り、着替えて、準備をして、ボートを降ろす。逆算してみると明らかに、ピットに戻って速攻で水面にボートを下ろしたことになる。やっぱり早い!

 

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 ピットの奥へと歩を進めて、さらに驚く。井口佳典と菊地孝平がリフトに乗っかっていたのだ。これに、仲口博崇も続いた。岡山勢以外はすべて着水! メモに書きなぐった。

 おっと、茅原悠紀はプロペラを装着しているところではないか。ということは……やっぱり下ろした! 1R発売中に、優出メンバーの5人が着水するとは思わなかった。こんな光景はこれまでに見た記憶がない。12R1回乗りなのだ。時間はたっぷりある。エンジン吊りのときにしか見ない優出メンバー、なんてこともここに何度も書いてきたはずだ。

 

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 今日は天候が変わって、昨日までの秋空は雲に隠れてしまっている。1Rが終わったころにはぽつりぽつりと雨も落ちてきた。こんな日は、やはり調整も早くから行なう必要があるということか。そんなことをぼんやり考えながら、菊地と井口の足合わせを眺めたりしていたわけである。

 ここまでの驚きやら感想やらがまったくの的外れだと判明したのは、1Rの展示が終わったあと。優勝戦メンバーのスタート特訓が始まったのだ。なるほど~。これに出るために、みんなボートを下ろしたのね。優出選手インタビューは9時45分にスタート。マーメイドホールへの移動やら何やらを考えれば、朝はモーターをボートに装着する程度のことしかできなかったはずだ。ということは、普段なら朝のうちに行なわれるスタート特訓を行なう余裕もなかった。そこで、2R発売中に時間が設けられたわけである。そうだよな~。この早い動き出し、おかしいと思ったんだ。

 

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 ということは、である。お気づきだろうか、ここまで平尾崇典の名前が出ていないことを。そう、平尾はこのスタート特訓に出ていないのである。そのとき、平尾のボートは装着場に置かれたまま。平尾はまったく動き出す気配がなかったのだ。それこそ、エンジン吊りのときにしか見かけない感じ。スタート特訓がこのタイミングで行なわれたのに平尾をほとんど見かけなかったというのは、こちらのほうがむしろ特殊である。つまりは、余裕綽々なのだ。エンジン吊りで見かけた平尾は、実にリラックスしておりました。あ、ちなみに、スタート特訓は、2本とも1~5号艇で枠なり。ただし、1本目で池田が100m起こしの4コースをやっており、これに合わせて内3艇も深い起こしとなっていた。井口は2本ともダッシュの5コースである。

 

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 スタート特訓が2R発売中だったこともあってか、平尾以外の各選手はそのまま調整に突入している。調整と言っても、ペラ調整のみだ。

 真っ先にペラ室に入ったのは菊地。これに井口がつづいている。菊地は自然体で過ごしていて、後輩の深谷知博と大声で話している様子を見るに、大きな緊張感は伝わってこない。逆に井口はややピリピリした雰囲気もあり、早くも気合満点の様子である。同期の田村隆信あたりと話しているときには笑顔も見えるが、別れればすーっと真顔に戻っていく。戦闘態勢に入っているのは間違いない。

 

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 ピリピリしているというなら、池田である。顔つきが、はっきり言って、怖い。こんなにも気合をあらわにする池田浩二、そうそう見たことがない。控室などではどうかわからないが、エンジン吊りに出てきても、いつもの「仲間とのじゃれ合い」が見られないのだ。ピットを出るまで、池田の笑顔は一度も見なかった。こんなこと、今までにあっただろうか。

 

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 仲口博崇は、たぶんカタくなっていると思います。顔が少しひきつっているように見えるから、すでにドキドキし始めているはずである。だが、僕はそれを心配しない。だって、今日は緊張しなければおかしいから。SG初優勝のかかる優勝戦1号艇、というのはただでさえプレッシャーがかかる。仲口の場合、それがメモリアルでの白井英治同様の「悲願」であることを思えば、カタくなって当たり前ではないか。逆に、緊張していなかったとしたら(それを自分でも感じていなかったとしたら)、そちらのほうが危ないと思う。だから、仲口はむしろいい雰囲気だとここでは言っておく。ペラ調整の前にメモを取り出して入念にチェックと書き込みを行なっていて、つまり調整段階で浮ついているということはありえない。あとは緊張とうまく付き合いながら、運命の時を待つだけだ。(PHOTO/池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)