'今日のイン成績
①④①④①②①①①①②①
1着率67% 2連率83%'
「イン12連勝があっても不思議じゃない最近のSG」VS「イン12連敗もありえる平和島水面」。さあ、どっちの特性が勝る?? と見ていたが、やはりSGでの“コースの利”は半端じゃなかった。最初の4レースは勝ったり負けたりのイン選手だったが、5Rからは8戦6勝オール2連対。やはり強い。その5Rあたりで向かい風→追い風に変わったという要因も大きかったか。いずれにしても、よほど強い風(特に向かい風)でも吹かない限り、インを無防備に蹴飛ばすのは得策とは言えないだろう。
パワフル・エリー
『テクニカル・エリー』こと三浦永理が、オープニングレースで観衆を魅了した。エース64号機を駆る吉田弘文が、苦もなく逃げきったこの1R。2着争いは3艇による熾烈なデッドヒートになった。石川・深川のW真二、そして6コースから割って入った三浦。
W真二は機力より気力、屈強なハートを持つ猛者だ。その大先輩を相手に、三浦は俊敏差しで一歩も引かずに食い下がる。まさにテクニカル・エリーの真骨頂だ。
圧巻は、2周2マークだった。もつれた糸を断ち切るように、三浦は全速のツケマイで百戦錬磨の男たちを引き波にハメてしまった。スタンド興奮、大歓声。三浦の60号機は「赤丸急上昇モーター」としてスボーツ記者の間でも評判なのだが、そのポテンシャルを120%引き出す全速マイだった。初代賞金女王覇者のプライドをも感じさせた。捌き一手のテクニックだけではない、力で敵をねじ伏せる全速アタック。この攻撃を生来のハンドリングに合体させれば、女王はさらなる飛躍を遂げるだろう。
残念ながら、後半7Rはピット離れに失敗して6コースから5着大敗。波には乗り切れなかったエリーだが、1Rのパワーと気持ちの強さを維持できれば挽回は十分に可能だ。明日以降も、パワフル・エリーを軽視してはならない。
艇界最速!?
走るたびに強くなる峰竜太。今年初のSGでも、さらなる成長をファンにアピールした。4Rは問答無用の一撃4カドまくり。まあ、これはもはや峰リューの“お家芸”であり「4カドの峰は、いつでもどこでも全速で握る」と誰もが知っている。知ってはいるが、「やはり今日も行っちゃったのか??」と驚かされる。最近のSGは、それほど4カドまくりが難しいのだ。そんな“離れ業”を要所要所で面白いように炸裂させる峰。まったくもってこの男は只者ではない。
続く後半8Rも攻める攻める。5コースの峰はコンマ04の快スタートから迷うことなく全速でぶん回し、空いている間隙にこれまた迷うことなく舳先を突っ込み、スパーーンと艇団を割って見せた。逃げる中辻崇人にはわずかに及ばなかったが、軽々と2番手を取りきってしまった。「軽々」などと言うと、本人は怒るかもしれない。しかし、そう見えてしまうだ。スリットから握るタイミングも、舳先を突っ込む判断も、図抜けて早い。そして、速い。仕掛けが早くて速いから、当然のように抜け出すタイミングも他の選手の割り差しよりも数秒早くなる。「あれ、もうこんなところに??」と驚かされる。今日のそれも、抜群に早く速かった。走るたびに、この速度と精度が増している。4~6コースで、もっとも1マーク付近に辿り着くのが早いレーサーは、おそらく峰竜太だろう。「今節の峰のパワーは中堅レベル」が私の見立てなのだが、今日の1・2着はパワー不問の真に強い勝ち方だった。どこまで早く、速くなるつもりだ、峰リュー??
這う王の逆襲
6着・6着……ただでさえ崖っぷちのB2レーサー今垣光太郎が、初日で予選突破に黄信号を点してしまった。しかも、2・3号艇という好枠での惨敗。4・5号艇で大活躍した峰とは、あまりにも対照的だ。4カドに引いた1Rは、アウトコースの三浦永理にスリット直後に攻め潰された。後半の8Rは、峰の引き波を思う存分浴びた。ほとんど何もできずに、ほうほうの体でゴールインした。正味のパワーが弱いのかどうかも判断しかねるような瞬殺。
どうした、光ちゃん????
思わずにはいられない。私はボートボーイ誌の総理杯予想で、今垣に◎を打った。この総理杯に優勝すれば、次の笹川賞にも出られる。そこでも好成績を残せば、賞金王決定戦に大きく近づく。そんなB2レーサーのミラクルストーリーを、頭の中に描いていた。単なる絵空事ではなく。数々の伝説を残してきた今垣光太郎なら、それは十二分に実現できる物語なのだ。それが、いきなりの⑥⑥で、節間勝率1・00、予選47位に甘んじるとは……。
いやいや、嘆くのはまだ早すぎる。かつて初日⑥⑥から予選を突破した選手は何人もいた(と思う)。どの道ミラクルな物語なのだから、さらに後世に語り継ぐようなアンビリーバボーを頭に思い描いておくとしよう。
明日は、1Rの1号艇。内枠の権利をすべて使い果たすこのレースから、ミラクル光太郎の大逆襲がはじまる。(photos/シギー中尾、text/畠山)