BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――若さの特権だ!

 若者に洗練とか円熟とかを求めても仕方ないだろう。

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 11R、3番手争いがもつれた。黄金井力良と後藤翔之が激しく競り合い、それに巻き込まれるかたちで黒井達矢が転覆している。荒いレースという向きもあろうが、それが若さの特権でもあろう。黒井にたいしたケガがなかったのが幸いで、ならば若者の意地があふれる激闘だったと讃えたい。

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 レスキューで戻ってきた黒井は、憮然としていた。当然だろう。大丈夫か、の周囲の問いかけにもまともに応えられないほど、不条理な戦線離脱に憤っていたようだ。柔らかな性格の好人物である黒井が見せた、戦士の顔。この屈辱を晴らすべく、明日以降、燃える走りを見せてくれるだろう。

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 黄金井と後藤も、カタい表情だった。黄金井の場合は、後輩を転覆させてしまった後悔もあっただろうか。エンジン吊りを終えると足早に医務室に向かい、黒井の容体を確認している。医務室から出る際の足取りも大股で早く、そこにこのレースに残してしまった悔恨の大きさがあらわれているように思えた。

 ケガをさせてしまうような危険な走りはいかんが、ひとつでも上の着順を狙っての競り合いはおおいにやるべし! そして、戦後は禍根を残さず、次の戦いでまた真っ向勝負すべし。それがこの一戦を盛り上げ、多くのファンの耳目を集めるのだし、最後の新鋭王座を彩ることになるだろう。もちろん彼らの財産にもなるはずだ。ま、何度も言うけど、ケガには気を付けてね!

 

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 江崎一雄もまた憮然としていた。別にもつれた展開というわけでもなかったが、3番手に争いに競り負けるかたちで5着に終わっている。ピットに戻った表情はまさに憤怒。やり場のない怒りを抱えたことがあらわになっていた。思わず記したメモは「憮然大王」。わかる人は笑ってやってください。

 その後の動きが、また怒りをあらわにするかのように素早かった。あっという間に着替えを終えると、ペラ調整所に直行。今日の調整の方向性がまったく正反対だったのか、かなり激しくペラを叩き始めている。閑散とし始めたピットに響く大音響の金属音。ようするに、ペラを大幅に叩き変えた、というやつだろうが、その叩きっぷりは怒りのこもったように見えるほど、強烈だった。

 12R前、作業を終えた江崎とすれ違った。「明日、動きたいっす~」。前夜版を確認すると、後半に6号艇がある。マジか。動くのか。先輩相手にコースを分捕るのか。江崎は開会式で「遠慮なく先輩をぶっ倒したい」と言っている。ならば、こちらがかける言葉はこれしかない。「遠慮なく!」。ニヤリと笑う江崎。やっぱり、この男、本気である。本気で、最後の王座をかっさらうつもりである。

 

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 整備室を覗けば、機力に悩む面々の顔がある。もっとも深刻そうだったのは末永祐輝で、まだ2日目だというのに、整備室で何度その姿を見たことか。転覆整備も含めて、本体整備を繰り返し行っているのだ。もはや整備室の主である。

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 JLCの1、2着選手インタビューで「もう後がない」と言っていた大池佑来も、本体整備に着手している。たしか「明日からも頑張る」的なことを言っていたような記憶があるが、今日からもう頑張っているのだ。

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 本多宏和はキャリーボディー交換。整備士さんに見守られながら、必死で作業をこなしていた。それが終わると、すぐさまペラ調整室へ。まったく休む間もなく、動き続けているのだ。

 みんな頑張れ!

 

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 で、特に整備しているわけでもないのに、整備室と装着場を往復していたのは、高田明、谷川祐一、加藤政彦だ。新兵仕事に駆けまわっていたのだ。マグネットを使って鉄くずを集めたり、整備室の整理をしたり。ちなみに、年齢は高田28歳、谷川31歳、加藤29歳。年長さんたちだ。仕事が一段落つくと、装着場のど真ん中で井戸端会議。先入観からすると、人生経験あふれた雑談、とか書きそうになるが、実際はなかなか若々しい雰囲気で、まだまだ君たちはヤングだ!“若造”粉砕を期待してます!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)