最強者の証
10R 進入順
①池田浩二(愛知)14
⑤徳増秀樹(静岡)12
②峰 竜太(佐賀)13
③新田雄史(三重)11
⑥中島孝平(福井)14
④岡村 仁(大阪)08
F2のハンデをものともせず、池田が豪快に逃げきった。この大舞台のイン戦で、コンマ14。アウト単騎がましの岡村が強引に攻めたが、その舳先が届く前に1マークを回りきっていた。例によって強い。強すぎる。
混戦の2着争いからは、“SG優出常連レーサー”になりつつある徳増が力強く抜け出した。この目覚しい飛躍を支えているのは、唯我独尊とも言うべき揺るぎない自信だろう。今日も、5号艇からズカズカと2コースに割り込んだ。最近のSG(とりわけ成績順で枠が決まる賞典レース)では、単独で前付けに出る5号艇は珍しい。最近の徳増には、「他の選手にどう思われようと、俺は俺のやりたいようにやる」という強い意志が感じられるのである。前検入りのファッションも独創的だったし。
1着・池田、2着・徳増。
池田の足はバランス型でかなりいい、と思う(池田、瓜生、桐生あたりは、パワーか実力かが判別しにくいのです)。明日のスリットも己との闘いになるが、スタートさえ五分で行ければ勝機は十分にある。
徳増の足は、伸びがない代わりに回り足が強めに仕上がっている。明日も同じ5号艇。この策士がどんな奇手を放つか楽しみだが、前付け2コースでも太田マークでも引き波を超えるだけのパワーはある。
浪花のツートップ
11R
①松井 繁(大阪)12
②興津 藍(徳島)14
③篠崎仁志(福岡)12
④井口佳典(三重)14
⑤太田和美(奈良)12
⑥齊藤 仁(福岡)15
スリット横一線。最大の脅威と見られていた4カド井口は、同じようなスピードで伸び返す仁志に完璧にブロックされた。こうなれば、王者の独壇場。他艇に影すら踏ませず、バックで先頭に立った。
「たとえフライングになっても……」
勝利者インタビューでスタートの決意を口にした。このセリフが出るときの松井は、不退転のガチ本気モード。去年は夏のオーシャンカップでこのモードに突入したが、今年の松井は3月にして賞金王当確を決めにかかった。もちろん、その視野にあるのはベスト18などというチンケなものではないだろう。
太田のレースっぷりも圧巻だった。井口がブロックされたと見るや、迷わずにその舳先を叩き、全速で艇団のど真ん中を割った。コンマ1秒でも躊躇したら、あのまくり差しは不発に終わっていただろう。王者と怪物が、貫禄を魅せつけた。
1着・松井、2着・太田。
松井の足は……「準優の中では自分がいちばん苦しい」と吐露したように、とても上位級とは思えない。今日も独走パターンに持ち込みながら、ターンマークごとに太田ににじり寄られていた。とにかく、ストレートが弱い。出足~回り足は中堅レベルか。トータルで中の下。このパワーでこの成績は絶賛に値するが、同時に盤石の優勝戦ではないことも事実だ。明日の整備でどこまで化けるか、どの部分を強化するのか。明日は気配だけに注目するとしよう。メンタル面に関しては、何ひとつとして考える必要はないのだから。
一方、太田の35号機は、前検とはかなり違ったムードになっている。突出して見えた行き足~伸びが落ち、代わりに出足系統が強くなった。今日、何本もの引き波を超えて、狭い間隙を突き抜けられたのが変化の証だ。しかも、ダウンしたとはいえ行き足~伸びもゆうに水準を超えている。明日のコースは微妙だが、非力な王者を打ち負かすには十分すぎるパワーだと思う。
なぜ……
12R 進入順
①白井英治(山口)21
②森高一真(香川)19
⑥鎌田 義(兵庫)21
③吉田俊彦(兵庫)08
④丸岡正典(奈良)03
⑤毒島 誠(群馬)05
無慈悲なまでの、一方的な猛攻撃だった。上記のスタートタイミングなのである。たとえレースを見ずとも、1マークまでの展開がわかるだろう。地元の俊彦が、一瞬にして内3艇を呑み込んだ。インの白井は、なす術がなかった。
そもそも、起こしの段階から「こんな1マークになるのではないか」という予感はあった。スロー3艇はやや深めの横並び(多少の浅い深いより、この「横並び」というのが、インにとっては厄介なのだ)。外の3艇は目一杯に艇を引いた。なぜだかカドが異様に伸びる今日の尼崎水面で、こんな極端な隊形なのである。進入からもつれまくった1日ではあったが、この最終レースのスローVSダッシュの隊形がいちばん極端だったと思う。しかもしかも、俊彦の展示タイムは昨日までとは別物の6秒49。伸びを強化したのかどうか、この数値は11Rの井口とまったく同じだった。
12秒針が回って、ダッシュ勢がぐんぐん近づく。スリットのはるか手前で、カド受け鎌ギーとカド俊彦の舳先が並んだ。5コース丸岡の舳先はさらに前にある。まくり屋・丸岡の習性を熟知している俊彦は、スリットから覗くと同時に舳先を左に傾けた。進入から起こしの隊形から俊彦のパワー変化からスリット隊形から……一連の流れのすべてが、白井を引き波にハメるために用意されていた。白井のアタマ舟券だけを買っていた私には、そうとしか思えない待機行動だった。
なぜ、英治のインのときだけ、こうなる??
私は1マークを回りきらないうちに天を仰ぎ、英治の不運を思った。
ただ、記者席に戻ってレース結果を見たとき、もうひとつの「なぜ」に出くわしてしまう。多くは書きたくないので、その瞬間の思いだけを記しておく。
なぜ、なぜ、コンマ21なのだ、英治!!??
1着・俊彦、2着・鎌田。
先に記したように、昨日までボチボチだった俊彦の伸びが、今日は井口級の鬼足に仕上がっていた。現時点ではわからないが、何らかの手術を施したのだろうか。同じ3号艇の明日も、このままの快速仕様で臨むのか。その可能性は高いだろう。
一方、起死回生の切り返しで逆転の2着をもぎ取った鎌田の足は、全部の足が強めのバランス型。昨日の気配は一息だったが、今日の動きは抜群だった。そして、明日の鎌ギーもまた同じ6号艇。進入はどうなるのか。同期の英治に対してでも動いたのだから、王者にも前付けで迫るのか。動いてほしいし、動かなければならない。私はそう思う。で、そのときに俊彦はどうするか。またカドに引くのか、枠番を主張するのか……松井の劣勢パワーも含めて、明日のファイナルは実のところ超難解な接戦カードだと、私は思う。(photos/シギー中尾、text/畠山)