BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――静かな準優朝

 

 

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5日目の朝は、わりと静かなものである。動いているのは一般戦組が主だから、準優組をテーマに観察しようとすると、手持無沙汰な時間ができたりもする。ペラ調整所に準優組の姿はちらほらと見えるが、昨日までと変わった光景は特になく、「桐生、今村、毒島、丸岡」などとメモして、また立ち尽くしたりする。

 そのメモのなかから、動いたのは丸岡正典。ペラを手にすっくと立ち上がると、係留所へと駆け下りていったのだ。そうだ、係留所をチェックするのを忘れていた。丸岡の後を追うと、たしかに丸岡のプレートがついたボートが係留所にあった。今日は11R6号艇。有利な枠ではない。だが、微塵も諦めることなく、一発狙いの調整を早くから続けているのだ、とわかる。試運転を繰り返して、足の変化を確かめているのだ。丸岡は、おそらくこれを今日一日つづけるだろう。一昨年の福岡ダービー覇者を簡単に見限るべきではない。

 

 

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 係留所をよく見ると、今垣光太郎の姿もあった。そして、丸岡を眺めていると、今村暢孝もいつの間にか着水していて、係留所にやって来た。そうです、「今村」とのメモは今村暢孝である。彼もまた、6号艇だからといって、少しも怯んでなどいないのだ。

 

 

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 もう一人の今村、予選トップの今村豊も、整備室奥のペラ調整室にいた。選手班長の責務をこなしながらの作業だから、空いている時間があれば少しでも調整を進めようという思いが伝わってくる。といっても、今日も今日とて、陽気なミスター。田口節子にちょっかいを出したりしながら、ピットに笑いを振り撒いていた。

 

 

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 ハッキリ言って、準優組のおもな動きはそんなところである。時間を追ってペラ調整の選手は増えていくわけだが、それが特筆すべきことではないだろう。それよりも、まだ通勤着(レース場と宿舎の行き帰りに着用するウェア)のままだった服部幸男が目についたりした。ということはケブラーズボンもはいていないのであり、始動もしていないということになる。確認していないが、朝の特訓も出ていなかったかも。とはいえ、のんびりと過ごしているとは思えず、頭のなかにはさまざまな戦略がうごめいているだろう。鉄人の面差しは、いつも通りだ。

 

 

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 で、なんとか捕まえられたのは、篠崎仁志。「あんなに大きく扱ってもらったので、準優乗れてよかったですよ~」。なんだか、かなりリラックスしているように見える。大きく扱った、というのはBOATBoy6月号の表紙&巻頭インタビューです。少し話したなかで印象的だった言葉は、「とにかく悔いのないレースをします」という決意。もちろん優出という結果を求めつつも、そこにこだわるあまり消極的なレースをすることだけはしたくない、と翻訳できるだろう。その言葉どおりのレースをするのなら、篠崎は渾身の攻めを見せる。

 じゃあ、本命にしようっと。そう冗談めかして言ったら、篠崎は頬を引き締めて「はい、頑張ります」と真剣な表情に顔になった。期待しちゃうぞ。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)