BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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尼崎クラシックTOPICS 3日目

 

 

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 畠山が何年後かにこの舞台に出てくるであろう若者を発掘するため、やまと学校卒業式に出張っているので、ピンチヒッター黒須田です。畠山の意向を汲んで、やはり若武者二人について触れることにしよう。いや、畠山などうっちゃったとしても、今日の西川昌希に触れないわけにはいかないだろう。

「この若き豪傑が先輩に遠慮するわけもなく、本気でインを獲りに行くことだろう」と畠山は昨日書いた。なのにスタート展示は何もせずにあっさり6コース。畠山の予測はヤツの舟券同様にあっさり外れた? 一瞬、そんなふうに思ったりもした。しかし、それはこの男が巻き起こす嵐の布石だった。西川昌希ともあろうものが、SG常連の強豪が相手だからといって、尻尾を巻くようなことがあるはずもないのである。

 本番、ピット離れで④山崎智也が後手を踏んだ。智也としてはもちろん取り返しに行きたいところで、ホームからバック水面にかけて大きく弧を描いて回り込んでいる。まず、ここで西川が智也を入れるはずがない。前へ前へと艇を持っていく様子は、智也を牽制している動きにも見えたものだ。

 

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 だが、そうではなかった。ホーム水面に入った西川は、おもむろに舳先をスタート方向に向けた。

 イン獲り!

 スタ展はあくまで死んだふりだったのだ。ここでようやく、1号艇の毒島誠は西川のもくろみに気づく。慌ててエンジンを噴かして西川とターンマークの隙間にできたわずかなスペースに艇をこじ入れようとし、しかし西川もすぐには緩めない。毒島もはるか後輩相手にインを譲るわけにはいかないわけで、進入は一気に緊張感を高め、水面に濃密な空気を生み出したのである。

 

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 結果的に、西川と艇が接触するようなかたちで舳先をスタート方向に向けた毒島がなんとかインを死守。西川は2コースまでしか入れなかった。しかし、西川が演出したイン獲り合戦は間違いなく極上のエンターテインメントである。4カドとなった桐生順平が一気に内を飲み込み、吉田拡郎がマークして差しを突き刺したのも含めて、西川は2015年ボートレースクラシック3日目10Rを最高の名勝負へと昇華させたのだ。そう、進入がより緊張感の高いものになれば、スリットを超えたあともレースは躍動するのである。仮に毒島が逃げ切っていたなら、この厳しい進入をものともしなかったということで、そのイン逃げは単なるイン逃げではなくなる。西川が差し切っていたなら、その勝負魂が最高に称えられただろう。西川は単にダッシュに利をもたらしたのではない。自らが勝利をもぎ取りにいくことによって、ボートレースの面白さを最大限に伝えてみせたのである。

 西川昌希、あんたはエライ! 最高だ!

 

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 その西川と違って、松田大志郎は苦戦が続く。センター枠2走だった今日も、見せ場を作ることができなかった。4号艇の1Rはコンマ38のスタートで何もできず、7Rも外の太田和美にあおられて見せ場らしい見せ場はつくれなかった。足的にやや苦しいか?

 西川は今日、おおいに名前を売ったはずだが、大志郎はSGの壁にぶち当たっている。あと3日、なんとか「松田大志郎、ここにあり」を見せてもらいたいところだ。できれば、畠山がやまとに行っている明日に。大志郎の活躍をナマで見られなくて、泣いて悔しがる畠山が見たいから(笑)。

 

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 今節もっとも登番が若い西川昌希がおおいに盛り上げた3日目だが、一方でベテランも魅せたぞ!

 2Rで川﨑智幸が、4Rで金子良昭が逃げ切り快勝。ともに、2コースがツケマイで攻めたレースで、それをがっちりと受け止め、跳ね返しての逃げ切りだった。2コースのまくりは不発に終わると外に対する壁になりやすかったりもするのだが、スピードあるツケマイにハマれば一気に着外に転落する危険があるものでもある。SGクラスの強豪が放ったツケマイに、まるで動じなかったあたりはベテランの貫録。それにスピード負けもせずに逃げ切ったあたりは、古豪健在の証し。今日は1コース5勝と半分にも満たなかったなかで、イーグルの総帥と名人が逃げ切ったのだから、これは価値の大きい勝利だ。

 

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 もう一人、ベテランとか言うと怒られそうだが、松井繁も逃げ切っている。

 12Rの番組は、なかなか興味深いものだった。

①松井繁(大阪)

②篠崎元志(福岡)

③秋山直之(群馬)

④茅原悠紀(岡山)

⑤峰竜太(佐賀)

⑥安達裕樹(三重)

 王者狩りか!? よくもここまで、スピードで売る若い選手を組み込んだものだ。どこからでも強烈な速さをもった攻撃が飛んでくるのである。さらに二の矢三の矢四の矢が鋭いスピードでインの王者に襲い掛かるのである。まるで王者に世代交代を迫るかのようなカードである。

 しかし王者は強かった。茅原が前半フライングで本来の威力がなかったという指摘はあるし、秋山がピット離れ後手で6コース回りとなったという想定外の事態もあったが、ゼロ台のスタートを決め、若者たちに攻めさせずに逃げ切ったのだから、やっぱり王者は強い。なんか「お前らもたしかに強いけど、まだまだやな」という声が聞こえてきたような気がしたが、空耳ですか?

 ここまで、瓜生、太田、茅原がF、今垣が帰郷と、超銘柄級が優勝戦線から離脱している。また、昨日までオール2連対を続けてきた選手たちがことごとく着を落とした。予選戦線が実に混沌としてきた3日目である。そんな状況で、最強烈なメンバーを斬り捨てて最終12Rを王者が締めた。終わってみれば、松井繁。そんな3日後を迎える可能性がまたさらに高まったように思えてならないのだが。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)