BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――ボートレーサーの良薬

 

 

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 試運転から戻ってきた川上剛がすれ違いざまに声をかけてきた。

「7R、何が来ると思います?」

 出走表を開くと1号艇に川上。

「1」

「またまた~、見え透いた嘘ついちゃって~~」

 そりゃあ本人の目の前で他の選手を口にするわけがない。

「本当は4が来ると思ってるんでしょ~?」

 4号艇は今垣光太郎。4カド濃厚だから、川上にとっては厄介な相手であるのは間違いない。そう話すと川上の目がキラリと光った。

「僕、足いいですよ! 昨日からすごく良くなったんですよ。一昨日までは、上がってきたらがくーんって下向いてたでしょ。いま、吉村さんと足合わせしたら、吉村さんもいいけど、回り足は僕のほうがよかった」

 そういえば、係留所で吉村正明と話し込んでいるのを見かけていた。お互いに手応えのある足合わせだったようだ。たしかに相手は強力だが、充分逃げ切れるだけの足に仕上がった! だから一気に明るい表情になっているわけである。やっぱり川上剛はこうでなきゃ! 

「7R、頑張ってきますよ!」

 私は川上のこの意欲に乗っかってみます!

 

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 機力上昇はボートレーサーにとっての何よりの良薬。心のモヤモヤをすぐに吹き飛ばしてくれる。もうひとつの良薬は、もちろん1着。もともととびきり負けず嫌いばかりの選手たちだから、勝てば気分は上向いて当然である。

 昨日、6コースから1着を獲った平本真之も、初日2日目あたりよりずっと元気に見える。昨日はお見事! そう声をかけると、平本の顔はぱーっとほころんだ。

「外から勝てたのは大きいですよねえ」

 SGでアウトから勝つのは容易ではない。まして6コースが他場と比べても遠いと言われる三国である。そりゃあ気持ちいいっすよね!

 足的にはまだまだ不満たっぷりのようだが、気持ちのほうは上向いた。ここから成績上昇といきたいところだ。

 

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 2Rを勝った前田将太も、いい笑顔を見せていたぞ。今日は1着2着の勝負駆け。まずはこの2Rで2連対を外すわけにはいかなかった。最低でも2着。2号艇とはいえ、外から叩かれたら大敗もありうるのだから、シビアなレースであった。それを見事に差し切って、最高のかたちで前半をクリアできたのだから、これは大きい。後半8Rが1号艇であることを考えても、1着で2Rを終えられたのは気分的にも大きかった。

 福岡勢に出迎えられてニッコリ笑った前田は、須藤博倫にもポンと肩を叩かれてさらにニッコリ。他支部の先輩から祝福を受けて、前田の気分はさらに上向いたはずだ。

 前田はクラシック準優でいったんは2番手を走ったが、捌かれて3着に敗れている。レース後、前田は大きな後悔を抱えて身をよじっていた。あの日の雪辱を果たすためにも、まずは予選突破だ! 8R、気合入るだろうなあ。

 

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 さて、4Rで赤岩善生が通算1500勝! 逃げ切って区切りの勝利を達成した。大舞台での到達だから、思い出深い1勝になっただろう。

 レース後に祝福の言葉をかけたら、ふっと顔が柔らかくなった。1499勝目も1500勝目も1501勝目も同じ1勝、単なる通過点であるのは間違いないが、やはりここまで頑張ってきたことのひとつの勲章であるのもまた確かなことだ。で、水神祭は?と聞いたら「やらないやらない!」。まあ、キャラではないよね。でも、だからこそ見たいんだけど……。そう振ると「やらん!」と完全否定されてしまいました。残念! 後半12Rは3号艇。1501勝目をあげれば予選突破だ!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)