BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット@シリーズ――グランプリを目の当たりに

 

 

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 松田大志郎が残念ながら負傷帰郷となった。3Rで転覆し、8Rは欠場。これでSG水神祭はまた持ち越しとなってしまった。今節こそは、と期待していただけに、実に口惜しい。もちろん、本人がいちばん無念のはずで、落胆しながら住之江を後にしたことだろう。目前でグランプリのレースを見るという経験もできずに帰るのは、本当に惜しい。大志郎、来年もまたSGで会おう。次の機会には必ず、水神祭を見せてくれ!

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 大志郎はかなわなかったが、目の前でトライアルの戦いを見るというのは、いろいろな意味で大きいことだろう。住之江のピットは、ボートリフトがちょうど2マークの目の前にあたり、毎年さまざまな選手がリフト近辺に集まっては、トライアル、もちろん優勝戦も生観戦している。かつては石野貴之がイの一番にリフトまで駆けつけて、水面際でレースを目に焼き付けていたものだ。今日は、村越篤の姿がそこにあった。村越はSG自体が初体験であり、グランプリの空気を肌で感じるのはもちろん初めてのこと。3R1回乗りなのだから、10R終了後に出発した1便バスで宿舎へと帰ってもかまわないはずなのに、居残ってトライアルを目の当たりにした。まあ、調整作業をするための居残りだったのかもしれないけど、しかしそこに身を置くことは大きな刺激になったはず。なにしろ、登番1番違いの同県同期がそのステージで戦っているのだから、村越にとっては大きな大きな経験となったはずである。

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 小野生奈もグランプリシリーズは初出場だから、偉大なる先輩たちの戦いを直接目にする初の機会となる。新兵でもあるし、そうでなくとも最後までピットに残るのは当然でも、トライアルのピットアウトが近づけばやっぱりリフトへと足を向けていた。以前にも書いたが、小野はクラシック出場を本気で願っていた。それはすなわち、自力でのSG出場を切望するレベルにまで上ってきたということだ。そのこと自体はこのグランプリシリーズで実現しているわけだが、ならば次はもうひとつ、いやひとつもふたつもみっつも上の舞台を夢見るべきだろう。いったい小野の目にトライアルはどう映ったか。捕まえる機会があったら、ぜひ聞いてみたいと思う。

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 一方、グランプリシリーズ初出場ではあるけれども、村越や小野とは違う立場でトライアルを目の当たりにするのが、毒島誠である。シリーズ初出場って、ようするにこの時期のこの舞台をいきなりグランプリで体験した男ということなわけである。それを3年続けて、今年もグランプリ出場はノルマに近かったはずが、悔しいシリーズ回りとなったのである。先輩の山崎智也もそうだったな(そして初出場で初優勝)。

 毒島もまた、今日はレースのない桐生順平らと肩を並べてトライアルを間近で見ていた。本当はそこを走っているはずなのに、走れない悔しさを味わっていなければおかしいというものである。そしてそれが、毒島の闘志に火をつける。智也先輩の快勝を目にして、さらにグランプリを走りたかったという思いが大きくなったことだろう。これもまた、先々にもっと強くなる毒島誠ということを思えば、重大な経験となったかもしれない。

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 さて、ドリーム戦的な位置づけのシリーズ特別戦は、茅原悠紀と原田幸哉の激戦となり、茅原が2マーク差し返すかたちで1着となった。エンジン吊りを終えた二人は、肩を並べて笑みを浮かべながらレースを振り返りつつ、控室へと戻っていった。幸哉の笑みは、かなり苦笑い濃度が濃かったが。敗れたほうとしては、それが当然である。

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 幸哉としては、調整がもうひとつうまくいかなかったようで、着替えを終えたあと松井繁にアドバイスを求めていた。相棒の31号機はシリーズ組では良機の評判が高かっただけに、現状の足色には納得がいかず、さまざまな試行錯誤をしているようだ。そのなかで、王者は頼れる存在ということか。松井もニコニコしながら、幸哉の言葉に耳を傾けていた。明日はそれが活きる足色に化けているだろうか。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)