BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――グランプリだ!

 やっぱりグランプリはいいなあ。これはもう気のせいではなく、ハッキリと空気が引き締まっている。すべてとは言わないが、ピリピリしたものを感じられる。リラックスムードのピットもそれはそれでいいのだが、年に一度、この緊張感を味わえるのは幸せなことだ。

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 もっとも、トライアル2nd組はややリラックスしているように感じられる。レースが近づけば顔つきが変わる峰竜太は、とにかく明るい表情が目立っていた。やはりあと2日、レースがないということがそうさせるのだろう。まあ、レースの3日間前からピリピリしていたらおかしいのであって、そうであったらメンタルがもたないだろう。

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 評判機を引いた原田幸哉も、早くも忙しそうにプロペラ調整に取り掛かってはいたのだが、表情はいたって穏やか。2nd発進は初めてではあるが、“名人”ともなれば、前検日を含めて3日間のレースなしの時間は巧みに過ごすことだろう。

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 緊張感を醸し出すのはやっぱりトライアル1st組。特に石野貴之が早くも戦闘モードに入っているように思われた。調整に忙しそうなのもそうだが、ピット内を移動している様子を見れば明らかに顔つきが“入っている”。例年グランプリで目の当たりにする、他人を寄せ付けないような、ともすれば威圧的とも感じられる、気合の入り方だ。そんな石野を見ると、こちらのテンションも上がる。前検日から痺れさせられて、今グランプリのピットにいるのだと心地よく実感させられる。

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 初出場の丸野一樹も、いい具合に緊張感を抱いているようだ。フライング気味に言ってしまうが、22時からライブ配信する『週刊BOATBoy』では丸野にインタビューを敢行している。その口調や表情から、グランプリに参戦するという特別な感覚を丸野はしっかり抱いていると見えた。それでいいのだ。これまでグランプリを16回取材してきて、場に呑まれまいとして普段と変わらないように振舞う初出場の選手は、おおむね苦戦しているように感じている。グランプリは特別な舞台だ。だから緊張して当然。普段と違って当然である。もちろん雰囲気に呑まれるようでは好走は覚束ないが、しっかり緊張して走るほうがいい結果が出るのではないかと僕は睨んでいるのだ。今日の時点では、丸野はいい過ごし方をしていると思えた。もちろん、明日になってどうかがかなり重要なのだろうが。

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 そういえば、グランプリ組は帰宿バスの1便に乗るように指示されていたようだ。スタート練習&タイム測定を早く終えるから、帰宿をしっかり分散させるよう、グランプリ組を1便で帰そうということなのだろう。しかし、今日はバスがなかなか発車しなかった。そこに太田和美があらわれて、「まだまだ帰られへんで」と笑いながら言った。なんと、まだ平本真之と池田浩二が整備をしていたのだ。特に、池田は最後までの整備だったようで、終えたあとは大急ぎで支度をしているのだった。池田の引いた64号機は、三島敬一郎が「地雷モーターかも。気配をしっかり確認すべき」と警戒しているモーター。ようするに下降気味ではないかと見られるのだ。整備していたということはやっぱり……。三島の言う通り、明日のスタート展示、直前情報などで要チェックだ。

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 バスのネタで言うと、何人かの選手が乗り込んだ後も、登番が若い選手は乗らないで待っているんですね。今日で言えば、まず西山貴浩と桐生順平がドア前で待っていて、そこに篠崎仁志、佐藤翼がやってきたら、西山と桐生が乗り込んで……と、登番が若い選手が最後に乗るようにしているようなのであった。というのも、バスが宿舎に着いたら、登番が若い選手は真っ先に降りてダッシュ。すぐに食事という場合、先輩たちの茶碗などを用意したりするのである。だから、すぐに降りられるよう、最後に乗り込もうということなんでしょうか。グランプリ組とかシリーズ組とか関係なく、後輩は後輩としての仕事をこなす。ボートレーサーの世界は、登番の世界とも言えるわけだ。

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 シリーズ組。まず注目してしまうのは、SG初出場の椎名豊。出場するのはシリーズのほうとはいえ、最高峰の戦いが行なわれる舞台で初SGを経験するわけである。やや浮足立ったりしていないかと思ったりもしたのだが、粛々と準備をし、淡々と前検航走を終えている。そりゃそうか。前検からアタフタしてるほうがおかしいですね。

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 山田祐也はメモリアルは経験しているが、この舞台は初めてとなる。忙しそうに調整作業をしており、ピット内を走っている姿を何度か目撃した。山崎郡と何ごとか話し合う姿も。そうか、同期生か。

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 そう、山崎もまた、この舞台、しかも地元の最高峰の空気を感じるのは初体験となる。ダービーでは不本意な成績に終わってしまったが、今節こそ水神祭を果たせ!(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)