BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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浜名湖ヤングダービーTOPICS 3日目

激痛の往復ビンタ

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 やはり、西川昌希は動いた。4R3号艇の西川は朝のスタート特訓でも直前のスタート展示でも、何食わぬ顔で穏やかな3コースを選んだ。いわゆる“死んだふり”だ。いざ本番、これまた何食わぬ顔でピットを出た西川は、オレンジブイを回って間もなくエンジン噴射。一気呵成にインを奪いに行った。

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 が、1号艇の高倉和士はハナから警戒していたのだろう。横目でしっかり監視しつつ、西川が噴かした直後にレバーを握って舳先を合わせた。西川の「やらずのやり、死んだふりイン強奪作戦」は未遂に終わったわけだ。
 この作戦を看破したとはいえ、インの高倉が楽になったわけではない。大競りになった分、2艇だけがずんずん深くなっていく。特訓とはまったく別物の深イン。すでに90m起こしを覚悟していたであろう西川は、第2の作戦を敢行した。コンマ06全速、捨て身のスタート攻撃だ。スリットから半艇身ほど覗いた西川は迷うことなくジカまくりを選択。伸びなりに絞め込もうとしたが、高倉の伸び返しが凄まじく、1マークの手前で弾き飛ばされた。進入で一発、1マークで一発、後輩から往復ビンタを喰らった西川は、膝が崩れ落ちるように水面を這い、大差の6着でゴールを通過した。作戦、完敗。

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 ただ、今日の西川はこれで終わりではない。後半10R、4号艇の西川は今度はスタート展示から動いた。もはや選手全員に「やはり西川はどの枠でも動く」とバレたのだから、死んだふりをしても効果はない。で、ゴリゴリオラオラの前付けを浴びた1号艇の竹井奈美は「F持ちだし、付き合いきれない」という風情でインコースを譲渡した。
 こうなれば、インコースは俺のもん。本番の西川は我が物顔で前付けに動き、展示と同じくインを獲りきった、かに見えた。が、おそらく西川の内面に油断が生じたのだろう。ホーム水面に入って速度を緩めた瞬間、スーーッと奈美が内に舳先を入れ込んだのだ。あっという間のイン奪還劇。2コースを余儀なくされた西川はイン奈美&3コース仲谷のハイパーコンビに包まれ、なす術なく5着に敗れ去った。

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 今日の西川を振り返ると、前半は「やらずのやり負け(選手責任外)」、後半は「やりのやり返され(選手責任)」という感じか(笑)。どちらの作戦も未遂・失敗に終わった西川は、予選突破の可能性もほぼ失った。残念無念。18位でもいいから準優に乗ってもらって、変幻自在神出鬼没奇想天外な作戦を遂行してほしかった。

V争いは「四天王vs仲谷」??

 今節はパワー優勢な選手たちがしっかり着を拾い、3日目までの予選ランキングの上位を独占した感がある。日によってやや変動があるものの、私の機力評価も初日からほとんど変わっていない。「今節のパワー四天王」が超抜で、仲谷颯仁が抜群、上位は竹井奈美、佐藤翼、中村桃佳という感じ。もうバレバレで舟券的な妙味は少ないのだが、今日の四天王の気配を記しておこう。
★村岡賢人29号機

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 とにかく全部の足が強力で、特に出足~行き足のツナギあたりは節イチ級。他の3人は気象状況によって大なり小なり変化したと思うのだが、このパワーだけはまったく動じない。底力のなせる業だろう。その安定感も含めて、やはり現時点では節イチか。あえて弱点らしき部分を挙げるなら、スリットを超えてからの伸び足か。この部分だけはAレベルだと思っている。
★北山康介33号機

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 スリット後に村岡29号を負かすパワーとしては、これが第一候補だ。昨日はスタート練習、実戦ともにやや伸びが落ちているようにも見えたが、今日はまた試運転でも実戦でも素晴らしい伸び足を見せていた。こと一撃のパンチ力ではこっちが上だろう。もちろん、最大の課題は機力よりもスタート。F2の身の上でどこまで全速で踏みきれるか。ダッシュ戦でコンマ10全速が行ければ、選手紹介での本人の“予言”どおり「あると思います!」。
★河野真也16号機

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 今日の11Rは①村岡vs④河野の直接対決。進入のもつれ(河野が5コース)もあって両者の殴り合いは実現しなかったが、5コースまくり差しのサイドの掛かりといい、バック2着争いで中村晃朋をパワー任せに粉砕した足といい、申し分なし。全部の足が強力なバランス型で村岡29号に似ていると思うのだが、今日のレースで優劣を決めることはできない。
★椎名豊61号機

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 初日はスリット前後の行き足~伸びに惚れ込んだが、やや最後の伸び足が落ちているかも。それでも7Rの3コースまくり差しは、ストレート足→初動→サイドの掛かりまでの連携が見事だったし、12Rでもスリットからもっとも力強く出て行ったのが椎名だった。5着は1マークの展開負け。さほど気にする必要はないのだが、やはりスリット後に飛び出してから、内の羽野にやや伸び返された部分がちょっとだけ気になる。今日の足はダッシュよりスロー向きだったかも知れない。
 以上、この4人4パワーがV戦線でどれだけ活躍するか、そのゴキゲンな足色とともにあれこれ愉しみたい。目下の断然V候補・仲谷(暫定トップで明日は1号艇を残すのみ!)との直接対決も楽しみだな。とりあえず、明日の12R①仲谷vs②村岡は必見。現状の村岡29号は、まさに2コースあたりからのスリット付近の行き足がケタチだと思っている。攻めきれるか、防ぎきるか……進入から暴れそうな西川や磯部が脱落した今、あるいはこの直接対決が、優勝者を決める分水嶺になるかも??

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 最後に、明日の穴っぽいパワーを挙げるなら、守屋美穂と高倉和士だと思う(昨日も書きましたな)。どちらもスリット後に伸びていく足が魅力なので、守屋の5・4号艇&高倉の5号艇は実に不気味だとお伝えしておく。(text/畠山、photos/シギー中尾)