BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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前検からとことん!

 前検のスタート練習とタイム測定は、6艇でひとつの班をつくり、その班ごとに行なわれる。班分けは、こうしたビッグレースではドリーム戦出場選手が1班。2班以降は登番順に振り分けられる。今節でいえば、2班は登番最上位の日高逸子から。で、今節は52名が出場なので、すべての班を6艇で構成しようとすると、2艇足りなくなる。というわけで、登番が若いほうの8班と9班は5艇ずつ。6×7=42名と、5×2=10名で52名というわけである。スタート練習&タイム測定はもちろん、1班から順に行なわれる。

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 ということは、だ。スタート練習とタイム測定を終えた選手から次の作業に移っていくわけだから、最初のほうはドリーム組か登番が上のほうの選手が整備室を占めていることになる。逆に、最後の9班がスタート練習とタイム測定を終えたあとには、整備室は圧倒的に若手選手が多くなる。登番が上のほうの選手は作業を終えてモーターを格納してしまっているか、あるいはモーター関係の作業を終えてプロペラ調整に移っているからだ。実際、16時間際の整備室は若手選手が鈴なりであった。
 だから目立つ。そこにまだ、山川美由紀の姿がある、というのは。とにかく山川は忙しそうだった。ギアケース調整が主な作業のようだったが、それ以外にも細かい作業を実に丁寧に続けていたのだ。その合間に、スタート練習とタイム測定を終えた後輩たちのエンジン吊りにも駆けつけるのだから、手も足も休める暇がない。そして、今日の作業のタイムリミットぎりぎりまで整備室にこもったのだから、その仕事量たるや。若手の台頭が目覚ましいレディース界にあって、今でも第一線を張り続ける原動力は、この徹底した作業であろう。

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 もう一人、小野生奈の姿もかなり遅くまであったことも記しておかねばならないだろう。山川は前検2班。小野はドリーム出場だから1班である。結果的に山川のほうが遅くまで作業を続けていたが、小野もその5分前ほどまでキャブレター調整を続けていたのだ。その前にはギアケース調整もしていたようだ。仕事を長くやればいい、というものではないのは確かだ。むしろ、今日などさっさと切り上げている選手のほうが「前検での手応えは良かった」ということになる可能性も高い。それでも、この粘り強い調整が、昨年の女子MVPに上り詰めさせた原動力ではないか、とも思う。山川にしても小野にしても、強者には強者である理由がある、ということだ。

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 忙しそうといえば、やっぱり若手たちもそう。こちらはモーター架台の運搬など、いわゆる“新兵仕事”に飛び回っていた。今回の最も若手となるのは119期生の孫崎百世、西橋奈未、土屋南。この3人の動きが特に激しかった。3人で声をかけながら、懸命に“場”を作る。その健気な働きっぷりに、心のなかで拍手だ。で、これに加わっていたのが樋口由加里。率先して架台を運んでいたのだ。樋口は特別に小柄だからだろうか、これまたなんとも健気。本当にご苦労様です!

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 さてさて、このレディースオールスターはグレードこそGⅡだが、注目度や業界の力の入れようはそれ以上と言ってもよく、今日はSGやプレミアムGⅠ同様に、ドリーム戦出場選手の共同記者会見が行なわれた。これ、なかなか興味深かったのだ。

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 まず、1号艇の大山千広が「回転の上りが悪くて、ターン回りやスリットの体感が良くなかった」とコメント。2連対率は2位タイのモーターなのだが、不満そうだった。続く2号艇の長嶋万記も「回転の上がり方が鈍い」と証言。長嶋の場合は「下がる感じはないが、握り込みがついていかないと不安。ワクワクする感じじゃない」とも付け加えている。このあとに登場したのが4号艇の守屋美穂。守屋は「児島独特の前検の感じです」と地元ならではの言葉。では、児島独特の前検の感じとは何か、というと「回転の上りの悪さがあって、スタートが届かない」なのだそうだ。つまり、大山と長嶋の感じた不満があって当たり前、なのである。大山も長嶋も当然、その部分の解消を明日ははかるのだろうが、やり過ぎてしまわないのかなあ、とちょいと心配になったりして。逆に守屋は「いつものこと」と腹を据えて、落ち着いて調整に臨めるか。結果がどうなるかはともかくとして、やはり地元の利というのはあるわけである。

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 で、5号艇の遠藤エミは「児島のいつもの前検よりいい感じ。行き足がいいです」と回転不足の不満はなさそうなのだ。ということは、いいでしょ、これ! 明日以降は回りすぎなんて症状が出たりするのかもしれないが、しかし回転が上がらないはずの児島前検でしっかり動いていたのは間違いなく吉兆であろう。仕上がったときの遠藤は、コース不問で攻撃力を繰り出してくる。明日も豪快な一撃があるかも!?(PHOTO/池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)