BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――正月気分皆無

 年が明けてまだ10日。私事だが、年明けもずっと仕事で、ようやく昨日一昨日と短い正月休み。今日もなんとなく正月気分が残っている感じだったのだが、ピットに入ってそんな緩んだ気持ちがシャキーン! 早くも忙しそうに動いている選手たちに正月気分など皆無。この大会は短期決戦に加えてシステムが独特だから、ちょっとしたお祭りムードがあってもおかしくないのに、そんな雰囲気はほとんど感じられないのであった。うーん、ビッグレースのピット!
 とはいえ、やはり新年一発目でもあるので、「今年もよろしくお願いします」なんて挨拶をしに来てくれる選手もチラホラと。馬場貴也はこちらの姿を見つけるや(デカくて禿頭なので目立ちます)、駆け寄って頭を下げてくれた。どれだけ強くなっても、この礼節を欠かさない姿勢は何も変わらない。グランプリ最終日も「今年もありがとうございました」と別れている。そんな人柄にはいつだって癒やされるわけであります。

 渡邉優美もにこやかに挨拶してくれた一人。そうしたときの笑顔は、30歳を超えた今でも実に初々しい。今年もヤングダービーで会えるんじゃないかと錯覚しそうなほどだ。これが、明日からはキリリと顔が引き締まり、完全に勝負モードに入るのは確実。このへんのメリハリにも毎度感心させられるわけである。ほかにも、宮之原輝紀や毒島誠、羽野直也、吉田裕平、前田将太らがわざわざ来てくれました。西山貴浩は「今年も黒崎で!」だって。いや、もっともっとSGのピットで会いましょうね。黒崎でも会いたいけど。

 で、先に書いたように皆、早くもテキパキと作業をしていて、桐生順平が早くもペラを叩いて焼きを入れて、とまるで開催が始まってからのような動きを見せていたので驚いた。今日の航走検査の班分けは純粋に登番順で、後半5班で時間があった、ということなのだろうが、それにしても前検日から焼きを入れるとは。なかなか見ない光景ではある。

 磯部誠は、モーターを装着後に整備室に入って機歴簿をじっと見入った。まだ水面にボートを下ろしていない段階で、これまでの整備状況を確認し、自身はどの方向性で調整していくかに思いを馳せたというわけだ。それを頭に叩き込んで試運転やスタート特訓を走り、考えと感触をすり合わせていく、ということだろう。すでにちょっと話しかけにくい雰囲気でもあった。

 短期決戦だから、なおさら調整を急がなければならない、ということもあるのでしょうね。だから、航走検査後に赤岩善生が早くも本体をバラバラに。ここで何度も書いているように、これは赤岩のルーティンではあるのだが、短期決戦ということを考えればさらに深い意味となる。

 今垣光太郎も本体整備に取り掛かっていた。そういえばチャレンジカップの前検時にもやっていたっけ。そう、地元SGと同じような動きを見せていたのだ。考えてみれば、短期決戦という言葉は生ぬるいかも。明日の1回戦で4着以内に敗れたら、もう優勝の目が潰えるのである。今日と明日のレース前まで。それしか調整の時間はないのである。今日は前検日でありながら、勝負駆け前日のようなところがある、とも言えるわけだ。

 そう考えると、航走検査後に早くも通勤着に着替えてしまった松井繁、というのは「前検で好感触」と勘繰ってしまうわけなのである。あ、これはコメント等見ていない段階で書いてます。前年覇者が、ほとんど何もしないで済んだ前検日。これは“タイトル防衛”に向けて視界ヨシ、ということではないのだろうか。ちなみに、三島敬一郎10選には入っていないが、そのちょっと下くらいの評価ではある松井25号機です。

 さてさて、宮地元輝の足取りが重い。大村は、グランプリシリーズでSG初Vを果たし、大ブレイクへのきっかけを作った水面。それだけに期待も高まるというものだが、やけに表情が冴えないのである。しかも「厳しい……」と呟いてもいるではないか。さてはモーターの感触が悪かったのか、と思いきや、それ自体は「合格点」だそうである。何が厳しいかといえば、枠番抽選で6号艇を引いてしまったこと(選考順位25位以下は4~6枠を抽選で決める)。インが強い大村、しかも一発勝負で、大外枠は宮地をおおいに悩ましているというわけなのだ。とはいえ、さまざまな引き出しで勝負を懸けてくるのが宮地元輝である。明日の9R、彼が何を見せてくれるのか、おおいに楽しみにしようではないか。あとオープニングセレモニーも楽しみですね(笑)。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)