BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――走る!

 1月にレディースvsルーキーズで来た際には、芦屋ピットは工事中。全体の半分しか、装着場はオープンしておらず、整備室は競技棟の裏にあった。しかし、SGを迎えて工事完成! 工事中だった部分はすっかりきれいにリニューアルされており、また手前にあった艇修理室は完全に建て替えられて、選手の喫煙所等に生まれ変わっていた。

 こうして完全版ピットになってみると、芦屋のピットは改めて、広い! ようするに、水面の横幅がほぼそのまんま、ピットのスペースになっているのだ。だから、選手たちも移動の際に駆け足になることも少なくなく、特に慌ただしい前検日、松井繁や今垣光太郎らベテランも走って移動したりしているわけである。まあ、光ちゃんはピットが広かろうが狭かろうが、よく走ってますけどね。

 若手選手は新兵仕事もあるので、元気いっぱいに走り回っている。特に目についたのが関浩哉で、小柄なこともあり、また童顔でもあり、10代の学生が懸命に走っているようにも見えたりする。そんな関がGⅠウィナーであり、近況はSG常連ともなっているのだから、なかなかなギャップですな。

 今日から一節間、18時から「展望BOATBoy」をYouTubeで生配信。JLCでも放映される。前検日のみ、僕が気になる選手にインタビューを行なうのだが、今回はSG初出場の渡邉優美です。渡邉は前検航走後、整備室で入念に点検作業。待機がてら様子を眺めていたのだが、これがもう、実に微に入り細に入りの精緻な点検作業であった。大雑把なワタクシにはとてもできないなあ、と思ってみたりしたものです。その細かいところまでしっかりとこだわるからこそ、SG出場に辿り着けたのだと考えれば、それはまさしく渡邉優美が積み重ね、やり通してきた前検のルーティンということになる。ようするに、この位置に立てている秘訣だ。ちなみに、感触は悪くはないそうです。で、渡邉はモーターを格納すると、インタビュー場所=ピットの手前までの長距離を走って駆け付けてくれたというわけなのである。そういうのって、ちょっと恐縮ですよね。明日は1号艇がある。水神祭、期待してますよ!

 さてさて、グランプリへの道程を、勝負駆けとなるチャレンジカップを一区切りと考えれば、5月というのはすでに折り返し地点に差し掛かっているわけである。まだ今年のSGは2節目とはいえ、ここからは一気呵成にベスト18争いが混沌としてくるわけだ。それだけに、オールスターはグランプリを目指す選手たちにとっては大事な戦いとなる。だからだろうか、やはりクラシックより少し緊張感が増しているように感じられるわけである。

 篠崎元志は前検航走後はペラ室にこもった。けっこう激しく叩いている様子も見えていて、早くも調整のピッチが上がっていた。各班がスタート練習とタイム測定を終えて戻ってくると、当然エンジン吊りに駆け付けることになるわけだが、篠崎はそのギリギリまで、ペラ室でハンマーを振るっているのだった。だから、ひとつの班が終わって戻ってくるとその都度、大急ぎでペラ室を駆け出る元志の姿が見られるというわけである。各班ごとの間隔はものの5~6分。そんな短時間を、元志は絶対に無駄にしないというわけなのである。

 石野貴之もペラを激しく叩く姿があった。石野が引いた14号機は、地元では評判になっているモーターとのことだが、前操者は江口晃生。かなり出足から行き足寄りに叩いたペラだと思われる。石野のスタイルとは合わないのが当然で、それもあっての前検日からの大きな調整ということだろう。グランプリ出場をノルマと自身に課している石野だけに、前検からのんびりなどしてはいられない。早くも闘志が垣間見えているというわけだ。

 そして、西山貴浩もまた、相変わらず軽口を叩いたりしているものの、ペラ調整を時間ギリギリまで行なうなど、随所に気合が見え隠れしている。地元SGであり、クラシックでは同期の土屋智則がSG初制覇を果たしたこともあり、そしてファン投票2位という栄誉に浴したこともあり、やはり思いのこもり方が違うのだろう。西山に声をかけられて歩み寄ってみると、やっぱり酒の話になったりもしたのであるが、その間じゅう、右手はペラをさすっていて(ようするに形状を指先で確認している)、そんな気楽に見える会話の最中でもしっかり仕事のことを忘れてはいないらしいのだった。明日の選手紹介では大はしゃぎしてくれるだろうが、ピットではまごうことなき勝負師になっている。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)