オープニングから事故レースになってしまった。湯川浩司が1周2マークで大きく流れて落水。ピットにもエンジンが空回りする音が大きく響いたので、選手たちはたちまちに騒然となった。1周1マークでは山口剛もキャビって失速しており、やや乗りにくい水面になっているのだろうか(風速5mの向かい風)。
湯川は7Rを控えていて、陸にあげられたボートの艇旗艇番はすぐに4号艇のものに差し替えられている。ただ、モーターを点検する必要があり、いったん外された後に整備室へ。このとき、先頭に立って動いていたのが松井繁だった。湯川の工具入れを探しに行き、後輩には指示を出し、検査員さんなどにもろもろ確認。かわいい後輩の一大事を決して傍観することない立ち居振る舞いは見事なものであった。
こういうレースなので、逃げ切った守屋美穂も笑顔を見せることはなかった。淡々とエンジン吊りは進み、守屋は対戦相手に神妙に頭を下げる。安堵や歓喜などポジティブな感情は浮かんでいたはずなのだが、それをあらわにすることのない気遣いがこういう場面では勝るわけである。
2Rは松尾拓が逃げ切り。桐生順平の前付けを受けながらも、しのいでみせた。新田雄史の出迎えを受けながら、クールな微笑を浮かべていた。ここはもっと喜んでみせてもいい場面であるが、もともとそういうタイプではない。これまで何度か会っての印象はまさにクール。話してみれば丁寧な言葉遣いの好青年なのだが。
このレースでは、西山貴浩が痛恨のシンガリ負け。地元SGの初戦、最悪の船出となってしまった。さすがの西山も、レース後はいっさいおどけてみせることなく、控室へと消えていった。手前ではカメラマンがずらり待ち構えていたのだが、サービスはいっさいなし。渋い顔でその前を通り過ぎた。カポック脱ぎ場でも、対戦相手に対して笑みをうかべることなく、眉間にシワを寄せるのみなのであった。ここまで露骨に悔しがっているのも珍しいこと。それくらいに、この6着大敗は腹立たしい結果だったのだ。
さてさて、初日なので朝から選手たちが慌ただしく動いているのはいつも通り。それぞれが調整に励んでいる。そんななか、寺田祥がなぜかモーターに取り付けられているナンバープレートを外していた。さらには整備士さんを呼んで、何かを訴えている。正直、理由はさっぱりわかりませんでした。こういうとき、取材制限がもどかしいですね。少なくとも、この動きは初めて見ました。モーターの性能には関係なさそうだし、何だったのかおおいに気になる。
磯部誠は、木製の長い定規を艇底とギアケースのあたりに当てて真剣に見入っていた。これはボートの取り付けをチェックするもの。多くの選手がこれをやっているのをよく見かけます。通りかかった新田雄史が、俺にも見せてと同じ動き。二言三言、言葉を交わして、磯部はおもむろにチルトアジャスターをいじり始めた。チルトを跳ねるか下げるかしていたようだ。ボートは木製なので、重いモーターを何度も積み下ろししたり、レースで接触があったりするとゆがみが生じるのも自然なこと。ボートとモーターのマッチング次第で、普通にモーターを装着しても、その角度に違いが起きるものらしい(同じチルトマイナス0・5度でも、微妙に角度に差があったりするのだ)。それをチルト角度の調整で好みの状態にもっていこうとする、というわけ。こうした微妙なところに気づけるかどうかも、成績に関わってくるということだろう。
最後に極めて珍しいツーショット! 峰竜太&寺田千恵! 話しているところを見るのは初めてじゃないかな。会話の中身が気になるところだが、かなり陽気な雰囲気の二人でした。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)