BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――早くも動き慌ただしく

●整備

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 クロさぁ~ん、とちょっと離れたところから力弱い声で呼ばれたので顔を向けると、西山貴浩が頼りない表情でモーター本体を外しているところだった。
「またっすわぁ~」
 と泣き言を言う西山だが、気持ちはわかる。SGで西山がいいモーターを引いた記憶、ほとんどないもんね。よくぞグランプリ出場を果たした、つまり粘りに粘ったものである。しかも今回は、大事な大一番で最も引いてはいけないモーターを引いた。というか、グランプリ組では抽選順はラストだから、下降機が残ってしまっていた。「本体やらないと話にならんですわ」と外した本体を抱えて、整備室へと向かうのだった。後姿が切ない。かなり大がかりな整備をするのは確実のようだった。

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 ちらり整備室を覗くと、瓜生正義も本体整備だ。大きな整備になっているかどうかまでは見て取れなかったが、瓜生が勝負の日に本体を割るのは珍しくない。感触が良かったとしても、本体を割って点検して、というのが、優勝戦の日などにもよく見られるのだ。トライアル1stは初戦から勝負駆けのようなものだから、万全を期しているのだろうと推察される。

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 ほんの短時間、整備室を覗きこんだだけでも、グランプリ組の姿が多いことは一瞬でわかる。馬場貴也はギアケース調整。まあ、これは初日にやっている選手は多いから、馬場にとってもある種、ルーティンであろう。

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 菊地孝平の姿も見えた。彼もギアケースをはじめ、外回りの調整のようで、2R発売中あたりではプロペラ調整に移行している。あと、丸野一樹もギアケース調整。いよいよ迎える初めてのトライアル。浮足立たずに、着々とやるべきことをこなしている。

●鋭い表情

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 やはり石野貴之の顔つきがキリリと引き締まっているのである。バタバタと動いてはおらず、マイペースの調整を続けているように見えるが、とにかくピット内を移動しているときの姿が凛々しすぎる。完全に“住之江グランプリモード”のスイッチがかっちりと入っている。
 その一方で、選手仲間と話をしているときには、目がくにゃりと曲がっていたりもする。篠崎元志と談笑しているときがそうだった。いい精神状態が出来上がっているということだろう。機力方面の調整はレースまで続いていくが、メンタルのほうはすでに仕上がっていると見えた。

●試運転

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 1R発売中に、毒島誠が早くも試運転で水面を疾駆していた。もちろんその流れでプロペラ調整も。今日は好天で太陽が降り注ぐ水面。トライアルの時間帯には一気に冷えることが予想される。この時間帯とはモーターの気配もかなり変わってくるはずだ。それでも、早くから乗り込んでいる毒島。もちろん、レースでは今よりももっと回転が上がるであろうことを想定しての試運転と調整だろう。

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 2R発売中には新田雄史も水面に下りた。ピットでは非常に物静かなたたずまいだが、それが気合のあらわれということか。グランプリ勝負駆けだったチャレンジカップのときも同様の雰囲気で、それだけに不気味さを感じさせる。午後イチのスタート特訓には、新田は参加していなかった。前付けも想定されるなか、ひとまず手の内を見せなかったのか、それとも調整に没頭していたか。ともあれ、この着水が始動の合図のはずで、このあとはレース間に試運転で走りまくる新田が見られるはずだ。

●2nd組

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 原田幸哉が本体整備! 引いた37号機は評判機のはずではないか! これが2nd組の特権ではある。今日明日はレースがないから、何はともあれ本体を割って、点検などし、それが失敗でもやり直す時間があるのである。実際のところ、原田の狙いが何かはわからなかったが、忙しそうに本体と向き合っていたのは確かである。

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 BBCトーナメントの決勝戦、4R頃になってもジャージ姿だった白井英治が、早くも乗艇着に着替えていた。外回りの調整をする腹積もりだったようで、自艇と整備室を何度か往復していた。2日間たっぷり時間があるからこそ、マイペースでやれることをすべてやり尽くそうということだろう。

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 そして、平本真之が試運転! 1R発売中から水面に出ていたのだ。平本なりに狙いはあるだろうが、少々驚いた。なにしろそのとき、峰竜太、濱野谷憲吾、桐生順平はまだボートにモーターを装着していなかったのだ(3人とも、ギアケースなど外回り調整をしていたようだ)。これは気合のあらわれか、それとも……?

 

●シリーズ組

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 オープニングは上條暢嵩がまくり差しで快勝。エンジン吊りを終え、着替えも終えて、ピットにあらわれたとき、たまたま目の前を通過した。上條は親指を立ててグラッツェポーズ! これ、最近見ないですね。上條が親指を立てるのを見たのは久しぶりだ。「悪ないっ! 足が悪ないというより、勝てて悪ないっ!」と爽快な笑顔を見せた上條。いい気分のまま突っ走って、シリーズの主役になれ!

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 この写真、不自然な部分があるのがおわかりですか? 艇番は6、艇旗は緑なのに、着ているカポックは青なのである。1R5着の中野次郎は、5Rにも登場する。レース間隔が短いのだ。ということで、レース後にいったんボートを陸に上げると、艇旗と艇番を付け替えて、すぐさまもういちど、水面に下りた。勝負服は後輩が洗濯室に持っていったのかな。これ、ボートを陸にいったん上げる必要、あるんですかね? 空いている係留所にそのままつけちゃったらダメなんだろうか?

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 確認したら、いったん上げなければダメ、なのだそうだ。レース後、引き上げられたボートは検査員の方があれこれチェック。たとえばボートに穴があいていないか、モーターは正常に取り付けられているか、などなど。そのために、すぐに水面に下ろすとしても、レースから戻ってきたらリフトに乗せて陸に上げるのがルールなのだそうです。次郎さんのおかげで勉強になったなあ。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)